DIC株式会社はこの度、公益財団法人国際文化会館とアート・建築分野を起点とする協業に合意。
都心でありながら緑豊かな環境で、アート・文化・歴史が調和する特別な空間を提供する国際文化会館へ、DICが運営するDIC川村記念美術館が保有する20世紀美術品を移設することなどを発表しました。
「DIC × 国際文化会館」協業に合意し一部美術品の移設を発表
DICは日本で有数のファインケミカルメーカー。
DICを中心に世界全体で「Sun Chemical Corporation」を含む約180の子会社によってグループが構成され、60を超える国と地域で事業を展開しています。
DICは、千葉県佐倉市で運営してきたDIC川村記念美術館の休館を、昨年8月に発表しました。
しかし、存続を望む声が多数寄せられたことから、2025年1月の予定だった休館を3月下旬頃まで延長。
また直近で約13万人が来館し、例年と比較して4倍近くの来館者が訪れていることから、同社は美術館の30年を超える活動を継承し、美術品の移設などを行える候補先を模索。
その中で国際文化会館と出会い、この度協業に合意したことを発表しました。
都内で開催された発表会に登壇したDIC 代表取締役 社長執行役員の池田尚志氏は、
「作品・建築・自然の調和を大切にし、可能性を多岐にわたって共に探索し続けてゆけるパートナーとして、国際文化会館ほど相応しい存在はありません。本格的な取り組みはこれからとなりますが、すでに多くの価値観を共有し、未来に向けて同じビジョンを持ちながら動き始めております。」
と発表しました。
多くの方が気になっているであろう、DIC川村記念美術館が所蔵するマーク・ロスコのシーグラム壁画7点は、全て国際文化会館が新たに建設する西館へ移設するとのこと。
シーグラム壁画の常設展示室で、全てのシーグラム壁画を鑑賞できる「ロスコ・ルーム」について、
「我々は伝統的なロスコ・ルームをどのように継承するかを、真剣に考えてきました。同時に、絵と建築が一体化した場であるロスコ・ルームは鑑賞者を包み込み、思いや工夫が詰まった素晴らしい展示室です。7点の連作を一室で満たす空間を確保することは、とても困難でした。そんな中で、国際文化会館に建設される新たな建物と、70周年の思いが呼応し、この度の移設が実現することになりました。」
とコメントしています。
国際文化会館 近藤正晃ジェームス理事長は、
「国際文化会館は1952年の設立以来、一貫して日本・アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献してきた、日本における民間外交と国際文化交流のパイオニアです。」
と国際文化会館のこれまでの歩みを紹介。
「国家間の戦争の回避、持続的な平和構築への尽力が改めて求められている中で、“シンクタンク部門”と“アートデザイン部門”、この2つの領域について公益プログラムの強化に取り組んでおります。SANAAが設計するロスコ・ルームが、対立する人々の心に静かな内省をもたらし、共感の輪を広げて相互理解を深めることで平和を生み出す場となるならば、それはまさに歴史的な意義を持つこととなるでしょう。このような公益的な意味のあるプログラムをDIC様と共同運営できることを、心から感謝しております。」
と、今回の提携に深い感謝と敬意を滲ませました。
シーグラム壁画移設に「次の30年にわたっての新たな形を目指したい」
世界的な傑作であるロスコのシーグラム壁画は、元々ニューヨークのシーグラム・ビルでまとめて展示することを念頭に、緻密に描かれた作品群。
遺族が管理している作品を除き、シーグラム壁画をまとめて収蔵している美術館は世界でも「イギリスのテート・ギャラリー」と「アメリカのナショナル・ギャラリー」のほかにはDIC川村記念美術館のみとのこと。
極めて貴重な文化財を新たに新設される西館に移設し、さらに展示室であるロスコ・ルームも建築ユニットSANAAによって開設され、展示される予定です。
次の30年にわたっての新たな形を目指したい
今回の協業で、これまでシーグラム壁画は国内ではDIC川村記念美術館でしか見ることができず、千葉県・佐倉市まで足を運ぶ必要があったものの、今回の移設によってさらに多くの方がロスコ作品に触れることができるようになります。
池田氏は、
「今のロスコ・ルームは、長い年月を経て今の形になっていったと思っておりますので、次の30年にわたっての新たな形を目指したいと考えております。東京・六本木の中でも中心地ではありますが、向こう30年で新たな意味・新たな価値をつけていくことの、象徴になるものだという風に思っています。」
とコメント。
近藤理事長は、
「六本木というのは東京の中でも最も国際的な、またアートの集積地の1つです。国内の方だけでなく、世界の方々が日本を訪れた時に、このロスコ・ルームを中核とした様々な美術品というものが、日本の大きな魅力にもなるでしょうし、交友の場にもなるということで、極めて多くの方に見ていただける、そういった大きな文化財になるという風に考えています。
また、世界の文化財であるロスコ作品が、アジアで唯一(国際文化会館に)ロスコ・ルームという形で存在していくということで、ここはアドバイザーの方々にもご相談しながら、やはりここでなければ実現しなかった、そういった民間外交というものも広域的に追求していきたいと思います。」
と展望を語りました。
現在DICが保有する美術品は、段階的に売却を進める予定とのこと。
DIC川村記念美術館についても、詳細が決まるまでは一般開放を行うなど、これまで愛してくれた地元住民へ寄り添っていくそう。
国際文化会館に新設される西館は、2030年竣工予定となっているので、ぜひ完成した際にはロスコ・ルームを鑑賞しに訪れてみてはいかがでしょうか。