日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、障がい者の活躍推進の取り組みの一環として、「アートの力で個性を照らす~障がいのある人もない人も誰もが輝ける世界をめざして~」をコンセプトに、2023年度『NTTアートコンテスト』「ひろがる世界」(募集期間:2023年12月3日(日)~2024年1月31日(水))を実施。
今年度も、昨年度に引き続き本コンテストに賛同された日本航空株式会社(以下、JAL)協力のもと、一人ひとりの輝きが新しい世界へのひろがりを表現できる『ひろがる世界』をテーマに、平面作品および立体作品を対象として、国内外から広く作品を募集し、計554点(昨年度182点)の作品が寄せられました。
そして2024年3月26日に『NTTアートコンテスト』の表彰式典が行われ、各賞の受賞者が決定。
表彰式典の様子を拝見させていただきました。
『NTTアートコンテスト』表彰式
開会に先立ち、主催のNTTより島田明代表取締役社長からご挨拶がありました。
「NTTグループでは約4,000名の障がい者の方に働いていただいています。テーマである”ひろがる世界”の思いのように、一人一人の才能、能力を活かしてより柔軟に働くことがウェルビーイング社会の第一歩であると考えている。そこから世界も大きく”ひろがって”いく。」
と『アートコンテスト』への思いを説明。
本コンテストの協力企業であるJALからは執行役員 人財本部長の小枝直仁氏がご出席。
小枝氏は「アートの力で個性を照らす。障がいのある方もない方も輝ける世界を目指すという理念に感銘を受けた」と賛同し、
「作品を拝見し新しい世界や未来への希望というのが見事に表現されている。」
と感想を述べました。
また、
「JALでも障がいのある社員にも輝ける環境作りに取り組んでおります。新たな取り組みとしてグランドハンドル(旅行者の手荷物の送迎)や機内食の配膳、ファーストクラスでのカフェやマッサージなどのサービス提供など、そういったところでも障がいのある社員の方が活躍されています。」
と、ダイバーシティ&インクルージョンへの推進についても言及。
審査員特別賞『大切な人へ届けられた「お手紙」』
市販の紙袋にマスキングテープを張り付けた「手紙」
作者である河野芽衣さんへ、アーツカウンシルしずおか/クシノテラス主宰の櫛野展正氏から表彰状の授与が行われました。
自分の気持ちをうまく伝えることができない河野さんの”貼る”という表現方法。河野さんは日常的にこうした「手紙」を送っており、届けてもらった相手も大切に保管されていてコミュニケーションツールにもなっています。
製作時は送る相手を思い浮かべながら一心不乱に製作され、中にはお菓子などを詰めて送ったりもするのだそう。
JAL賞 『瞬間をキリトル』
JAL賞は小枝氏から花守洸迦さんへ授与されました。
花守さんは「自身が旅をする機会にあまり恵まれないからこそ、自分の思いを絵に投影できる。」と作品への思いを綴られました。
『瞬間をキリトル』に描かれている花の花言葉には「旅人の喜び」「旅の楽しさ」「愛情」と、旅に出れる楽しさ・喜びを表現されています。
NTT賞 『やさしい人たち』
NTT賞には立川幹大さんの『やさしい人たち』が選ばれました。
NTT執行役員の山本氏から立川さんへ授与。
作品には「ぼくはやさしい!みんなやさしい!虹が輝く世界に!」という思いを込めて製作。
5歳のころから毎日絵を描いている立川さんは「自宅を美術館にする」と、壁やドアに作品を張り付けているそうです。
「みんなに見てもらえたら嬉しいです。僕は優しい大人になりたいと思います」とスピーチされました。
準グランプリ『どこへでも行ける』
やりたいことや欲しいものを描くことから始まったという水田航介さんの作品『どこへでも行ける』が、準グランプリに輝きました。
「大好きな電車とエレベータを毎日描いており、その周りにはたくさんの動物たち。実際にはありえないかもしれないけど、絵の中では自由で思いのままです」とコメントをされています。
好きなものを思いのままに描く、自由な発想ができるからこそ固定観念にとらわれないで”ひろがっていく”というテーマに向き合った作品です。
グランプリ『広い世界へ』
そして映えあるグランプリに選ばれたのは、如月虹さんの『広い世界へ』。
大好きな飛行機に乗って世界へ旅立ち、自分の見識を広めたいという思いが込められています。
虹色の飛行機雲には新しい世界を知る希望、勇気、夢、知った後の明るい未来を表現。
ご自身を気が強いと表す如月さんは「自分にとって一番良いことだと思ったら、迷うことなく突き進む。」と伝え、
「目標は世界規模の大きなコンテストで一番になりたい。そして下手でもなんでもいいから好きなことはやり通そうよ。好きなこと見つけたらラッキーですよ。」
と、力強く前向きなメッセージを送られました。
如月さんは数年前まで美術は苦手だったそうなのですが「絵は私にとって気持ちを表現する大事な手段となっている。たくさんの人のご支援によってこの場に立てていることを嬉しく思います」と感謝の言葉を述べられました。
審査員から総括のコメント
「今回はとても難航した審査だった」と櫛野氏。
「グランプリを獲った如月さんのような明るい絵や、そして河野さんの現代アートのような作品があったりと幅広かった。」
と話し、こういった点が嬉しくもあり審査が難しかったと説明。
「河野さんの作品は受け取った相手との、関係性の温かさがうかがえる作品」と評されています。
そして「言葉によるコミュニケーションや文字で伝えるのが苦手な河野さんは、この作品を通して気持ちを伝える。こうした表現が社会に一石を投じているというのが良かった。」総評されました。
田尾企画 編集室クリエイティブディレクターの田尾圭一郎氏は、1950年代の現代アートチーム「フルクサス」になぞらえコメント。
「フルクサス」もはがきなどを郵送し、誰かに届くかもしれないし届かないかもしれないという、第三者への想像力を表現したメールアートを行っていたと説明。
「審査を通して、そのようなことを思い出させてくれるような作品たちだった。」と語り、
「NTTさんやJALさんは世界を”ひろげる”をつくってきた。今回の作品はどこかに旅立てるかもしれない、誰かに届くかもしれないという可能性が”ひろがる”世界を見せてくれた作品たちだった」
と審査した作品への思いを伝えられました。
私自身も、素敵な作品を見れてとっても良い時間を過ごせました。
自由に描かれた作品からは様々なメッセージ、そして”ひろがる”世界という可能性を与えてくださったように思います。
これまでも障がいのある方々の作品に触れる機会はあったのですが、改めて作品の持つ自由で力強いエネルギー、そして作者の方々の才能や個性に魅了され感化されました。
これからも皆様の作品を拝見できる機会を楽しみにしています。
受賞された皆様、本当におめでとうございます!