
美容や健康のために毎朝レモン水を飲む。小腹がすいたらドライフルーツ、仕事中は炭酸水。いかにも体に良さそうな習慣ですが、歯にとって優しいかというとそうでもありません。食べ物や飲み物の「酸」によって歯が溶ける「酸蝕(さんしょく)症」が近年増加傾向にありますが、背景には、こうした健康志向が関係していると考えられています。
むし歯は、細菌が糖質を利用して作る酸で歯が溶け、やがて穴が開く病気です。一方、酸蝕症は、飲食物や胃酸などの酸が直接歯の表面に作用します。初期は気づきにくいのですが、進行すると歯が薄く透ける、先端が欠ける、冷たいものがしみてくるといった変化が見られる点が特徴です。
2024年に報告されたシステマティックレビューとメタアナリシスでは、酸性食品を取る習慣や炭酸飲料の摂取、胃酸の逆流などが酸による歯の摩耗と関連しているという結果が出ています。ただし、関連があることと、特定の飲食物を一度取れば歯が傷むということは別。酸の強さに加え、口に含む時間や頻度、唾液(だえき)の働きなども影響します。だらだら、ちびちび、といった取り方をしないことです。
果物に関しては、かんきつ類を食べること自体が悪いのではなく、酸が口の中に長くとどまらないような工夫が大切。ドライフルーツに関しては、糖質の量や、歯の表面への付着のしやすさも考慮して選択しましょう。
暑い夏の時期、水分補給としてスポーツドリンクを常飲していたという患者さんもいらっしゃいました。歯の表面が広範囲に脱灰(エナメル質が白く粗造になる現象)し、徐々に冷たいものがしみるようになったという症状が主訴でした。1度ダメージを受けると、残念ながら元の状態には戻せません。体に良いことを続けるには、歯との相性を考える。美容習慣は口元も含めて完成するのだと知っておいてください。
