
「歯周病菌が認知症を引き起こす」。そんな見出しを目にしたことはありませんか。口の病気と脳の病気、一見遠く感じられる2つの関係が近年注目されています。現時点で「歯周病が認知症の原因」と断定することはできないのですが、さまざまな角度から研究が進められているのは事実です。
歯周病は細菌の集まりであるバイオフィルム(歯垢しこう)に対する炎症によって歯を支える組織が破壊される病気です。進行すると歯ぐきの出血や腫れ、歯のぐらつきなどが生じます。研究者たちが注目しているのは、歯周病によって引き起こされる慢性的な炎症や歯周病関連細菌が全身に及ぼす影響です。
2025年に発表されたシステマティックレビューとメタ解析では、過去の症例対照研究13件とコホート研究11件を分析しました。その結果、歯周病である人は、そうでない人に比べて認知症に罹患(りかん)している、または将来発症する割合が高いという「相関関係」が報告されました。特に重度の歯周病では関連が強い傾向が見られています。
ここで大切なのは、「相関関係」と「因果関係」は同じではないという点。相関関係とは、2つの事柄が一緒に見られるという意味です。
たとえば歯周病になっている人に認知症が多かったとしたら「歯周病と認知症に関連がある」という表現になります。しかしそれだけでは「歯周病が認知症を引き起こした」とは言えません。年齢、喫煙、糖尿病や食生活など、歯周病と認知症のどちらにも関係する別の要因が影響している可能性もあります。また、認知症によって歯みがきや通院が難しくなり、歯周病が悪化するという逆向きの関係も考えられます。
では私たちは何をすればよいのでしょう。答えはとてもシンプルです。歯ぐきからの出血を「いつものこと」と放置せず、オーラルケアの質を高めること、まずはそこからです。
