File no. 155
《Cordings/コーディングス》
カントリースタイル"とは、その名の通りカントリーサイド(郊外の別荘地など)で過ごす時のコーディネートの呼称。
自然の中に身を置くという点ではアウトドアスタイルと似ているが、着用するアイテムから着こなし方、見た目までがまったく異なる。
アウトドアスタイルが最先端の技術を率先して取り入れるのに対して、カントリースタイルは伝統とスタイルを重んじるのだ。
その本場としてもっとも有名なのは、紳士淑女の伝統的な装いとして古くから親しまれてきたイギリスだろう。
英国王室関係者のスタイルはいつの時代も常に注目されており、とりわけチャールズ国王の装いは、今も昔もカントリースタイルのお手本とされている。
今回は、そんな聖地イギリスのトラディショナルスタイルに欠かせない名門《コーディングス》をご紹介したい。
《コーディングス》は、1839年にイギリス・ロンドン中心部のストランド通りに、コートやレインコートを製造・販売するショップをオープンさせたのが起源。
同社のコートは日常からカントリーサイドでの狩猟にまで活用され、人気を博していた。
1877年には事業を19ピカデリーに移転、さらに施設を追加した。
1900年代の初頭には独自に開発したブーツで特許を取得。
王室関係者のためにそれらのブーツを製造するなど、その功績と活躍は英国中に知れ渡ることとなった。
また、この頃になると、都会の紳士が田舎に足を踏み入れる前に必ず立ち寄るショップ、いわゆるカントリーウエアの名店として名を馳せた。
同ブランドのコートは当時、オープントップ自動車の運転手にも愛用されたという。
1920〜30年代に訪れた不況により、歴史ある名店の多くが閉鎖を余儀なくされる中、《コーディングス》はあえてトレンドに逆行することを決意。
より一層、伝統的なカントリーウエアの取り扱いに注力することで危機を脱した。
1950〜60年代に入ると、同業他社の多くが製造工程をマスプロダクションに切り替えていったが、《コーディングス》は伝統と品質に対して妥協することを断固として拒否。
そして、技術力に定評のある工場や工房と協力し、独自のコレクションを製造し続けた。
この揺るぎない哲学こそ、イギリスを代表するカントリーウエアの名門として国民に支持され続けている理由だろう。
2000年代以降は顧客の一人だったエリック・クラプトンが経営に携わるようになり、それまで以上にイギリスらしさの光るコレクションが展開されている。
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