File no. 130
《KANEKO OPTICAL /カネコ ガンキョウ》
有名どころでいえば、イギリスにあるノーザンプトンは高級紳士靴の一大生産地として世界的に広く知られるエリアだ。
高級紳士靴に限らず、銘品と呼ばれるような製品は伝統と格式、高い技術が途切れることなく受け継がれ、発展を遂げてきた聖地と称される生産地でつくられていることが多い。
実は日本にも世界的に知られる聖地が存在するのをご存知だろうか。
それは眼鏡の聖地、福井県鯖江市である。
鯖江市は人口七万人にも満たない小さな街だが、その小さな街で生産される眼鏡フレームの生産量は、なんと全国生産量の約九割を占め、世界三大生産地の1つとして認知されている。
今回はその福井県鯖江市で誕生し、世界中にファンを持つ日本を代表するアイウエアブランド《金子眼鏡》を紹介したい。
農家にとって農閑期となる冬場を生き延びるための副業として、明治後期に始まったのが鯖江の眼鏡づくり。
戦後の復興と高度経済成長期の始まりを契機に家内工業規模の小さな町工場が増え始め、この時期に後の鯖江市の経済を支える基幹産業となるまでの礎が築かれた。
《金子眼鏡》が産声を上げたのは、まさにそんな時代の最中。
1958年に創業者である金子鍾圭が家族経営の眼鏡卸問屋《金子眼鏡商会》を名乗り、本格的に商売を始めたことからその歴史をスタートさせた。
創業当初は後発だったということもあり、なかなかシェアを獲得できず苦労を強いられることとなるが、その間も着実に知見を蓄えた。
現代表の金子真也が、創業者である父から会社の経営を引き継いだ翌1987年、初めて自社ブランドの眼鏡フレームを発表する。
この眼鏡フレームは企画、デザイン、小売り、さらには製造までを一貫して自社で手掛けた製品。
これは鯖江市に3つの工場を持ち、自社一貫生産体制を確立している現在の《金子眼鏡》の雛形となるプロダクトだった。
その後もオリジナルブランドの企画からデザイン、販売までを手掛け、国内においては眼鏡業界のトレンドリーダーとして確固たる地位を確立。
アパレル業界とのコラボレーションなども積極的に推し進めてきた。
2010年には、初めての社名を冠にした『金子眼鏡店』をオープンさせ、同時に《金子眼鏡》ブランドを立ち上げた。
また、2000年にはニューヨークのソーホー、2016年にはパリに直営店を展開するなど、本格的な海外進出をも果たしている。
世界屈指の眼鏡の聖地で受け継がれてきた《金子眼鏡》の真摯なモノづくり。
それが今、一躍注目を集めている。