File no. 124
《KNIRPS/クニルプス》
歴史あるお洒落な傘といえば、本連載でも取り上げたことのある、イギリス・メイドのクラシックな長傘を想像する人が多いのではないだろうか。
そんな人にぜひとも知っておいてほしいのが、折りたたみ傘を発明した名門《クニルプス》と、同社が展開している機能美に彩られたお洒落な折りたたみ傘だ。
今回は折りたたみ傘のオリジネーターであるブランドの歴史を探る。
1928年のドイツで、ハンス・ハウプトが折りたたみ傘を発明したことから《クニルプス》の歴史が始まる。
同時に折りたたみ傘の特許を取得し、世界初の折りたたみ傘の生産をスタートさせた。
現在では、世界中で当たり前に使われている折りたたみ傘だが、その原点がなんと100年近く前のドイツで誕生していたという事実は、多くの人が知らなかったのではないか。
ちなみに、創始者のハンス・ハウプトは足が悪く、雨の降りそうな外出時には片手にステッキ、もう一方の手に長傘を持たなくてはならなかった。
それを不便に感じていた彼は"ポケットに入るくらい小さい傘をつくれないだろうか"と考えた。
そんなきっかけから世界初の折りたたみ傘の構造が考案されることとなる。
世界初の折りたたみ傘の生産後も《クニルプス》の快進撃は続く。
なんと1965年には、自動で開く機能を備えた傘の開発、生産にも成功。
その第一号モデルとして「オートマティック」が発売された。
その後も《クニルプス》の革新は留まることを知らず、ハイスピードで先進のテクノロジーを開発し、特許を取得し続ける。
1998年に行われたドイツ国内の市場調査では、なんとブランド認知度が95%を達成。
現在ドイツでは《クニルプス》は折りたたみ傘の代名詞となっており、ドイツ語の辞書では"Knirps=折りたたみ傘"と表記されているほど。
また、1950年代当時はドイツの天気予報で雨が降る日を"Knirps Weather(クニルプスウェザー)"と呼んでいたというから驚く。
どれだけドイツ国民に愛され、支持されていたのかが伺えるエピードだ。
2016年には、ブランドの持つ技術やデザイン、品質を象徴するアイコンモデル「ティー・シリーズ」を発売。
2017年には、セーフティー・システム機能を搭載した新たな「ティー・シリーズ」が発売された。
写真の折りたたみ傘「T.220」は、そんなティー・シリーズで展開されているモデル。
開いた状態はもちろんだが、折りたたんでケースに収納した状態まで美しい。
この卓越した機能美こそ《クニルプス》の魅力だ。