問題を抱えたカップルが私のところへ来ると、ほとんどのカップルは「より良くコミュニケーションをとりたい」という相談をしてきます。その中でも、女性が一番不満に感じているのが「彼が私の話を聞いてくれない。聞いてくれているとは思えないんです。」というものです。
今回は、アメリカの心理学者 Barbara Markwayさんのアドバイス
をご紹介します。カップルがより深く強い関係を築き、時には関係自体を保つために、例やシンプルな教訓をふまえたものとなっています。
マディソン(婦人)とテイラー(旦那さん)の例
私が初めてマディソンとテイラーに会ったとき、既に結婚して3年が経っており、4ヶ月になる子供がいました。最初のカウンセリングで、2人は出産前から妊娠の計画を立てていること、新しい命の誕生を楽しみにしていることを語ってくれました。出産から1週間は、マディソンの母親が手助けに駆けつけ、テイラーも仕事を休み、マディソンの経過も良好でした。
しかし、マディソンが子供と2人きりで過ごすようになってきた頃、状況が変わり始めました。マディソンはとても些細な事が気になるようになり、それはやがて大きなパニックを生んでしまうようになりました。少しでも安心したいマディソンは、1日に20回もテイラーへ電話をしたり、早く家に帰ってくるようにせがむようになりました。
テイラーは、あまり良くは思っていませんでしたが、それを辛抱強く聞き入れ、毎日可能な限り早く帰るようにしました。テイラーはマディソンが慣れて不安が解消する事を望みましたが、時が経つごとにさらに悪化していき、彼女はとうとう鬱になりました。 彼女はめったにおしゃれをしなくなり、大半の時間をベッドで過ごすようになりました。
そうするうち、赤ちゃんの世話をすることはできるけれど、子育てに楽しみを見いだせなくなってしまいます。彼女はテイラーを避けて引きこもるようになり、顔を合わせればよく口論するようになりました。
彼らから話を聞く中で、私はあることに気がつきました。テイラーは善意で行動していましたが、その反応は状況をより悪化させてしまっていたのです。
スティーブン・コヴィーは7つの習慣の中で、親身に話を聞くことを妨げてしまう要因として、次の4つを挙げています。
1. 評価、同意したり、反対すること
2. 質問攻めにして、徹底的に調べ上げること
3. 解決方法をアドバイスすること
4. 動機の説明や意味解釈、相手の分析をすること
では、これら4つの言動が、いかに理解や同情を妨げ、マディソンとテイラーに問題の本質への到達を不可能にしているかをみていただきたいましょう。
>マディソン: もう我慢できないわ!
>テイラー: どうしたんだ?(質問)
>マディソン: 子供のせいでおかしくなりそうよ。もうぼろぼろ。あなたはこれがどれだけ大変か、分かってないのよ。
>テイラー: メリーを呼んでみたらどうだ?彼女や彼女の子供達と一緒に過ごせるんじゃないか?(アドバイス)
>マディソン: 彼女にそんな時間はないわよ。それに、問題解決にはならないわ。
>テイラー: お母さんは?お母さんなら、落ち着ける方法をアドバイスしてくれるかもよ。(アドバイス、評価)
>マディソン: あなた、分かってるの?
>テイラー: 疲れているんだろ。最近はよく眠れてないみたいだし、睡眠不足でイライラしてるんだよ。今日は早めに寝てみたらどうだ?子供の世話は私が見るから(動機の説明、評価、アドバイス)
この会話の中でマディソンは、テイラーに助けを求めています。マディソンは子育てがうまくできていないかもしれませんが、彼だけが最後の頼みの綱だったのです。彼に、その綱をつないでほしかったのです。しかしテイラーは話を聞きませんでした。いや、聞いてはいたが、彼女の苦労を理解しようとはしていなかったのです。テイラーは彼の判断基準で返事をしてしまったのです。
「いつ彼女はこの状況から脱出できるのだろう?こんな状態のマディソンは見たことがない。今は人生で最も幸せな時であるはずなのに。もし彼女を助けられないとしたら、何か自分が間違っているのかもしれない」。
当然のことでありますが、テイラーが脅えていたことも聞く力を鈍らせていたのです。彼の不安を聞き入れた後、私たちは2人にいくつか聞くための方法を伝授しました。
* 話を聞いているときは、パートナーの立場になって考えてみること。相手が何を言っているかだけでなく、何を感じでいるかに注目すること
* 相手に自信の考えや感情があるということを、受け入れること
* あなたが受け入れているということを、態度や声のトーン、表情で示すこと
* 話を聞いているとき、質問をせず、あなたの意見を押し殺し、解決法や判断の提示を避けること
* 相手が話し終わったら、最も重要な気持ちや感情を繰り返して要約してあげること
もし、テイラーがこれらのポイントを抑えていたらどうでしょう。
>マディソン: もう限界。何をすればいいかも分からないわ。
>テイラー: 相当参っているみたいだね。
>マディソン: もう、こんなに悪い状態なのは初めてだわ。いつも気が狂いそうよ。
>テイラー: わたしに何かできることはないか。苦しんでる君を見たくないんだ。
>マディソン: あなたは分かってないのよ。ただ私が苦労から抜け出して、前のように戻ってほしいだけでしょう?
>テイラー: そうだな。君がどんな苦労をしてきたか理解するのは難しいけど、以前のように楽しく過ごせなくて残念なんだ。分かってあげたいんだ。話してくれないか?
>マディソン: でも、深いことなんて聞きたくないでしょ?
>テイラー: 私が聞き下手なのは分かってる。でも、聞かせてくれないか。君さえよければ、君と痛みを共有したいんだ。
>マディソン: 私はただ…支えてほしいのよ。
マディソンは彼の腕の中で涙を流しました。テイラーにとって、評価やアドバイスを我慢するというのは簡単なことではありませんでしたが、それにより彼はマディソンの痛みをより深く理解することができ、2人の距離が縮まったのです。それだけではなく、テイラーのサポートや理解がマディソンに、出産後のつらい時期に彼女がどんな助けを求めていたのかを探求させるきっかけを与えたのでした。
このような話の聞き方は、最初は自然に感じられないかもしれません。しかし、それで良いのです。聞くことに関して、完璧になろうとしなくても、あなたがそうであろうとする限り、パートナーはあなたの話を聞き、理解しようとする姿勢を感じ取ってくれるでしょう。それが、2人の関係をより強いものへと導いてくれます。
心のスイッチ、見つけよう -HAPPYW(ハッピーウー)-