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手付かずの大自然を堪能できる最後の秘境「西表島」。その魅力と、島が抱える課題とは?



©Choji Nakahodo

西表島に行ったことがある人は、どのくらい居るだろう。


と、ふと思って、試しに社内の旅好きそうな10人に聞いたところ、全員が沖縄本島には行ったことはあるが、西表島への渡航経験がある者はたった1人(しかもその1人は半年住んでいたという激レア野郎だったので除外したいくらい)。


皆、口を揃えてイリオモテヤマネコだよね?と答えるが、それ以上の知識は皆無。知っているようで知らない、そういう島なのだ。




そういうボクも、つい先日までその一人だった。


シューズブランドのKEENが牽引する「Us 4 IRIOMOTE(アス・フォー・イリオモテ)」というプロジェクトツアーに参加してはじめて、リアルな西表島を知ったといっていい(といってもごく一部だが)。


 


日本に残る、最後の秘境。



沖縄県のなかでは本島の次に大きい島だが、その90%がジャングルに覆われ、島をぐるりと一周できる道もない。唯一、島の南東部から北西部にかけて続く道に信号は2つだけ(小学校前のひとつは教育用とのこと)。


現在は島の大部分が国立公園に指定されており、イリオモテヤマネコやカンムリワシをはじめとした天然記念物や絶滅危惧種を多く有する。


レンタカーでの道中、カンムリワシの姿はたびたび見かけられた。

日本一のマングローブ流域面積をほこる仲間川や、水牛車で海を渡っていく由布島など観光スポットもあるが、当然、どれも自然を楽しむスタイルだ。


そんな基本情報も含め、ほぼ何も知らない状態で参加したツアーだったが、飛行機の遅延などもあり、都内から1日がかりでようやく到着。着くやいなや、神がかった絶景が出迎えてくれた。



 


まずは「知る」ということ。


その秘境で、最初に出会ったのが、石垣金星さんと昭子さんご夫婦。金星さんは、島を守り続け、伝統芸能を継承する、いわば仙人のようなおひと。


染織家の昭子さんとともに、国から許可を得てマングローブを育て、その皮を利用して草木染め(ヒルギ染め)を行い、子どもや若者たちに伝え続けているという。


西表島の生き字引、石垣金星さん。ファッションスタイルも秀逸。

ヒルギの皮を煮出した褐色の液体に漬けて、マングローブの汽水で洗いなどの工程を経ると……。

実際に体験させてもらったのだが、出来栄えは十人十色。人それぞれ性格が現れるといってもいい。藍染とはまた違う独特の風合いが楽しめる。

 


観光客の増加による課題も。



世界自然遺産への登録を目指している西表島(および奄美大島、徳之島、沖縄島北部)。話題性もあり観光客が増加傾向だが、植生や生態系へのダメージ、交通量増加による絶滅危惧種の事故死などの課題を抱えているという。


現在100頭ほどしか生息していないとされているイリオモテヤマネコも、入島者の増加に呼応するように交通事故の報告が増えているそう。

人間とイリオモテヤマネコの共存共栄を目指し、数年前からヤマネコトンネルなる道路下を通るアンダーパスを設けて対策を試みているが、そもそも観光客であるボクらが配慮しないと意味がないのだ。


地元の小学生たちが手作りした看板を設置して注意喚起。島内の道路では時速40kmに制限されているが、信号がほとんどないためついスピードが出がち。ボクらの小さな配慮がヤマネコの命を救う。

NPOや地元の有志たちにより、目撃情報が多い道路を夜間にクルマで巡回する「やまねこパトロール」という活動も行われている。日が落ちるころから約3時間、時速20kmで走り、対向車の速度測定調査などを行って啓発活動に活かしているそう。

 


一方、マングローブでは漂流ゴミ問題が。



南の島というと青い海やサンゴ礁というイメージが先走りがちだが、一方で問題を抱えていることを改めて知った。


数年前からテレビではたびたび目にする漂流(漂着)ゴミだが、西表島でも同じ問題を抱えていたのだ。


潮が引き、マングローブの密林を抜けて沿岸部に出るとそこは絶景。砂漠のオアシスのような景色が広がっていたのだが、よく見ると枝にロープが絡まっていたり、ペットボトルがわらわら落ちていたり……。


ペットボトルのラベルをみると、台湾や韓国、中国などから流れ着いたものが多いことがわかる。

漁網やロープなどの漂流ゴミがマングローブに絡まって放置すると、新芽が育たず根っこが腐っていき、ゆくゆくは防潮林の減少につながるそう。

さらにマングローブの奥の方に進んでいくと、台風で飛ばされて、処理もままならない状態で多くの漂流ゴミが溜まってしまっていた。



西表島バナナハウス代表で、西表エコプロジェクトを牽引する森本さんは、こうした漂流ゴミを回収・処理するビーチクリーンアップ活動を、ボランティアで2001年から18 年間続けている。

 


Us 4 IRIOMOTEとは?


これまで紹介した、西表島の自然と文化を継承するために、様々な課題に対して取り組む活動が、シューズメーカーKEENが牽引するUs 4 IRIOMOTE(アス・フォー・イリオモテ)。


基金を設立し、西表島で活躍するNPOやボランティアの支援や、観光客のマナー啓蒙、文化発信に役立てている。


イリオモテヤマネコをモチーフに、4月12日に発売されたKEENのユニークEVOも、その一環。売上の10%をUs 4 IRIOMOTEプロジェクトに活用していくとのことだ。



UNEEK EVO “IRIOMOTE”パック ¥14040


 


日本最後の秘境と言われる西表島。


豊かな自然と文化を守るためにボクらにできることは、西表島の問題を知り、ふたたび足を運ぶことくらいだけど、このシューズを履いて大自然のなかでカヌーやフィッシングを満喫すれば、その一員になれた気がしてくるかもしれない。


というわけで、つぎは取材でなく、本気で遊びに行きたいと思う!



  • Photo/Choji Nakahodo,GO OUT Report&Text/GO OUT


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