冬はキャンプのシーズンオフなんて言われたのも今は昔。暖房器具や防寒ウエアの進化により、近年は冬でも快適にキャンプを楽しめるようになってきた。むしろ虫がいない冬のほうが好き、なんてキャンパーも多いのでは?
そんな冬キャンプの醍醐味のひとつが、焚き火。寒いフィールドで暖を取りながら家族や仲間と語りあったり、ノンビリ料理を楽しんだり……。
そこで今回のタープ下座談会のテーマは、“焚き火”に決定! とはいえ、普遍的な魅力は語られ尽くした感があるので、ミドル世代に向けて、ちょっとオトナな嗜み方を語ってもらう。
ということで集まってもらったのは、親子で全国のキャンプ場を巡っている猪俣さん、火と焚き火の専門店イルビフの堀之内さん、ブッシュクラフトアドバイザーの前原さんの3名。
それぞれ“キャンプ=焚き火”と言っても過言ではない焚き火ラバーで、もちろん、この冬も満喫している。本日は、堀之内さんが新たなオープンさせた、三郷市の焚き火フィールド『みさと焚火暖地(ミサトタキビダンチ)』にタープを張らせてもらった。
焚き火の原風景は五右衛門風呂。
―まずは焚き火歴と、ハマッたキッカケを教えてください。
猪俣「20年くらいですね。最初は直火(地面に薪を置いて焚き火すること)でした。それが楽しくて、キャンプにハマったようなものです」
前原「ボクは10年くらいです。最初は友だちとキャンプをはじめて、そこからブッシュクラフトにハマって、野営の延長で焚き火をするようになりました。だからボクも、どちらかといえば直火派です」
堀之内「私は学生の頃から焚き火や薪ストーブが好きで、いまは専門店までやっています。でも、それは子ども時代に住んでいた家が五右衛門風呂で、毎日火でお湯を沸かしていたのが原風景にあるからなんです」
猪俣「ボクも実家が新木場のベニヤ問屋で、子どもの頃から廃材を燃やす手伝いをしていて、火の扱いは身近だったかも。それが原風景にある気がする」
前原「2人とも原風景が特殊過ぎるでしょ!(笑)」
焚き火とAMラジオは相性バツグン?
ー最近はどんな焚き火を楽しんでいますか?
前原「ソロでもグループでもやるけど、焚き火をしているときは何もしないことが多いです。ノンビリと火の面倒を見るのが好きで。でもコーヒーは必ず飲みますね。北欧スタイルの煮出しコーヒーを作ります」
堀之内「最近はソロが多いですね。焚き火をして、ラジオを聴きながらお酒を飲むのが好きなんですよ。焚き火ってラジオと相性がいいと思うんです。特にAMのアナログっぽい音を小さく流して、お酒を飲むが至福っていうか」
猪俣「なんかわかる気がする(笑)。ソロならではですよね。ボクは息子と2人でやることが多いけど、料理が好きだから、焚き火料理を楽しんでいます。それこそ親子で一緒に作ったりとか」
前原「猪俣さん、お子さんと一緒に全国のキャンプ場を巡っているんですよね?」
猪俣「そうそう。最近は海外にも進出してますよ。韓国とかタイとか。あとアフリカ」
前原「え、アフリカでキャンプできるんですか?」
マサイ族は焚き火の達人? アフリカのキャンプ事情。
猪俣「もちろん! 人類が誕生した場所のひとつだし、火が生まれた場所かもしれないから、焚き火好きとして1度は行っておきたいでしょ(笑)」
堀之内「それ、ちょっと気になりますね(笑) どんな感じなんですか?」
猪俣「キャンプ場ではマサイ族が警備をしていて、野生動物から護ってくれるんですよ。あと火の世話もしてくれたり。直前まで雨が降っていたけど、素早く薪を組んで火を付けてくれましたよ。めちゃくちゃ慣れています」
前原「ブッシュクラフトとかするのかな……」
猪俣「むしろ、それが生活ですからね。土で炉を作って料理したり。ホントに日常だから、薪の使い方とかもソツがない」
堀之内「確かに海外には、焚き火が生活の一部になっているところもありますよね。日本ではレジャーだけど」
猪俣「でもキャンプ場では、観光客の人と一緒に火を囲んで楽しそうでした。機会があれば行ってみてください」
お気に入りの相棒(焚き火台)を拝見。
―今日はお気に入りの焚き火台を持参してもらいました。それぞれ紹介してもらえますか?
前原「タキビズムっていうブランドのジカビってモデルだけど、その名の通り、直火に近い焚き火が楽しめるんですよ。ブッシュクラフトは地面に座って作業するから、この高さが便利なんです」
猪俣「直火っぽく楽しめるのはいいなー」
堀之内「この焚き火台、ウチでもかなり売れていますよ。横にケトルを置けるのがいいですよね」
前原「そうなんですよ。ここにトランギアのケトルを置いて、煮出しコーヒーを作るのが定番ですね。シンプルで使いやすいです」
堀之内「ファイヤーボックスのチタンモデルなんですけど、とにかくコンパクトで持ち運びしやすい。枝とか燃やせるし、ちょっとした料理もできます」
前原「ボクも最近バックパックスタイルでキャンプをするから、畳めるのは魅力的ですね」
堀之内「収納するときは、こんなにコンパクトになります。最近は、原点回帰的にシンプルな焚き火台が人気だけど、軽量性や手軽さを求めるヒトが増えてきているカンジもします」
猪俣「ボクもペトロマックスの同じようなモデル持っていますけど、このサイズは便利ですよね」
猪俣「ボクはソロストーブの2番目に小さいモデル、キャンプファイヤーです。最初にこれより大きいレンジャーってモデルを買って、使い勝手がいいのでこれも入手しました」
堀之内「二次燃焼するから煙が出ないのがいいですよね」
猪俣「そうなんですよ。大人数でやると、誰かが煙の犠牲になるけど、これはそんなこともないです。ソロストーブに中華鍋を乗せて、チャーハンを作るのが好きなんですよね」
前原「中華鍋も置きやすそうなカタチですもんね(笑)」
堀之内「ソロストーブって炎の位置が安定していて、ちゃんと一点に集中するんですよ。だから料理に使いやすいと思います」
猪俣「ホントそうなんですよ。だから火力が必要な中華料理と相性バツグンです。でも炎を楽しむことはできないかも」
堀之内「焚き火台にもいろんな用途のベクトルがありますからね。調理向きとか、炎の鑑賞に適しているモデルとか」
前原「だから最初に目的を決めてから選ぶほうがいいですよね」
焚き火にまつわる便利ギアも要注目。
―焚き火にまつわるギアも持ってきてくれたそうですね。
堀之内「ウチでも販売しているアイテムになりますが、愛知県の町工場で誕生したブランド、サスラヲのマキタテというアイテムです。こうやって焚き火台の上にセットして、薪を乗せて使うんですよ」
猪俣「なるほど。薪を汲み上げた状態で、空気の通り道を作るのか。気になりますね。ちょっと使ってみたいかも」
前原「いいですね。少しの薪で組めるから、薪の節約にもなりそう。ボクとしてはコンパクトになるのも魅力です」
猪俣「ボクはハンドソーと火かき棒とかを持ってきました。1番のお気に入りはタック。木の枝モチーフのデザインがスタイリッシュだなと」
前原「それ、珍しいですよね。あまり見たことないかも」
猪俣「でしょ? でも実用性で考えたら、タキビズムのブレス トゥ ファイヤー。火かき棒と火吹き棒が一体化しているから、めちゃくちゃ便利」
前原「ボクはナイフと鉈です。モーラナイフのエルドリスはコンパクトだけど、これ1本でフェザースティックも作れるし料理もできる。ファイヤースターターも付いているから着火にも使えるんです」
堀之内「そのナイフ、ボクも愛用しています。刃の形状や厚さが場所によって変わるから、ホントにいろんな用途に使えるんですよね」
前原「あとはヒナタストアでも扱っている多喜火鉈ですね。これ、めちゃくちゃ薪割りがしやすくて」
猪俣「ブッシュクラフトが好きな人の定番ですよね。バトニングしているのを見てたら、焚き火したくなってきた(笑)」
ジブンと向き合うソロ焚き火がオトナの嗜み。
ーじゃあ焚き火しながら話しましょう。むしろここからが本題です。みなさんに、オトナの焚き火の嗜み方を教えていただければと。
堀之内「うーん、ジブンが思うのは、焚き火って、みんなで語り合うようなイメージがあるじゃないですか。でも最近はソロの焚き火がいいなと思っていて」
前原「若い頃はみんなでワイワイやるのが楽しいけど、年齢を重ねていくと、ひとりのジカンも大切だなって思うようになりますよね」
猪俣「確かに。ファミリーキャンプでも家族が寝た後に、熾火になった焚き火を1人でいじりながら、ぼーっとするのが好きだからよくわかる」
堀之内「ジブンとひたすら向き合うジカンですよね。普段、悩んでいることをなんとなくボンヤリ考えながら火をいじっていると解決策が浮かんだり、新しいアイデアが降ってきたりってこともあるかなと」
前原「逆に、火を眺めていると日常を忘れられる瞬間もありますよね」
焚き火にはリセット効果がある?
堀之内「いまってSNSとかで繋がりやすい時代になっていて、他人とのバリアがないんですよ。だけど焚き火って、本来は動物を寄せ付けない効果があるっていうか、そういう意味合いもあるから、周りと距離を置いて1人になりたいときにする、焚き火もいいんじゃないかって。……疲れてんのかな?(笑)」
猪俣&前原「あはははは! それはちょっと疲れてるかも(笑)」
堀之内「でもソロキャンプが流行っている背景も、周りとの繋がりや距離感をリセットしたいヒトが多いんじゃないかと思っていて。リセットする力って私は言っているんですけど」
猪俣「心のサウナですね」
前原「いいこと言いますね! でも確かに焚き火は癒し効果っていうか、リセット効果がある気がします」
堀之内「リフレッシュという意味では、ヨガに近いかも。ジブンのために費やせるジカン。それがオトナの焚き火なのかなと」
1度は味わいたい、直火の暖房効果。
―ソロ焚き火こそ、オトナの嗜みってことですね。オススメのシチュエーションとかあります?
前原「ボクはやっぱり、自然を身近に感じることができるブッシュクラフトをオススメしたいです。無心でフェザースティックを作ったりして」
猪俣「ボクとしては直火を1度体験してほしいですね。できれば砂利じゃなく土や草地で」
堀之内「ここもそうだけど、たまにありますよね。直火OKのキャンプ場」
猪俣「ありますよね。ほら、西部劇とか昔の映画で、焚き火の横で寝ているシーンとかあるじゃないですか。あれって直暖房の効果があって地面が暖かいんですよ。その感覚を味わってほしいかも」
前原「それ、わかります! 大地の温もりを感じますよね。山でもいいけど、今度ここでやりたいです」
堀之内「いまのところオーバーナイトは考えていないけど、気軽に直火の焚き火ができる場所にするから、そういう楽しみ方も是非」
猪俣「会社帰りにちょっと立ち寄って焚き火をするみたいな(笑)」
前原「三郷駅から徒歩圏内だし、全然ありですよ!」
- ※『みさと焚火暖地(ミサトタキビダンチ)』の問い合わせは、火とアウトドアの専門iLbfまで(ilbf.jimdoweb.com/)
Photo/Taizo Shukuri
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