梅雨が明けたかどうかは置いといて、外はもう真夏。喉を潤し汗だくになった体を冷やしてくれる飲み物といえば、そう、麦酒(ビール)です。中でもここ最近、街中のバーやレストラン、キャンプや音楽イベントなどで「クラフトビール」なるものを見たり聞いたりするけど、種類が多すぎてどれを選んでいいのやら、と思っている方も多いはず。
そこで今回は、クラフトビールのことなら俺に語らせろ、という“クラフトビールLOVE”を自認する5人に集まって頂き、それぞれのおすすめビールを持ってきて飲み比べ!という企画を敢行することに。
そもそもクラフトビールって?
大手飲料メーカーからは毎年たくさんの新種ビールが発売されますが、最近は国内外で独自のこだわりを持って作られたクラフトビールも多数誕生しており、その個性的な味に惚れ込んだファンから多くの支持を獲得しています。
ここ日本でも1994年の酒税法改正により、手軽に、そして身近にビールが作られるようになったことから、手作りのビール、いわゆる“地ビール”が誕生。しかし当時の地ビールは“ご当地ビール”というお土産品的な扱いが強く、ブームは一旦沈静化。
その後2010年ごろから、全国各地に個性的で独創的なブルワーが登場し、本物志向で美味しさを追及したビールが生産され始めた頃から“クラフトビール”と呼ばれるようになったようです。
テーブルやチェアのセットが完了すると、それぞれご自慢のクラフトビールを取り出して着席、そしてまずは乾杯!今や単なるブームを超えた感さえあるこの“クラフトビール”、その魅力を探るために、キャンプを楽しみながらあれこれ語って頂きました。
クラフトビールの魅力とは?
GO OUT「今日はお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、皆さんは毎日のようにクラフトビールを飲んでるんですか?」
月岡「いや、普段は普通のビールですよ。クラフトビールって、やっぱり値段はそこそこするので、友達と集まった時やキャンプなどで、特別な一杯を楽しむものとして飲んでいます」
トム「ですよねー。安いものでも350ml缶で600円から800円、高いものだと2000円以上するのもあるし。毎日はなかなか飲めないですよ」
GO OUT「ではみなさんがクラフトビール好きになったワケを聞きたいです。最初にクラフトビールに惹かれたきっかけって、どんな感じだったんでしょう?」
月岡「ボクの場合は最初 “ジャケ買い”だったんですよ。レコード買うのと同じ感覚で。気に入ったパッケージのクラフトビールを見つけては買って飲んでいたカンジです」
相馬「知らなくてもなんか良さげだから買う!みたいなことはありますよね。」
月岡「ある日、新宿で飲んだあとの2軒目で行った目白にあるタップルーム(クラフトビール醸造所が自社製のビールを客に提供する場所のこと)で、INKHORN BREWING(インクホーンブルーイング)っていう醸造所があるんですけど、そこに行ってジャケ買いしたのがこのJAVA FINCH(ジャワ フィンチ)です。ラベルの美しさに負けず劣らず美味しいですよ」
月岡「相馬さんは何かきっかけありました?」
相馬「ボクのお店はアメリカ西海岸のカルチャーをベースにしたスタイルなんですけど、アメリカに買付に行った時に見つけて、面白いラベルのビールがあるなぁと思って飲み始めたのが最初なんです」
相馬「例えばこれはポートランドのビールなんですけど、BREAK SIDE(ブレークサイド)というブルワリーのメインの看板商品で、WANDERLUST(ワンダーラスト)という銘柄。いま一番好きなIPAですね。それまでクラフトビールってあまり馴染みがなかったんですが、ギャラリー兼アパレルショップ、そして飲める場所っていうスタイルのお店なんで、こういうビールを入れたら面白いなと思って取り扱いを始めたんです」
斉藤「ボクの場合は、もともと普通に日本のビールが好きだったんですが、たまたまこのSIERRA NEVADA(シエラネバダ)を初めて飲んだ時、すっげー美味しい!って思ったんですよね。それからクラフトビールを好んで飲むようになりました。その後、アメリカに行った時に同じ銘柄を見つけて、改めて飲んでみて、やっぱり美味いなって確信して。そこからクラフトビールを取り扱う店をやろう!って動き始めたんですよ」
月岡「このビールとの出会いがお店を始めるキッカケになったと」
斉藤「これをビールサーバーから出せるドラフトで飲めるところが近くにはなかったんで、自分でやれば飲めるかなって思いまして(笑)。それで今のお店をオープンさせてから、このシエラネバダをメインで提供し始めたんです」
トム「ビール愛がすごい(笑)」
長田「ボクのお店でもクラフトビールを置いているんですけど、取り扱いを始めたきっかけは、仲間とキャンプした時にこのビールに出会って。“伊豆のぬし釣り”ってチャンネルをやってるYouTuberさんと、静岡の2つのブルワリーとのコラボ作で、OSAKEMAN IPA(お酒マンIPA)とCAMPai HAZY(キャンパイ ヘイジー)です。このYouTubeチャンネルの人気がすごくて、ラベルデザインを見ただけで買って行かれる方が結構いるので驚いています」
トム「静岡はクラフトビールの聖地って言われてて、結構ブルワリーが多いんですよね。東も真ん中も西も」
長田「クラフトビールを店に置くために酒販免許まで取ってしまいました(笑)。この2つはレジの横で今年3月から販売しています」
トム「ボクの場合、普段はネットでビールを買っていたんですけど、たまたま家の近所に『一期一会~る』っていうクラフトビール界隈では結構有名なお店があって、そこの店主さんから色々教えて頂いたのがきっかけなんです。
で、そこで教えてもらったクラフトビール版の食べログみたいなUntappdっていうアプリがあるんですけど、クラフトビールを買うときは必ず参考にしてます。これはROOT+BRANCH(ルートブランチ)のGrammatical Fiction(グラマティカルフィクション)ていう銘柄のヘイジーで、Untappdの評価でも高かったので買ってみました」
基本はペールエール。そこからIPAが今のクラフトビールブームを作った。
トム「今のクラフトビールの主流がIPAっていって、ビールは基本ラガー系かエール系かに分かれるんですけど、そのエール系の中にペールエールっていうイギリス生まれのジャンルがあって、そのペールエールをイギリスの大航海時代にインドに持って行く時に、ホップをすげー沢山入れたんですよ。そうしないと傷んじゃうっていうか、味が落ちちゃうっていうんで。そうやって作られたのがインディアンペールエール、頭文字をとってIPAっていう」
GO OUT「なるほど、クラフトビールはホップが重要なわけなんですね」
トム「ビールの原材料って4つなんですよ。水、麦芽とホップと酵母。この4つで構成されているんです」
GO OUT「ホップってあれですよね、松ぼっくりみたいな」
トム「どこかにホップのイラストが入ってるビールなかった?」
斉藤「あ、これこれ。ここにあります」
トム「そこに描かれているのが正にホップなんですけど、ホップって種類が100以上あって、まあそれぞれのホップに特徴や個性があったり、どういう風にホップを使うかとか。入れるタイミングでビールの味が変わるんですよね。ホップの使い方や量でブルワリーの腕が試されるところが面白い。
ちなみに、アロマホップって聞いたことないですか? 香りをつけるのが“アロマホップ”なんですけど、苦味をつけるのが“ビタリングホップ”って言います。アメリカ西海岸のビールでよく使われるカスケードホップなんかはアロマホップの代表格で、柑橘系のフルーティな味わいになります」
GO OUT 「ホップだけでそんなに種類があるんですね」
トム「IPAはホップをたくさん使うので、より個性や違いが分かりやすくて、フルーティだったり苦味だったりとかそういうのがあるんで、2010年代になってIPAが流行っていったわけなんです。クラフトビール界隈の中でIPAが流行って、そのIPAの中でアメリカのニューイングランド州で作られてるIPAのことを“ニューイングランドIPA”って言って、少し濁ってるんですよ。
それは小麦やオーツ麦などを使用して、発酵後に濾過しないことで濁りを出します。製法で味を多少変えているんですね。ニューイングランドIPAと、ヘイジーっていう言い方の違いだけで、どっちがどうだとかはないんですけど、全体的に濁ってるクラフトビールのことをニューイングランドIPAって言ったり、ヘイジーって言ったり。これがいま流行ってるわけです」
ヘイジーなクラフトビールって?
皆さんそれぞれが色んなきっかけでクラフトビールの“沼“に入って行った模様。専門用語も飛び交う中、やたら多く出てくるのが”ヘイジー“ってワード。初心者には分かりにくい、この“ヘイジー”って一体何を指すのだろう?
トム「ヘイジーって要するに英語の名詞 “Haze(霧、もや)”からきていて、その形容詞の“Hazy”は霞んだ、モヤのかかった、はっきりしないっていう風に訳されるんですけど、クラフトビール通の間では“濁ってる”っていう意味で使われています。
Hazy IPA は香りが豊かで苦味が弱いのが特徴で、フルーティなものからドリンカブルなもの、ブルワリーや地域ごとにそれぞれに個性もあって、面白いんですよね」
トム「ボクの場合、最初は濁ってるのがいいなって思って飲むんですけど、だんだん他のを飲みたくなるんですよ、ヘイジー疲れというか。あと合う料理がわからない(笑)」
斉藤「うちでも1杯目からヘイジーを好んで飲まれるお客さんは多いですね」
月岡「濁ってないとクラフトビールじゃない感があるからかな?」
トム「普通にヴァイツェンを飲んだりとか、ウィート系のビールで十分なんですけど、最近はIPAの中でもヘイジーIPAが流行ってて、それが一番日本で得意なのが『うちゅうブルーイング』だと思う」
月岡「変わったところでは、熊本に『AMAKUSA SONAR BEER』っていうブルワリーがあるんですけど、そこでは“スムージーサワーエール”っていうものを作ってるんです。Fiament(フィアメント)っていう銘柄なんですけど、副原料にマンゴーとかバナナが入ってたりで、今日飲むビールで一番びっくりすると思いますよ。ホントにまるでスムージーみたいなんです」
トム「サワーエールは次に流行るジャンルって言われてるんですよ。国内で美味しいスムージーのサワーエールを作れるのは、さっき紹介した『うちゅうブルーイング』と、『AMAKUSA SONER BEER』しかない。
マンゴーピューレとか、何ならソフトクリームとか、ワッフルとかも入れちゃう。副原料がやばいんですよ。ただそれをやっちゃうと、タンクを完全に清掃しなきゃいけない。普通は大変すぎてやらないんだけど、彼らはその手間を惜しまず作っています」
ヘイジーブームの次は、ラガーに原点回帰?
トム「今年の春にあった、日本一のクラフトビールを決めるイベントあるじゃないですか、何て言ったかな」
GO OUT「ジャパンブルワーズカップですかね」
トム 「それです。今年3年ぶりに開催されて大好評だったんですが、ヘイジー以外にも色んなIPAがエントリーされていました」
斉藤「一時期はヘイジーばっかり飲んでましたが、最近ヘイジーじゃないIPAの方が上昇感があるなって思います」
長田「IPA以外には気になるビールありました?」
トム「 それこそラガー系の,ピルスナー、ヘレスといったシンプルなビールに各ブルワリーが力を入れてる気がしましたね」
斉藤「ラガー系は増えましたよね。自分も最近、ラガーを好んで飲んでいます」
トム「原点回帰というか、だんだん普通のビールに戻ってきたような……」
相馬「パタゴニアもラガーを出しまして、最近このゴールドラベルのやつが発売されたんですよ。今年の夏限定って聞きました」
月岡「限定醸造らしいですね。在庫がなくなり次第終了みたい」
トム「結局だんだん飲みやすいやつというか、そういう流れに戻ってるんじゃない?」
斉藤「ある意味、ひと周りしちゃってるんですかね。結局ヘイジーでもエールでもラガーでも、それぞれの旨さを演出できちゃうのがクラフトビールの魅力といえますね」
というわけで、夜が更けても話が尽きぬクラフトビール談義。合わせる料理が難しいと言いつつも、皆さんが持ち寄った様々なクラフトビールをシェアしながらのキャンプ飯は最高でした。
今回ご紹介したクラフトビールは、まだほんの一部。それぞれがお薦めする逸品クラフトビールについては、また別記事にてたっぷりとご紹介していきます。
Photo/Fumihiko Ikemoto、GO OUT
The post クラフトビール大好き!な5人が、キャンプで語る今どきの麦酒事情。【クラフトビールCAMP】 first appeared on GO OUT.