2020年度の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)に並んで今、私が毎週もっとも楽しみにしており、欠かさず録画予約しているドラマがある。『行列の女神〜らーめん才遊記〜』(テレビ東京系)だ。
かつて『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載していた漫画『ラーメン発見伝』(作画:河合単/原作:久部緑郎/原作協力:石神秀幸)の登場人物の一部が引き続き登場する外伝的な続編にあたる『らーめん才遊記』をドラマ化したもので(テレビ東京系)、もちろんのこと(?)コミック時代から何度も読み返すほどに私は本作の大ファンだったりする。
コミック版の準主役であるカリスマラーメン職人・芹沢達也の冷徹かつ適確で理路整然としたビジネスライクな分析の数々が、とにもかくにも素晴らしい。ラーメン屋を開業するつもりはさらさらない私ですら「なんとなく勉強になった」気分に浸れる(=他分野でも間違いなく応用できる) “名言”のオン・パレード! スキンヘッド(※ラーメンに頭髪を散らさないための配慮)にインテリ眼鏡の中年男……とキャラも抜群に立っている。さて。この芹沢サンの役をはたして誰が演じるのか……なんて、あんなこんな想いを巡らせていたら、なんと! 「芹沢達也」が「芹沢達美」になって、『グランメゾン東京』(TBS系)でもフレンチのシェフを演じたばかりの鈴木京香(51)が大抜擢!! 仰天した……が、ソレはソレで悪くない。このヒト、いつの間にやら料理人役が専門職になってきた?
あと、主役の、やはりカリスマ的な料理評論家である母の薫陶を受けて育った若き料理の天才(※しかしラーメンに関してはまったくの素人)・汐見ゆとり役を演じる黒島結菜(23)も、ドンピシャにハマっている。2017年に放送された主演作の土曜時代ドラマ『アシガール』(NHK)が新型コロナショックの影響によって急遽再放送となり、一躍注目を浴びた「ラッキーな女優」みたいなことを日刊ゲンダイDIGITALが報じていたが、社会ズレしていない世間知らずなキャラをなかなか達者に演じきっている……と私は評価している。
ドラマ全体を観ても、原作の世界観を台無しにしない範囲での大胆なマイナーチェンジが所々に施され、漫画とドラマで二度美味しい秀作に仕上がっている。実写で次々と登場するラーメンについつい喉を鳴らしてしまう「飯テロ」的要素も満載なのは申すまでもない。とりあえず、すでに登場した、もしくは今後私が登場を待ちわびている“芹沢名言”のいくつかを、ここで紹介しておこう。その詳細はドラマ、あるいは漫画にて……ってことで。
・ おまえ、ラーメン屋をやりたいのか? 持ちたいのか? どっちだ?
・ 「やる」という クライアントに、「やるな」という 助言だけは してはならないのだ
・ 「金を払う」とは 仕事に責任を負わせること、「金を貰う」とは仕事に責任を負うことだ。金の介在しない仕事は 絶対に無責任なものになる
・ いいものなら 売れるなどという ナイーブな考え方は捨てろ。
・ 料理をうまいと 感じる際、そこには 未知への感動と、既知への安堵という両側がある
・ お客様は 神様などでは ありません。お客様とは…人間です
・ ラーメンとは…フェイクから 真実を生み出そうとする 情熱そのものです
ちなみに、私は「原作協力」として名を連ねているラーメン評論家の第一人者・石神秀幸氏とは、ちょっとした親交がある……のだけれど、私が好きなラーメン屋を石神氏にはことごとく全否定され、逆に彼がオススメするラーメン屋はどれもイマイチ味が物足りなかったりする。もしかすると、私は芹沢サンがおっしゃるところの典型的な「舌バカ」なのかもしれない(笑)。