■結婚に必死になるのはかっこわるい?
結婚したいとなると、女性たちは周りからどう見られるかなど意識せずに婚活にのめり込む。だが男性の場合、そうなる人は多くはなさそうだ。
「だってかっこわるいでしょ、婚活にのめり込むなんて」
そう言うのは、スグルさん(42歳)だ。就職氷河期世代の彼は、大学を出たときに就職することができなかった。そのまま大学院に入り、なんとか中堅企業に潜り込んだ。
「女性の少ない会社なんですよ。社内恋愛なんてほぼ無理だなという環境。それでも20代はまったく焦っていなかった。30歳過ぎても、まだまだいいやって思っていました」
恋愛がまったくなかったわけではない。学生時代の後輩に再会して、1年ほどつきあったこともある。だが、彼が優柔不断で結婚のタイミングを逃してしまったという。
「なんだか結婚に必死になるのがかっこわるいなと思ったし、男はいくつになっても結婚できるという思い込みもありました。そうやっているうちに、あっという間に40歳を迎えてしまったんです」
ふと周りを見渡すと、友人たちはみな結婚している。中には離婚して再婚までしている人もいた。そこで初めて,彼は焦燥感を覚えたという。
「かっこわるいなんて言ってられない。このままだとすぐ50歳になる。それから子どもができたらもっと大変。何だか突き動かされるようにして、結婚相談所に登録したりネットで結婚相手を探すサイトに登録したりしたんです」
婚活パーティにも行ってみた。だが彼が予想していたのとは違い、パーティにはけっこう「イケてる男たち」もいる。誰も彼とはカップルになってくれない。
■どうしたらいいのかわからない…
1年間、婚活に没頭してみたが、成果が上がらない。成果が上がらないとやる気がなくなるのは人の常だ。
「どんどん自分を評価できなくなっていくんですよね。ごく普通の男だと自分では思っていたけど、誰にも選ばれない存在だったんだと情けなくなっていく。そうしているうちに、何も結婚だけが人生じゃないと逃避する気持ちがわいてきて」
とはいえ、あきらめて独身生活を謳歌しようと割りきることもできない。結婚相談所では、自分が思っているより女性ウケが悪いことも指摘された。
「僕のものの言い方が偉そうに聞こえるとか、女性の気持ちがまったくわかっていないとか、女性のカウンセラーにさんざん言われました。自分では気を遣っているつもりなのに、それじゃ女性の心は動かせません、なんて言われて。こっちも大人だから否定ばかりされたくない。僕にだっていいところがあるはずだし、そこを見てくれる女性とつきあいたいと言ったら、そんなことではいつまでたっても無理だとか、あなたは素直じゃないとか」
結婚したいという情熱が足りないと言われたこともある。だが、そもそも結婚というのは、相手があってこそ。どんどん好きになっていくから結婚を考えるわけで、結婚ありきというわけではないと疑問もわいてきた。
「結局、今まで結婚できていないわけだから、何を言ってもリアリティがないんですけどね。ただ、自己否定したり自己卑下したりすることに疲れました」
これからどうしたらいいのかまったくわからないと彼は言う。
「とりあえずはバツイチの友だちとよく飲んでます。スポーツジムでフットサルも始めたらこれがおもしろくて。でもこちらも男ばかりで楽しんでいる。どんどん結婚から遠ざかっているような気はしています」
結婚には、縁とタイミングと勢いが必要だ。彼はまだその環境にいないだけかもしれない。