夫は「家庭に居場所がない」と言うが、そうしているのは自分ではないか、と妻たちは口をとがらせる。実際、話を聞いてみると確かに夫自ら居場所をなくしているケースもあるようだ。
■帰ってきても仕事ばかり
「うちの夫は、帰ってくると自室に閉じこもっちゃうんですよね。食事もとらないことがけっこうあるんです」
アカネさん(40歳)は不満そうだ。小学校低学年と5歳の子をもつワーキングマザーだが、育児も家事もほぼワンオペ。ときおり夫の母親が手伝いに来てくれている。
「義母によれば、夫は昔から“変わり者”だったみたい。自分のしたいことがあると熱中して、他には目が向かなくなる子だったそうです。それは今も同じですね」
結婚してすぐに転職した職場での仕事が気に入ったようで、それからは仕事三昧。最近、ますますそれが激しくなり、帰宅するなり自室にこもることが多い。
「研究職なので、どこまでも突きつめてしまう。好きなんでしょうね。でも食事を用意している身からすると、部屋にこもってご飯も食べないのは尋常じゃないと思う。体によくないと思って部屋まで食事を運ぶこともあるんです。すると『ありがとう。置いておいて』と言うけど翌朝見ると食べてない」
本当に仕事をしているのかと深夜、こっそり部屋を覗いたことがあるが、鬼気迫る感じでパソコンを見たり資料を読んだりしていた。
「子どもが小さいので、もうちょっと一緒にいる時間をとってほしいんですけどね。体は心配だけど、私も夫への愛情が日に日に薄れていくんです」
仕事熱心なのはいいが程度問題。家庭をどう思っているのか聞いてみたいとアカネさんは、さらに不服そうに口をとがらせた。
■ゲームばかりして家族と交流を図らない
仕事をしているならまだいい、うちはゲームばかりで子どもに示しもつかないと嘆くのは、ユキノさん(42歳)だ。7歳と3歳の子がいるが、上の子は「おとうさんだってやってる」とゲームばかりするようになった。それを夫に言うと、夫は夫婦の寝室から出て来なくなったという。
「最近は残業もないみたいで、6時くらいには帰ってきます。ぱっと食事を終えると、子どもたちと話すこともなく寝室へ。私は日付けが変わるころに寝室に入りますが、まだゲームをしていますからね。ときどき私が下の子と一緒に寝ちゃうこともあるんですが、そんなときはより伸び伸びとやっているようです」
ゲーム依存かと心配になって医者に相談に行ったこともある。だが、仕事を休むことはないので、依存といえるほどではないと言われたそうだ。
「家族とろくに口もきかないことをどう思っているのかと尋ねたこともあるんです。でも夫はモゴモゴしているだけでちゃんと答えませんでした。子どもにも悪影響があると言ってはいるんですが」
そんなときはリビングで本を読むフリをしているが、夫の心はリビングにはない。トイレに行くようなそぶりをして寝室にはいって戻ってこなくなるのが習慣だ。
「いつか子どもも私も夫のことを嫌いになる。そんな気がします。そのとき彼はどうするつもりなのか。折りを見てそんなことも話すのですが、ゲーム熱は冷めないんですよね」
仕事に支障はなくても日常生活、家庭生活には支障をきたしている。本人がそれを自覚していないのが気になるところだ。