■「条件反射」と「無条件反射」は全く別もの!
筆者は毎朝きっちりゴハン(白米)を食べたい派。とは言え、毎朝、炊飯器でゴハンを炊くのも億劫なので、昨夜の残りゴハンをお茶漬けにしてかっ込むという朝食が多いんです。
でも、ただお茶漬けにするだけでは物寂しい…。そこで筆者はお茶漬けゴハンの上に大粒の梅干しを2つほど乗せ、その梅干しをグリグリつぶしてからかっ込むスタイルが大好きなのです。
みなさん、想像してみてください。大粒の梅干しをグリグリとつぶしてかっ込むところを…………。
――はい。ここまでが前置き。さて、梅干しのことを想像したみなさんの口内は今、どうなっていますか? 唾液が出てきていませんか?
不思議ですよね、この現象。なぜ口に入れたわけでもないのに、梅干しを想像しただけで唾液が自然にわいてくるのか?
この現象には、きちんと説明がつくんですよ。
反射反応には「無条件反射」と「条件反射」の2種類があります。
まずは無条件反射とはなんぞや、というところからお話しますね。そもそも、食べ物を口に入れると唾液が分泌されるのは、人間に生まれつき備わっている反射反応なんだそうです。
他にも例えば、ボールが急に目の前に飛んで来たら、無意識のうちに目を閉じますよね? 熱々の湯飲みや鉄板に手が触れたら、無意識のうちに引っ込めてしまいますよね? 歩いていて何かにつまづいて倒れそうになったとき、無意識のうちに手を前に出して受け止めようとしますよね?
こういった反応の数々を、無条件反射って言うんです。無条件反射は脳(大脳)で判断しているわけではありません。自動的に脊髄などの反射中枢を介して、身体に反応が起きるようになっているんだとか。確かに、ボールが飛んできて、目をつむらないようにしようとしても、抗えずに自動的に目を閉じてしまいますよね。
ちなみに、梅干しを口の中に入れて唾液が分泌されるのは、無条件反射になります。
さて、ここまで解説した無条件反射は、人間に生まれつき備わっている反射、つまり先天的に備わっている反射のお話です。
では、もう一方の条件反射とは、どういったものなんでしょうか?
ちょっとややこしいかもしれませんが、梅干しを口に入れて唾液が出るのは無条件反射ですが、梅干しを見たり想像したりすると唾液が出るのは条件反射なんですよ…!
条件反射とは、生まれ持って備わっていたものではなく、生きてきた中で経験から後天的に獲得された反射反応のこと。つまり、梅干しを食べて「酸っぱい!」と感じ、多めに唾液が分泌される――という経験を何度もしてきたことで、梅干しを見たり想像したりするだけで、つまり梅干しのことを考えただけで唾液が出るようになるんだそうです。経験から得る反射反応、それが条件反射というわけですね。
ですから、例えば梅干しを食べたことのない外国人さんたちに梅干しをいくら見せても、唾液が分泌されるということはないんです。
余談ですが、この条件反射を発見したのはイワン・パブロフという旧ソ連の生理学者さん。パブロフは飼い犬にベルの音を聞かせながらエサを与えるという実験を、繰り返していたそうです。すると犬はベルの音を聞いただけで唾液を出すようになったそうで、これがかの有名な実験、「パブロフの犬」なんですね。
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