育児はふたりでするもの。これは男性たちにもかなり浸透してきているし、男性にも自覚がある。ところが家事となると少し様相が変わる。妻が専業主婦だという男性たちに本音を聞いてみたら……。
■プロに頼むことは拒否する妻
タカシさん(39歳)は、父親が経営している会社で専務として働いている。創業から三代目、次期社長は約束されたようなものだ。収入も同世代のサラリーマンの平均と比べると倍近い。
「家も親からもらったものがありますから、家計は比較的ラクだと思います。妻とは学生時代からつきあっていて27歳のときに結婚しました。10歳と8歳になる双子、3人の子がいるから大変だと思いますよ。私もなるべく子どものめんどうをみるようにはしてきたつもりです」
妻は自ら望んで専業主婦となった。タカシさんとしては仕事をしたいなら反対するつもりはなかった。
「なるべく人は自由なほうがいいと思うので。彼女が仕事を続けたいなら、妹が保育士をしているので妹の後輩たちにベビーシッターとして来てもらってもいいと思っていました。でも妻は専業主婦になる、子育ての手伝いはいらないって」
とはいえ、双子が生まれたときはタカシさんも手に余って保育士志望の学生たちにバイトに来てもらった。
「家事だって大変だったら、週に1回くらいプロの頼めばいいと思うんです。ところが妻はそれを拒否する。それなら、もうちょっと家事をやってほしいというのが私の本音です」
■妻を否定しているわけではない
家の中があまりきれいではない。いや、もっと言ってしまえば汚いとタカシさんは言う。
「子どもがいるから片付いていないということではないんです。何日も掃除機をかけていない、せっかく洗濯した衣類が山になって積まれている、お風呂掃除は私がやっていますが、それでも出張などでできないときがある。帰ってくると風呂場がぬるっとする。本音を言えば、もうちょっとやってよ、と思うんですが」
妻に直接、やってよとは言えない。だからプロに頼もうと言うのだが妻は嫌がる。自分が否定されている気がすると泣いたこともある。
「否定する気なんてまったくありません。苦手なら苦手でいいんです。妻は家事をするための人ではないので、私はそんなことは気にしないんですが」
仕事をしていない上に、家事までプロを雇われたら自分の居場所がないと妻は思ってしまうのかもしれない。
「妻はあまり社交的ではないんですよね。人間関係をうまくやっていくのがむずかしいタイプかもしれない。今は子どもたちと触れあうのは楽しいみたいです。料理も上手。ただ片づけが苦手なんでしょう。苦手なことをやれと言っているわけではないのに」
タカシさんは妻のことが理解できていないと頭を抱える。彼女が本当はどうしたいのか、何か望んでいることがあるのか。
「彼女を傷つけたくはないけれど、もうちょっときれいな家に帰りたい。私、贅沢なことを言っているんでしょうか」
彼の話を聞く限り、恵まれた環境にいる妻の心理がわからなくなる。タカシさんがちょっと気の毒になった。