人はふと過去を思い出すことがある。人生の折り返し地点を過ぎた40代後半ならなおさら。人生に「たられば」は無意味だが、それでも考えてしまうこともあるようだ。
■もし元カノと結婚していたら……
学生時代つきあっていた彼女とばったり再会してしまった。勢いでデートに誘い、飲みに行ったがもちろん関係が戻るわけではない。そんな経験をしたアキラさん(49歳)は、それ以降、もし彼女と結婚していたらどうなっていただろうと考えてしまうという。
「現実には結婚して20年たつし、子どもたちも大学生と高校生と成長した。妻とはあまり性格が合わないんですが、それでも家庭をもったことに後悔はしていなかったんです。それなのに元カノに会ってから、もしあちらと結婚していたらもっと幸せな人生だったかもしれないと思ったりして」
元カノとはケンカ別れしたわけではない。大学を卒業して彼女は留学したため、自然消滅してしまったのだ。彼女はバツイチの独身だが、仕事で成功して幸せな生活を送っていると再会時に聞いた。
「心の中で、家庭を壊さずに彼女とつきあえたらどんなに楽しいだろうと思っているんですよね。だから当時のことを振り返ってしまうのかもしれません」
元カノに募る思いの原因を、彼自身わかっているのだ。
■今、幸せかどうかが重要
彼女と会って楽しかったものの、次に誘うのはためらっていたアキラさん。だが、彼女のほうから連絡があった。
「彼女としては友だちとしてつきあっていきたいということだと思います。でも僕は彼女を友だちとしては見られない。あの頃より今のほうがステキだなんですよ。何度か会ったらきっと口説いてしまう。そこから何が始まるのか。怖くて会えない」
今、おそらく自分には何かが欠けているのだとアキラさんは考えている。子どもたちとの関係は悪くないのだが、やはり妻との間に不満と不足があるのだ、と。
「妻は僕を男として見ていません。家庭内でなんとなく居場所がない。妻からすると毎月、きちんと収入があればそれでいいんでしょう。先日、結婚記念日にふたりで食事に行かないかと誘ったんですが、『いいわよ。そのお金を現金でもらったほうがうれしい』と言われました。傷つきますよね、こういうのって」
夫というものは案外、傷つきやすい。特に自分の存在価値を否定されたときは、過去にまでさかのぼってせつなくなるようだ。
「自分の人生、何だったんだろうなと思いますね。この年になったから、もうそろそろ自由になりたい気もするし、まだまだ子どもたちのためにがんばらなければいけないとも思うし。アラフィフにして惑っている自分が情けないです」
人はいくつになっても惑うものかもしれない。ここからどうするのか。まだ後半生は長い。