「今月もリセットかぁ。タイミング、バッチリだったはずなのに…」
会社のトイレで泣きそうになりながらしゃがみこむM子は、“妊活の壁”と呼ばれる35歳。結婚以来2年間、妊活アプリを活用しながら自己流でタイミング法にトライするも、なかなか陽性ラインを見ることができずにいた。
一般的には、避妊せずに性交しているにもかかわらず1年経っても妊娠しなければ不妊症と定義されているので、M子も立派な不妊症の一人。生理痛は重めではあるものの生理周期は10代の頃から毎月きっちり28日で、なまじっか見た目の若さに自信があるため「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまっている節があるのも事実だろう。
“自己流タイミング”を続けて年齢ばかり重ねてしまい、やっと不妊外来を訪れた時には加齢によってさらに妊娠しにくい体になっていた……。そんな不妊アラフォーが激増中と言われる今、妊活アプリだけに頼る弊害とは?
■便利な妊活アプリ、本当に排卵日が分かるの?
妊活アプリの多くに備わっているのは、生理日と排卵日を管理する機能。生理日を記録することで排卵日を割り出し、アプリによってはアラートで通知してくれる機能も。基礎体温を記録すると、より正確な排卵日を把握することができるため、無料という手軽さも手伝って妊活初心者に人気のツールです。
「女性には生まれながらにして、子どもを産むための機能が備わっています。その活動には“妊娠しやすい期間”と“妊娠しづらい期間”があり、それを教えてくれるのが生理日を予測してくれるアプリや排卵日予測検査薬です。排卵日予測検査薬を使えば、最も妊娠しやすい時期の排卵日を予測することができますよ」
と、医師の山本佳奈さん。
アプリがお知らせしてくれる排卵日にタイミングをあわせれば、妊娠できるはずですよね?
「女性の身体はデリケート。ストレスや普段の食生活、運動不足など少しのことでホルモンバランスに影響をきたします。そのため、きっちりと基礎体温をつけていても、排卵の時期がずれることがあります。
アプリでは今排卵しているかどうかをはっきりと知ることはできないため、どうしても正確さに欠けてしまうことも‥」
排卵日がズレるとはショック! 実はちゃんと排卵してなかった……なんてこともあるのでしょうか?
「無排卵でも月経自体は起こるので、無排卵月経に気づかないケースは珍しくありません。ですから、生理が来ているから大丈夫! と過信してしまうのは危険です」
なるほど、自己流タイミングはほどほどに、排卵日をアプリで自己判断するのは長くても1年位までと心に決めて、産婦人科などで排卵日を特定してもらうことが妊娠への近道と言えそうですね。
■避妊用のピルで不妊症を治療⁉
M子のように、生理痛の重さは生理のお悩みあるあるだから仕方ない……と重要視することなく放置している女性も少なくありません。実はこれも隠れ不妊体質の原因になる可能性があると、山本先生は言います。
「通常は排卵によって子宮の内膜は次第に厚くなり、妊娠しなければ、はがれ落ちて生理が来ます。一方、卵巣の中など子宮以外に内膜が出来て増殖するのが子宮内膜症。受精や排卵を妨げるなど、不妊につながると考えられています。その子宮内膜症の症状としてもっとも多いのは、月経時に起こる下腹部の痛みです」
子宮内膜症の症状に悩む女性は増え続け、今や10人に1人とも! 重い月経痛と不妊に悩んでいる人は、疑ってみてもいいかもしれません。もし実際にそう診断されても、治療法はあるのでしょうか?
「子宮内膜は女性ホルモンによって増殖する性質があるため、低用量ピルを主体としたホルモン療法でホルモンをうまくコントロールすることが大切です。
ピルは避妊のための薬でもあり、子宮内膜症や月経困難症の治療薬としても使用されているんですよ」
ピル=避妊だと思っていたら、子宮内膜症や月経困難症の治療薬にも使われているなんて驚き! 治療法ひとつとっても、本気の妊活にはお医者さまのサポートが欠かせません。排卵障害に子宮内膜症など、実は気づかない内に“隠れ不妊体質に陥っていることも。妊活は時間との勝負だからこそ、気になる症状があれば、早めに専門医へ相談してみてくださいね。