昨今、中条きよしがコメンテーターとして、めきめきと頭角を現しつつあるようだ。ネット版の『スポーツ報知』によると、
俳優の中条きよし(73)が3月7日放送の『バイキング』(フジテレビ系)に生出演(※ゴメス註:もはや肩書きは「歌手」じゃないんですねw)。昨年10月に元貴乃花親方の花田光司氏(46)と離婚した元アナウンサーの河野景子さん(54)が上梓した著書『こころの真実 23年間のすべて』(世界文化社)で離婚理由などを赤裸々に書いたことを猛批判した。
……らしい。中条の言いぶんは以下のとおりである。
「ふざけているよね。どこで離婚しようが何しようが。どこの家庭もみんなそうなんだから。男と女は、結婚しようが恋愛しようが同棲しようが好きなところがあって結婚したり同棲するわけだから、別れたら別れたで、生意気言うわけじゃないけど、相手だって再婚するわけだし結婚するわけだし、家庭もあることになるわけだし、こんなことを後々、本にして書く必要性がない。なんで書くんだって」
(スタジオでは、大相撲という特殊な世界に嫁いだことへの苦労などについて議論されたが)「他の横綱の奥さんもいるし、他の関取の奥さんもいっぱいいるわけですよ。その人たちがこれを全部やりだしたら大変でしょ。この人たちの世界だけじゃなくて大変な世界ってもっとあるわけでしょ(後略)。」
手前味噌みたいな話なってしまい恐縮ではあるのだけれど、私はもう2年も前に、ここcitrusで中条きよしの魅力について、大いに持論を展開した実績がある。そんな中条きよしが今や真っ昼間の地上波全国ネットの人気バラエティ番組に、コメンテーターとして名を連ねているとは、私の先見の明もなかなかのものはないか、とついつい自画自賛したくなる。
前回のコラムは、「禁煙したら声も出るようになって、人前で気持ちよく歌えるようになった」と語る中条が、『煙が目にしみる』という新曲をリリースし、しれっと「たばこって色気があるというか、ムードがあるよね。たばこはいいよ」と愛煙家側のフォローに回った、その「自分の事は棚に上げて」っぷりを鋭く指摘した内容であったわけだが、今回の元貴乃花親方夫人(河野景子)の暴露本に対する中条の弁は、論旨に支離滅裂な部分が見えない、きちんとスジが一本通っている正論……なのではなかろーか。私も「ふざけている」と、本案件に関しては、全面的に中条の主張を支持したい。世の中の酸いも甘いも噛みしめてきた(ような)胡散臭い面構えやファッションセンスを盾とする凄まじいまでの突破力だと感動すらおぼえてしまう。「生意気」なんてちっとも言ってませんから!
どんなに内心、腹に据えかねる事情があったとしても、それをなんらかのメディアを使って一時期は夫婦として寄り添っていた相手を批判するのって、すごく格好悪いと思う。たまたま発信力のあるヒトが、編集者の知恵を借り徹底した理論武装を行った上での“出版”ゆえ、一見“読み物”としての体裁は保ってはいるものの、やっていることは破綻したカップルのどちらかがツイッターあたりで、悪口三昧をつぶやきまくり、その鬱憤を晴らしているのと同じである。
別れた相手への不満は墓場まで持っていく覚悟で、沈黙を貫くのが「人としての美学」ではないのか? そんな美学に反してまで小金を稼ぎたいか? 「相撲界は独特の世界だから」って……いやいや、中条センセイの言葉を借りれば「この人たちの世界だけじゃなくて大変な世界ってもっとあるわけ」だし、そこに“例外”はあってはならないのだ。
自分だけを悲劇のヒロイン(ヒーロー)に仕立て上げる冗舌なナルシスト──私がもっとも触れたくない人種だと、とりあえずは言っておこう。