人間の喜怒哀楽、心に響くコンテンツをお届けすることを旨とするウェブメディア『grape(グレイプ)』によると、1月23日に放送されたバラエティ番組『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、有吉弘行(44)が発言した「活字と漫画」についての持論が注目を集めている……らしい。
発端となったのは、視聴者から投稿された次のような質問であった……という。
ベストセラーの小説やビジネス書、歴史本。
投稿者は漫画で読めるバージョンがあると、ついそちらを選んでしまうそうです。しかし、本好きの友人に「いや、それは活字で読まなきゃ失礼でしょ」と強く言われ、ショックを受けたそう。
お二人は投稿者の気持ち、分かりますか?
この問いかけにあたって、有吉が答えた「視聴者の注目を集めている持論」とは以下のとおりである。
『漫画で覚えるなんとか』とかあれば、大体それ読んで。それでも興味あったら活字でグッと行くとかさ。
入り口としては、俺は漫画いいかなと思っているけどな。
(中略)俺らみたいなバカはそちらのほうが簡単だから、それで入らせてくださいよ。
ほんでよかったら活字買いますから。
(中略)知識の泉ですから、本を読まれているかた、すごい素敵だと思いますよ、僕は。
僕だって読みますし。
ただ、いろんなスタイルがあっていいでしょ。
本案件に対する結論は、最後の一言「いろんなスタイルがあっていいでしょ」──それに尽きる。「それに尽きる」からこれ以上、有吉が持論にもって下した“判決”に関してとやかく言う気はない。
漫画には「活字で書けば下手すりゃ原稿用紙数枚を要する風景やシチュエーションの描写が、漫画だと一コマで説明しきれることもある」という絶対的なメリットがある。しかし、このメリットは表裏一体でもあり、「風景やシチュエーションの描写が“断定”されてしまうぶん、読者の想像力に制限がかかってしまう」というデメリットにもなりうる。そもそも、“元ネタ”の活字を漫画化する行程には、おのずと“漫画家”という第三者が介入せざるを得ないため、その二作には大なり小なり“イメージのズレ”が、必ず生じてくる。したがって、これらは極論「まったくの別物」と解釈したほうが無難なわけで、「まったくの別物」であるなら、どちらを選ぶかは読者の好み・嗜好でしかないのである。
ちなみに、私は自分が面白いと思った小説が、漫画化や映画化・ドラマ化された作品を読んだり観たりする、今回の議題のいわば逆、「活字から入るケース」がけっこう多かったりする。自分が小説を読んで頭に描いていたイメージの“答え合わせ”……みたいな感覚なんだろうか。そんでもって、その“答え”が自分のイメージと合致していたらうれしい、合致していなくても「ああ、なるほど…こういう解釈もあるのか」と、もう一度その小説をじっくりと読み返す。ただ、小説よりも漫画やド映画・ドラマのほうが面白かった……というケースは正直、ほとんどない。『八甲田山』は小説と同じくらい映画も面白かったけど。あと『バトルロワイヤル』は小説より映画のほうが面白かったけど……。
漫画(や映画・ドラマ)より活字のほうが格上って話じゃなく、やはり“元ネタ”、一番最初に発表された“作品”が一番面白いってことなのだ。だって、大ヒットした漫画や映画、ドラマを小説化したモノって、たいがいがつまらなかったりするじゃないですか。もっとも適した表現手段を用いて完成させた“作品”を、無理やり別の表現手段でリプレイスしちゃってるんですから……。