がんばるしかない……
40代バツイチシングルマザーたちの中には、苦しい生活を強いられている人も少なくない。それでも仕事を掛け持ちしながらがんばっている女性たちの声を聞いてみた。
■経済的には大変だけど精神的にはラクになった
シングルマザーとなって4年たつシオリさん(43歳)。当時9歳だった娘は13歳、中学生になった。
「離婚前にさんざん親の諍いを見せてしまったので、娘にはかわいそうなことをしたと思っています。ただ、離婚してからは私が笑うことが多くなったせいか、娘も落ち着きを取り戻しました。娘が中学に上がったとき、そのことを心から謝ったんです。そうしたら『ママも大変だったなと今は思ってるよ』と言ってくれて。泣けました」
当時、シオリさんは週に3回くらいパートに出ているだけだったので、離婚後はとにかく経済的に大変だった。パートを週6日に増やし、週末は近所のスナックでも働いた。この4年間、自分の洋服などは一着も買っていない。
「離婚は別に恥じゃない。大変だからいらない洋服があったらちょうだいって明るく言っていたんですよ。そうしたらスナックのお客さんの奥さんが持ってきてくれたり。娘は近所で夕飯を食べさせてもらうこともありました。人情深い下町だから成り立ったことかもしれません」
シオリさんが自分からオープンにしたからこそ、助けてくれる人たちがいたのだろう。
「この春からパート先が正社員にしてくれることになったんです。福利厚生の面から言っても、やはり正社員になれるのはありがたい。副業OKなので、ときどきスナックは手伝いに行こうと思っています」
貯金はない。だから自分が倒れたらそこで終わり。そんな危機感をもって過ごしてきた4年間だが、精神的にはあまり追いつめられていなかったという。
「抑圧的な夫から解放されて、自分を取り戻せたのがいちばん大きかった。元夫は誰も信じない、近所づきあいなんてするなというタイプだったから、私はいつも妙な緊張感の中で生きていたんです。でも今は貧乏だけど楽しい。娘が成人するまでがんばっていきます」
■離婚後、夫と仲良しに
夫婦は、夫婦であるがゆえに諍いを起こす。だから別れて「他人」になると、お互いへの見方も変わっていく。
「不思議なことに、別れた夫と仲良しになりました」
そう言うのは、ヒカリさん(46歳)だ。16歳、13歳の子をもつ彼女が、夫と離婚したのは3年前。子どもと父親の縁は切れないからと、行き来は子どもたちの自由に任せた。
「離れてから、夫はようやく父親としての自覚に目覚めたようで、学費や塾代など経済的なことも心配してくれます。結婚しているときは、この人、本当に子どもたちをかわいいと思っているのかしらと感じるような言動も多かったんですが」
夫の気遣いをうれしく思ったヒカリさんは、ときどき家族4人で食事をすることを提案。夫は「それならヒカリの料理がいい」と言った。
「外で食事をと思っていたんですが、夫曰く、私の料理が好きだそうです。それも結婚しているときはまったく言ったことがなかった。別れたからこそ伝えられることもあるのかもしれません」
月に一度は4人で食卓を囲む。夫は子どもたちと遅くまで話し込んでいるそうだ。
「もともと共働きだし、教育関係は夫が支払ってくれるので経済的にはラクではないけど困窮しているほどでもない。ただ、離婚したことで平和が訪れたのがありがたいですね。夫は先日、しみじみと『これからもたまに家族でいる時間がほしいんだ』と言っていました。一緒にいるときは私も夫がいて当たり前だとどこかで思っていた。お互い、相手のありがたみを忘れていたんですね」
とはいえ、よりを戻すつもりはない。夫とは今のまま、適度な距離でいい関係を続けていきたいそうだ。