地下鉄直結? 路面電車やLRT? いやそんな大層なものじゃなくていいっすから、山手線の内側でバスを10分おきに走らせてくれませんか。バスがダメなら、7人乗りミニバンで乗り合いバスでもいい。10分おきに、放射状にのびる鉄道を、縦に結ぶように……。
気温まさかの40度超を記録した先週、品川駅から外苑前を経て、半蔵門へむかう途中でへこたれながら妄想した。その内容が、冒頭の架空モビリティ。
いま都心の地下鉄路線は、皇居を中心に放射状にのびている。とくにきれいな放射を描くのは、山手線エリアを縦に半分で割って、左側。北から池袋、高田馬場、新宿、原宿、渋谷、恵比寿、目黒、五反田と見ていくと、そこを地下鉄や私鉄の路線が東西方向から接している。
灼熱とアスファルトの容赦ない照り返しにやられながら、品川駅を背にして、高輪方面をみる。立ちはだかるホテル群が、陽炎でゆらゆら。「ここに地下鉄を通すとは……」「ってか、南北を貫くバスも走ってないのか」。この品川駅と、高台にある白金高輪駅を結ぶ地下鉄新線構想が浮上しているが、現実味がない。その構想は後述するとして、もう少しリアルな妄想を。
■競技場を結ぶ急行タイプを
その前に、目の前の現実を、酷暑をこらえて見てみる。品川駅の山側(高輪側)を横(東西)に走る、三田線・南北線、日比谷線、千代田線、銀座線・半蔵門線、大江戸線などを“串刺し”にするような「山手線の内側を行く縦のライン」に路線バスが走ってない。都営バスが部分的に走っているけど、品川から千駄ヶ谷あたりまで、山手線と大江戸線の間をドカーンと貫くバスは、走ってない。
国が1600億円もの予算を割いて、品川と白金高輪を結ぶ地下鉄を走らせる構想があるぐらいならば、品川〜白金高輪〜広尾〜外苑前〜国立競技場〜千駄ヶ谷をドーンと縦(南北)に結ぶ新たな輸送ルートもあっていいじゃないか。
バスの定時性や、ドライバーの高齢化などが問われるいま、じわりと押し寄せる Uber との協業なども図りながら、バスやミニバンをなんとかして走らせられないか。10分おきで、路線バスと同じく距離別定額。さらに、放射状にのびる路線の駅だけに停車する急行タイプで、横の鉄道路線を結ぶ。
東京オリンピック・パラリンピック開催にあわせて、海側の会場のひとつ、大井ふ頭中央海浜公園(大井ホッケー競技場)を発着地とし、前出の駅を結ぶというのもありか。ただ、品川駅から北へまっすぐにのびる道がない。高輪台に古くからある住宅地などで、道の新設や拡幅は難しいかも。さらに、仮に10分ヘッドで走ってくれたとしても、住宅街や幅の狭い道を行くから、EVやHVといった環境対応車が要るだろう。
■環七通りや環八通りにも波及を妄想
2016年、国は品川〜白金高輪間の地下鉄構想について、その意義や課題を明らかにした。小難しくて長い正式名は「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」による「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」。こレポートのなかには、プロジェクト番号8「都心部・品川地下鉄構想の新設」について、こんな検討(試算)結果が記してある。
(プロジェクト概要)都心部・品川地下鉄構想の新設(白金高輪~品川)2.0km。総事業費1600(億円)。輸送密度75.8~73.3(千人/日)。
(意義)六本木等の都心部とリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅や国際競争力強化の拠点である同駅周辺地区とのアクセス利便性の向上。
(課題)検討熟度が低く構想段階であるため、関係地方公共団体等において、事業主体を含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待。
―――冒頭の1600億円という数字は、ここから借りた数字。輸送密度が1日7万人といわれても、あまりピンとこないけど、感覚的には「やっぱ実現しそうにない」って感じ?
■メトロセブンやエイトライナーも鉄道にこだわらなくていい!?
2027年にはリニア中央新幹線も走り出す(!?)から、放射状(横)にのびる地下鉄路線と、品川エリアを南北(縦)に結ぶラインは「いまっぽく」つくってほしい。
暫定的には、既存の都営バス路線 品93系統と黒77系統をつないだルートで、急行運転するのもあり。ひょっとしたら近い将来、完全自動運転なんて技術も入っちゃうかも!?
事業スキームや設備・人材確保、ましては誰が主体となってやるかなど、難しいことばかりかもしれない。でも、このラインが実現し収益化できれば、品川モデルとして認められる。そうなれば、千駄ヶ谷より北側から、既存の早81のルートをなぞるように、四谷三丁目(丸ノ内線)、曙橋(新宿線)と延伸するか。
さらに、同様の環状ルートで、環七通り(メトロセブン構想)や環八通り(エイトライナー構想)に沿って鉄道を敷く構想も、新たな方式によるモビリティ採用へと波及する……なんて、そんな調子よくうまくいくはずないか。