番組に届いた1枚の自撮り写真。そこに写っていたのはガタイのいい男性の皮膚がひどく赤くただれているものだった。その原因はチャドクガ。
Yさん・25歳は、陸上自衛隊で交通小隊に所属し、男性隊員寮で約40人と共同生活をしていたという。
2年前の5月。Yさんはサーフィンにハマり休みの週末は毎週海へ出かけており、とある日ウェットスーツを持っていない後輩に自分の冬用のウェットスーツを貸してサーフィンを楽しんでいたという。そしていつものように浜辺の近くの芝生の上で着替えて寮へ帰宅。
すると翌朝、お腹の異常なかゆさで目が覚めたYさんには謎の発疹が。数時間すると発疹が体全体に広がったという。Yさんは痒みが出ると、地元で暮らす彼女にその写真を送信。「なかなかなくない、こんなん!」とふざけて彼女に送っていたが、次の日はさらに痒みが広がり、ついに病院に。何か思い当たることはないかと聞かれ、ウェットスーツのことを思い出すYさん。
実は寮に戻り風呂場でウェットスーツを洗おうとした時、 黄色と黒色の毛虫がウェットスーツについているのを見たという。そのときは大して気にも留めなかったが、そのことを医師に伝えると「原因はチャドクガです」と診断された。
チャドクガとは本州から九州まで日本に広く生息する毒成分を持つ蛾の一種で、山や森林などよりも都市部の公園などにいるケースが多く、幼虫や成虫、さらに卵にも毒針毛という毛を持っており、長さ0.1ミリほどの肉眼では見えにくい毛が幼虫の場合50万本。そして人間の皮膚に刺さるとアレルギー反応を起こし、腫れや激しいかゆみを引き起こすという。
チャドクガが卵を産むのは、庭木や街路樹としてよく植えられているツバキやサザンカなどツバキ科の植物の葉で、渋谷区や目黒区のHPでも注意喚起されている都心でも遭遇する危険生物なのだ。
寮の風呂場で遭遇した毛虫がチャドクガの幼虫だと思われたが、彼は直接毛虫には触れていないという。いったいどこでチャドクガに触れたのか?
実はチャドクガの毛は、体から簡単に抜けて衣服などに付着するため、おそらく、彼はウェットスーツを運んだり洗ったりしている時に、体に毛が付着したと推測された。このチャドクガは毛が簡単に抜けるため、生息する樹木の近くを通るだけで気づかないうちに衣服などに毛が付着し、炎症を起こしてしまうことがあるという。
兵庫医科大学病院皮膚科学のN教授によると「7割から8割の患者さんは、毛虫を見た覚えも触った覚えもないとおっしゃいますね。上着を脱いで植え込みのところにちょっと置いてました、実はその植え込みがサザンカの植え込みだったりして、いつの間にかひどい皮膚炎が起こったという症例がいくつかありましたね」 という。
医師は、Yさんに痒み止めの薬と、炎症を抑える薬に加え、粘着テープを全身に貼り付けて使うように指示。これは、体についていてまだ刺さっていない針を取るための方法だという。Yさんはどこに針が残っているのかわからないので 粘着テープを貼り付け、後輩に手伝ってもらって炎症を抑える薬を全身に塗るも、全身の痒みは止まらない。
かけばかくほど症状が全身に広がってしまったYさんだが、まだ刺さっていなかった毒針毛まで刺さり炎症が広がっていってしまうため、かくのはチャドクガに刺された時にやってはいけないことだった。
なんとかかかないようしたいと思い、Yさんは後輩に頼み、包帯でグルグル巻きにしてもらう。こうして2週間かゆみと闘い続けようやく発疹が消え、仕事にも復帰。
しかし半年後の12月、またしても発疹が出てしまう。実はチャドクガは約1年もの間、皮膚に炎症を起こす物質が毛に残り続ける。ウェットスーツを捨てるように医師に言われていたが、捨てるなんてもったいない!と医師の忠告を聞かず、ウェットスーツを捨てなかったという。
この時の油断によって、またもや症状が。地獄の2週間が続いたという。当時を振り返りYさんは「2回(症状が)出た後はもう、すぐに(ウェットスーツ)捨てました」と振り返る。
もしチャドクガの毒針毛がついたと思ったら、すぐに粘着テープで除去し、よく泡立てた石鹸で洗ってから水で流すことが大切だ。チャドクガを発見したら、絶対に素手では触らず、長袖・長ズボン・ゴム手袋・ゴーグルなどで肌の露出をおさえ、葉や枝ごと処分するのが良いという。(2022年6月28日OA)
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