普段から自家製のヨーグルトを作ったり、オーガニックな食材にこだわった料理教室に通ったりするのが大好きな栃木県のAさん。一昨年の4月、Aさんは無農薬の玄米を購入し、発芽玄米を作ろうとしていた。
そもそも玄米とは稲の実から、もみ殻だけを取り除いたもの。発芽玄米は、玄米を少しだけ発芽させたもので栄養素がさらにアップすると言われており、ストレス緩和、睡眠の質を高めるギャバと呼ばれるアミノ酸は白米の10倍にもなるという。
発芽玄米は一般に売られているのだが、Aさんは友人から「玄米があれば自宅で簡単に作れるよ!」と聞き、自分で作りたくなったという。
玄米に水をつけ、水を交換しながら、2-3日で芽がでると聞き、実践。友人から聞いただけで自分では特に調べず、雰囲気で作っていたという。
2-3日水につけた時点ですでに玄米は発芽していたが、Aさんはもっと芽が出てから食べるものだと思い、さらに水につけることに。そして1週間後、玄米からしっかりとした芽が。さっそく、白米と同じ要領で炊くと、炊き上がりはポップコーンのような香ばしいニオイが。本当に、柔らかくて、美味しいご飯だったという。
「これで、睡眠が良くなって、ストレスもなくなって、便秘も解消されたらいいとこだらけね!」と喜ぶAさんだったが、数時間後お腹の痛みが。「あのご飯は変な味も匂いもしなかったから違うもんな」と玄米が原因とも思わず、昼食にも自作の発芽玄米を完食。
すると下痢は激しくなり、間隔も短くなっていく。さらに深夜、今までとは比べものにならないほどお腹に激痛が起きたと思うと、なんと血便に。病院に行くと、感染性による胃腸炎だという。
一体、なぜ彼女は発芽玄米でこんな症状を引き起こしたのか?
それは、しっかりと芽が出るまで4月の室温に長時間放置したことだった。
水に浸した玄米を1週間放置したのち、その中の菌の数を調べてみると、通常1グラムあたり100万個菌が存在すると食あたりを引き起こすと言われているところ、水を浸した玄米からは1グラムあたりなんと450万個もの菌が検出された。かつ、加熱しても死なないセレウス菌が増殖したと考えられ、セレウス菌は増殖過程で芽胞と呼ばれる休眠状態になり、100℃で30分加熱しても死滅することがないという。
そして芽胞状態のセレウス菌は体内に入ると、休眠から目覚め胃や腸で増殖。下痢や嘔吐などを引き起こし、重症化すると腸が激しい炎症を起こし出血。激しい腹痛や血便になる。彼女は、セレウス菌が大量に付着した発芽玄米を食べたことで、食中毒を引きおこしたと考えられた。
通常、発芽玄米の作り方は水に浸した玄米を、夏は1-2日、冬であれば2-3日置いておくとぷくぷくと泡が出てくる。これが、発芽が進んでいる証拠。そして胚芽部分が膨らみ、少し芽が出たら完成。夏場などの暑い時期は食中毒にならないように、冷蔵庫に入れるなどしたほうがいいとされている。玄米を発芽させる時、菌の繁殖には注意を! (2022年5月24日OA)
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