2016年4月14日・16日と、2度にわたり最大震度7を記録した「熊本地震」からまもなく3年。現在に至るまで復興に向けた動きが活発におこなわれており、徐々に元の姿を取り戻している。
こうした中、医療・看護・介護等の施設をネットワークで結びサービスに活かす「くまもとメディカルネットワーク」の事業主体である公益社団法人熊本県医師会は、10~70代の熊本県民500名を対象に、2016年に発生した「熊本地震」に関する調査を実施した。
地震発生時は「かかりつけ医院」以外の利用が多い
はじめに、「熊本地震の発生後2週間以内に、ご自身または周囲(家族・友人・知人)で医療機関を利用した人はいましたか?」と聞いたところ、約3人に1人(34%)が「いた」と回答。そのうち、「自分自身が医療機関を利用した」は32%、「家族が医療機関を利用した」は37%との結果に。また自分や家族が震災発生後に利用した医療機関について聞くと、「かかりつけ医療機関以外を受診した」と回答した人が約5人に1人(19%)に。その理由としては、「かかりつけの医療機関自体が被災していて医療サービスが受けられない状況だった」が57%で最多となった。
震災発生により、かかりつけ医療機関以外にかからざるを得なかった経験を持つ人は少なくないようだ。
震災後の「体調不良」率は約6割
さらに、震災時はケガなどだけではなく「体調不良」を感じた人の割合も58%と約6割に。多くの人が震災の影響で体に不調を感じた経験を持っていることがわかった。具体的な症状としては「不眠」(65%)、「地震酔い」(62%)がツートップとなり、以下、「頭痛」(19%)、「食欲不振」(19%)と続いた。また、車中泊や避難所での生活の影響などで「エコノミー症候群」を発症した人も6%にのぼっている。しかし一方で、体調不良を感じた人のうち、約9割(88%)は「医療機関に行かなかった」と回答。その理由としては、「自分よりも優先すべき重篤な患者がいると思った」(45歳・男性)、「出先で地震に見舞われる不安や恐怖があった」(52歳・女性)、「電気が復旧せず、どの医療機関が使えるかの情報が届かなかった」(18歳・女性)などの声があがっている。
各医療機関が連携する「くまもとメディカルネットワーク」を強化
熊本県では、震災を機に、これまで以上に「災害医療」が進化している。そのひとつが、医療・看護・介護等の施設をネットワークで結びサービスに活かすシステム「くまもとメディカルネットワーク」の強化となっている。
「くまもとメディカルネットワーク」とは、地域包括ケアシステム実現のために病院・診療所・歯科診療所・介護施設・訪問看護ステーション・薬局などの利用施設をネットワークで結び、患者である参加者の診療・調剤・介護に必要な情報を共有することで、医療・介護サービスに活かすシステムだ。熊本在住の方であれば、加入施設に「同意書」を提出するだけで参加が可能。申し込みの費用も無料だ。(診療費・調剤費・介護費等の自己負担分は通常と同様)
有事の前に「くまもとメディカルネットワーク」に加入することで、災害時や事故、救急の時でも、より適切かつスピーディーな処置を受けることが可能に。「くまもとメディカルネットワーク」は、震災以降、加入施設をさらに拡充するなど、県民の安心につながる取り組みを進めているようだ。
【参考】
※「くまもとメディカルネットワーク」ホームページ
http://kmn.kumamoto.med.or.jp/