
夫の話が長い
「うちの夫、話が長くてつまらないんですよ」苦笑しながらそう言うのは、ユカリさん(50歳)だ。夫婦仲が悪いわけではないが、最近特に夫の話の長さにうんざりするようになった。
「下の子が中学生になった6年ほど前から私がパートに出るようになって、最近、パートの中でリーダーを任されたんです。仕事は大変だけど面白い。帰宅してからも仕事のことを考える時間が増えました。だからよけい、夫のおしゃべりにイラッとするのかもしれません」
何も話してくれない夫よりはいいと分かっているが、時と場合によっては夫の長話につきあいきれないこともある。
結論までが長すぎてイライラ
「夫は、何か1つの話をするときに、そのずっと前から話し始める。例えば昼休みに起こったできごとを言うなら、それだけ話せばいいのに、朝からのことを延々話す。結局、昼休みに起こったことは、朝とは何の関係もないんです。だから夫が話し始めると、『で、結論は?』と言うようになった」それが何度か続くと、夫は「結論を急ぐのはやめてくれる? 仕事じゃないんだから」といじけることが増えた。
「でも、話って起承転結というものがあるでしょ。あなたの話は、ずっと起が続いて、いきなり結がくるから、それなら最初に結を言ってもいいんじゃないかと思うと言うと、『すごい嫌みな言い方』とさらにいじけてしまう。でも夫の長話につきあえないときもある。面白ければいいけど、つまらないし……」
とはいえ、つまらないとも言えず、ユカリさんはときに我慢し、ときにイラッとする日々を送っているのだという。
夫がオバサン化してきた
「最近、夫がやたらとしょうもない近所のうわさ話を仕入れてくるようになったんですよ。二昔前くらいのオバサンみたい」シノブさん(55歳)は、そう言って笑った。3歳年上の夫とは結婚して25年がたつ。娘は大学を卒業して就職、自宅から職場に通っている。大学生の息子も一緒に住んではいるが、子どもたちはあまり家で夕飯をとることもない。
「夫は時々残業があるくらいで、比較的帰りが早いんです。帰ってくるなり、『○○さんの家の奥さんに聞いたんだけどさ』とうわさ話が始まる。私はもともとうわさ話が好きではないし、近所の人と立ち話もほとんどしない。でも最近の夫は、そういう話が面白いらしくて、生き生きと話してるんですよね。なんだか、これでいいのかと思ってしまうんですよ」
別に高尚な話をしたいわけではないのだが、「ねえねえ、聞いて聞いて」と言わんばかりの夫の態度に、「昔の近所のおばちゃんたちを思い出す」とシノブさんはため息をつく。
そういう話を避けるために、彼女は時々図書館から借りてきた本を差し出して、「これ、面白いよ。読んでみれば」と勧めることがあるのだが、夫は手には取っても読み進めることはない。
「子どもたちがいなかったり遅かったりするから、夫と二人だと夜が長いんですよ。私がリビングで昔の映画などを観ていると、夫は横にやってくるんだけど、『ねえねえ、聞いて』が始まって映画に集中できない。私はこれを観ているんだから、静かにしてよと言うと、聞いてくれたっていいじゃないかと拗ねたりもする。面倒です」
妻と会話することが目的?
なぜ夫がそんなにうわさ好きになってしまったのか、シノブさんには見当がつかない。気付いたら夫が「昔の近所のおばちゃん状態」になっていたのだ。1度、どうしてそういううわさが面白いのと聞いたことがある。「夫は、ちまたのうわさ話にこそ人間の営みが隠れているんだよと妙に文学的な言い回しをしていました。でもそうじゃなくて下世話な話って考えなくてすむからではないかと私は思っています。自分の頭で考えるのが面倒だから、多少なりとも刺激のあるうわさ話を横流しすることで自己満足を得ているのではないかと」
妻にそこまで分析されているとは、夫は知らないのだろう。妻が喜びもしないうわさ話を日々、仕入れているのが気の毒になる。
「建設的な話がしたいと言ったこともありますが、建設的って何だよとふてくされていました。もしかしたら夫は、『妻と会話をしている』ということだけが目的なのかもしれません。私は会話が成立しているとは思ってないけど、夫にとっては会話があるからうちの夫婦は大丈夫だと確信したいのかなと思ったりもします」
妻が乗ってこないから、よけい焦ってつまらないうわさ話を重ねてしまう。そんな気持ちでいるとしたら、少し夫が気の毒ではあるけれど、とシノブさんは苦笑するしかないという表情になった。
