録音そのものではなく、「切り取られた言葉」が人間関係を壊していく怖さについて解説します。
夫婦げんかの怒鳴り声だけを録音された

長年連れ添った夫婦の場合、どこをつつけば相手が怒るのかが分かっています。今回の事例では、夫が妻から「あなたは何もできない」「子どもにも嫌われている」と言われ続けていました。最初は黙って耐えていたものの我慢しきれず声を荒げると、その瞬間、妻がスマホを向けました。
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「また撮っているのか」
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と、動揺して怒る声までが録音され、いつしか夫婦の会話は話し合いではなく夫を怒らせる場になっていきました。
当然ながら、本当に暴言や暴力に苦しむ人が自分を守るために記録を残すことは大切なこと。ただ、この事例では、挑発する前の流れが抜け落ち、夫の感情が爆発した部分だけが残されていました。
怒鳴ってしまったご主人にも反省すべき点はありますが、その一部だけで人間性の全てを決めつけることはできません。
親族と子どもに先に届いた「録音」
そして妻は、その録音を親族や子どもたちに聞かせ、「私はずっとモラハラを受けている」と言いました。夫が知らないところで周囲の見方は変わり、気付いたときには親族からの視線は冷たく、子どもたちもよそよそしい態度をとるようになっていたそうです。誰も事情を正面から聞いてくれず、夫は完全な「悪者」になっていました。熟年離婚では、夫婦関係が終わること以上に、父親としての立場や親族との関係、人としての信用を失うことが深い傷になる場合があります。妻の側にも長年言えなかった不満や苦しみがあった可能性はありますが、相手を怒らせて一部だけを見せ、周囲の印象を固めていくやり方は、問題解決から遠ざかってしまいます。
挑発に乗らず、その場を離れて自分の記録を残す
感情的になったときほど、その場で勝とうとしないことが大切です。挑発されて言い返したくなるのは自然なことですが、大声を出せばその部分だけが残り、後から大きな意味を持ちます。「今は冷静に話せないから時間を置こう」と物理的に距離を取り、怒鳴り続けたり相手を押しのけたりしないでください。あわせて、「いつ・どんなやり取りがあり、何を言われてどう対応したか」を日付とともにノートなどに記録しておきましょう。必要であれば、弁護士やカウンセラーなど第三者に早めに相談することも重要です。
実際にこのケースでは、調停で妻側の言い分や録音がそのまま信じられ、モラハラが認められる形で調停離婚に至り、夫が一定の慰謝料を支払う結果となりました。夫婦の問題は、切り取られた一言ではなく、全体の流れの中で見ていく必要があります。感情の瞬間だけで人生を決めないよう、早い段階で距離を取り、記録を残し、専門家の力を借りてほしいと筆者は考えています。
