2024年も残すところ1か月を切り、ぐっと年末感が増していく時期ですよね。みなさんは今年、どんな一年だったでしょうか。
生活満足度の向上を目指した研究・発信を行う「くふう生活者総合研究所」(以下「くふう総研」)は、2024年生活者に影響を与えた出来事をまとめた「くふう総研 くらしのキーワード2024」を発表しました。
圧倒的1位は「物価高が止まらない」、「令和の米騒動」も2024年の象徴に
くふう総研では「2024年を象徴するキーワード」として30のキーワードを選出。
チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」及び、家計簿サービス「Zaim」のユーザー8,549名に「生活に影響が大きかった」「印象に残っている」コト・モノを投票してもらい、上位10位までを「くふう総研 くらしのトレンドキーワード2024」として選出しました。結果はこちら!
それぞれのキーワードについて、くふう総研メンバーが2024年を振り返りながら語る座談会を開催!その様子をお届けします。
物価高に米騒動、猛暑のトリプルパンチを耐え抜いた…!
「安いものを求める」行動がピークになった2024年
白井:1位はダントツ「物価高が止まらない」で、6割の人が選びました。去年も物価高の影響は大きかったのですが、2024年も続きましたね。
「くふう家計簿」で行った取材では、食品や日用品の値上がりはもはや抗えないことと受け止めている方が多い印象でした。特売品や見切り品を探すのは当たり前のことで、できる限り安いものを求めることが浸透していますね。
深谷:家計簿アプリ「Zaim」の記録データを見ていると、買い物をくふうしている人が多いです。購入点数を抑える、買い物頻度を減らすなどして、家計に影響が出ないようにしていることがうかがえます。
草深:「比較して安いものを安いところで買いたい」というニーズがここ数年で今年はピークになった感じがします。チラシ情報を掲載している「トクバイ」も、当然価格が安いものへのニーズは高く、今年チラシに掲載されている商品の「価格比較機能」をリリースしました。ユーザーは主婦だけでなく男性も増えてきていて、物価高はすべての生活者にとっての課題となっています。
物価高で苦戦のコンビニは「値下げ」「増量」で対抗
竹下:節約志向を強める生活者に向けた「コンビニの値下げ・増量」(18位)も注目されました。
コンビニ商品の割高感を払拭するセブン-イレブンの「うれしい値」、ファミリーマートの「お値段そのまま たぶん40%増量作戦」など。ローソンの増量キャンペーン「盛りすぎチャレンジ」もインパクトがあり、購入できないほど人気になりました。
草深:コンビニは価格が高めというイメージをこの先どこまで変えられるか、2025年も注目ですね。
物価高に追い打ちをかけた「米が買えない」「高い」
舞山:「令和の米騒動」(2位)も物価高に追い打ちをかけました。米がスーパーから消えて、売っている店を探して右往左往…。うどんやパスタなど米の代替品で乗り切った人も多いですよね。
「トクバイ」に掲載するチラシからは米の掲載が激減しました。現在は回復傾向にありますが、まだ完全には戻っていません。また、「Zaim」への登録レシートでは米の購入平均単価は今も上がり続けています。
2023年は卵が手に入らない状況・価格高騰がありました。来年も何か食卓に欠かせない食品が不足することがあるのか…気になります。
生活者の行動に影響を与えた猛暑
木寺:記憶に新しいのが「猛暑で長い夏」(4位)。「Zaim」に登録されたレシートからは、生活者が外出時間をずらしたり、暑さ対策グッズを買って対処したりした様子が見えてきました。
猛暑日の買い物は夕方以降にし、日中は暑さを避けてエアコンの効いたショッピングモールで涼むという人もいたようです。イオンモールでは熱中症特別警戒アラート発表時の暑熱避難施設「クーリングシェルター」として店舗を登録する取り組みも進みました。
猛暑で農産物にも影響があり、収穫できなくなるものがあったり、逆に栽培できるようになったり。暑さで食べたい物が変わったり、夏のお出かけ先も変わったりしていますが、今後も人は暑さとうまく付き合いながら対処していけるのではないかなと思います。
税金や補助金などさまざまな政府の施策が話題に
103万円の壁、小売りの賃上げと人手不足も
竹下:「『103万円の壁』引き上げ」(8位)も選挙で争点になり関心が高かったキーワード。働く機会とセットで考えられるものですが、小売業界でも賃上げを行っているため労働時間が制限されて年末など繁忙期は従業員の確保が苦しいもの。小売業界全体では何とか103万円の壁を上げてもらいたいという思いなので、引き上げの検討に期待しています。
深谷:ランク外にもお金に関する話題は多く、「補助金・給付金の拡充」(12位)については、電気・ガス代補助、定額減税、育児手当などの施策が話題になりました。「Zaim」には全国の市区町村に対応した給付金や手当・控除がわかる「わたしの給付金」というコンテンツがあります。SNSなどで取り上げられてアクセスが急増することがこれまでもありましたが、今年はその頻度が高く関心の高まりを実感しました。
2024年6月に始まった「定額減税」(13位)についても自分の減税額を調べられるシミュレータを作成したところ、ユーザーから喜びのコメントが寄せられました。関心があってもどう調べたらいいのかわからない人が多いようですね。
▶zaim「わたしの給付金」
新紙幣のインパクトがキャッシュレス化で霞んだ
草深:「諭吉から渋沢栄一へ」(6位)は20年ぶりの新しいお札の発行についてですが、実感として発行後それほど話題にならなかったなと。それは「キャッシュレスの定着」(14位)によって新紙幣に触れる人が少なかったことが理由と考えられます。半数以上が「ほぼ毎日キャッシュレス決済を利用している」中で、貨幣の意味が変わってきたことが新紙幣発行でよくわかりました。
一億総ポイ活時代がやってきた!
白井:キャッシュレス化と切り離せないのがいわゆる「ポイ活」ですよね。4月にVポイントが誕生し、生活者がどの経済圏で買い物をするかを考える「ポイント経済圏争い激化」(17位)が印象的な一年でした。
「くふう 家計簿」での取材でも、年代を問わず誰もが当たり前のようにポイ活していることに驚きました。クレカ支払いでポイントを貯めることはポイ活と言わない人がいるくらいでした。ネット通販や固定費の見直しなど、価格で比較するよりも決めた経済圏を意識した行動を取っている人が多くなったことが特徴ではないでしょうか。
竹下:セブン-イレブンが、ポイントが貯まるグループの電子マネー「nanaco」を持ちながらVポイントと組んだことにびっくりしました。物価高で苦戦する中、ポイント戦略で新たなお客を取り込み、売上回復を図ろうとしています。QRコード決済「PayPay」もポイント投資を含めて今年さらに広がりましたが、店によって一番ポイントが付く決済方法を選んで行動することが当たり前になりましたね。
新NISA開始が貯金から投資へのターニングポイントに
NISA口座を約8割が開設しているというデータも
白井:お金に関する大きなトピックスのひとつが2024年1月の「新NISA開始」(10位)ですよね。取材では「投資はやっていないが、NISAで積み立てだけやっている」という人もいて、投資している意識がないほど一般的になり、貯金感覚の人が多いんだなと感じました。
「Zaim」が9月に行った調査ではNISAの口座を開いている人はなんと78.1%。ただしその多くが新NISA開始前から口座開設していて、新NISAをきっかけに口座開設した人は2割くらいでした。「Zaim」ユーザーはお金のことに関心が高い傾向があるので、世間全体では差があるのかも、という印象をもちました。
深谷:新NISAがスタートした1月は「Zaim」ユーザーから新NISAに関する問い合わせが多かったのですが、その後ガクッと減りました。もともと投資をしていた人が1月に新NISAに移行していて、その後新たに始めようという人は少ないのかなと。
調査では「NISAを始めない理由」の2番目に「資金がないから」という理由が挙がりましたが、新NISAで投資している人の最多世帯年収は400万円未満で、高所得者のみがNISAをやっているわけではありません。でも、お金がないとできないというイメージが強く、それで始められない人もいるのかもしれませんね。
巨大地震への意識…防災対策への関心も高まった
「南海トラフ地震臨時情報」後の支出増
舞山:1月1日に起きた「令和6年能登半島地震」(3位)、また8月8日には政府から「南海トラフ地震臨時情報」(9位)が出され、巨大地震への意識が高まった年でした。「Zaim」の家計簿データを分析したところ、南海トラフ地震臨時情報発表後には、全国的に災害対策関連品目の支出総額が大きく増えました。被害予想エリアでは約2倍に。とくに購入されたのは電池・電球などの消耗家電と水でした。
巨大地震注意の発表は初めてのことで、注意喚起がテレビ画面の脇に表示され続けたりとインパクトが大きく、消費の急激な伸びを促したと考えられます。
井野:トクバイニュースでは今年、ダイソーで作る防災バッグ、スーパーで揃う非常食とロ-リングストックのポイントの記事がよく読まれました。物価高であまりお金をかけられないけれど防災対策はしっかりやりたい、という生活者の気持ちがうかがえます。
ふだんの生活で消費しながら備える「ローリングストック」について、「トクバイ」の調査では7割が「知っている」と回答しています。
大ヒットが生まれにくい中、小売発の商品に注目
草深:今回、上位20位までに具体的な商品・サービス名称は入りませんでした。その中でも売れたものとして、「キリンビール 晴れ風」(21位)、キリンビールの「未来のレモンサワー」(26位)が挙がりました。
井野:トクバイニュース編集部で話題になったのは芯をなくして巻き数を増やした「トイレットペーパー5.5倍巻き」。ドン・キホーテで販売されています。ドン・キホーテでは10巻パックのツナ缶もヒットしました。どちらも商品開発の段階からコスパを意識して削れるところまで削っていますね。
竹下:プライベートブランド、ドンキ発、コンビニ発など小売発の商品が売れている傾向が続いています。小売のSPA化*がますます加速してきていますよね。生活者を近くで見ている小売の人たちが開発するというのが強いです。
商品開発力で注目しているのは、ドン・キホーテ、ユニクロ、ワークマン、無印良品、ヤオコーなど、店舗名と商品がリンクしている企業群ですね。イオンのトップバリュも改めてブランディングに取り組み、実際、グループ企業の取り扱いの意欲は明らかに増えています。やはり他社、他店との差別化のためには、最終的には自分たちで商品開発をしていくことが重要になってきます。
*SPA:商品の企画、製造から販売までを一貫して自社で行う態勢のこと
草深:トクバイが主催した「おいしいもの総選挙」でも、スーパー独自で商品開発した商品が光りました。「やりすぎサンド」(山形・週末びっくり市)「戦車バーガー」(茨城・セイミヤ)など。安さだけでなく楽しいものを好む生活者も多く、それに応えたスーパーのコンテンツがエンタメに変わってきている実感がありました。
▶「トクバイ 全国スーパーマーケット おいしいもの総選挙 2024」結果発表
2025年はどんな年になる?
竹下:インフレへの転換点となった2024年。2025年は物価が正常化し、賃金も上がり節約志向も弱まり…となることを期待しますが、ここに来て値下げが増えたり、ディスカウント店の支持が高まっていたりする状況も見受けられます。実際には小売の二極化が進んでいくのではないでしょうか。
井野:2024年は、テレビ番組でスーパーが特集されることがとても多かったように感じます。スーパーでの買い物がエンタテインメント化した背景には、家計が厳しい状況にあっても、それ自体を楽しみに変えて乗り越えていくような、ポジティブな文化醸成がなされていることがあるように思います。2025年、物価がどのように変動しようとも、生活者のみなさんが明るく、前向きに過ごせるといいなと思います。
白井:今年は1位から4位までは残念な話題が並んでしまいました。でも、「くふう家計簿」を見ているとユーザーには悲壮感はなく、自分らしさや楽しみを見つけて暮らしています。「ごきげん出費」で前向きなハッピーな年になるといいなと思います。
草深:2024年は 完全に「コロナ禍が終わった」年。人々の流れや行動はコロナ禍前に戻るかと思いきや物価高や猛暑などによって制限もあり、先行き不透明な風潮・世情は変わらない一年だったことが、今回のランキングにも反映されていたといえるでしょう。
一方でキャッシュレス化が進んだり、ポイント経済圏が広がって「一億総ポイ活時代」に突入したり、NISAによって投資が一般化したりと、お金にまつわる動きは激変。いかに正しい情報を入手して、自分なりのお金との付き合い方を築き上げていくかが、来年以降は生活をそして人生を豊かにできるかのカギになってくるのではないでしょうか。
そうした意味では、生活の楽しみ方も個人個人に委ねられていく時代に完全に突入していきそうですよね。スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどもリーズナブルで魅力的な商品がどんどん登場していますし、買い物の「エンターテイメント」化はますます拍車がかかりそう。
そんな「毎日の暮らしを楽しむ」お手伝いを、2025年も「トクバイ」や「Zaim」ができるよう私たちも頑張っていければと思っています。
■「くふう総研 くらしのトレンドキーワード 2024 」概要
くふう生活者総合研究所が「2024年を象徴するキーワード」として30のコト・モノを選出。ノミネートしたキーワードを対象に「Zaim」と「トクバイ」のユーザーに「2024年、あなたの生活に影響が大きかったこと(もの)・印象に残っていること(もの)」を5つまで回答するアンケート調査を実施した結果により決定しました。
調査概要
調査テーマ:2024年についてのアンケート
調査エリア:全国
調査対象者:8,549名
①「トクバイ」ユーザー 5,380名 ②「Zaim」ユーザー3,169名
(年代内訳/10代0.5%、20代5.1%、30代11.2%、40代18.7%、50代30.8%、60代26.0%、70代以上7.7%)
調査期間:2024年11月25日(月)〜2024年11月27日(水)
調査方法:インターネットによる調査
ノミネートしたキーワード一覧