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お盆に行う迎え火・送り火、何のため?方法や地域・宗派の違い



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お盆の時期に行う迎え火や送り火。ご先祖様の霊が迷わないようにと、火を焚いて目印にする風習です。詳しく知って、次のお盆に備えましょう。


迎え火・送り火はお盆の風習

七夕が終われば、いよいよお盆。迎え火・送り火とは、ご先祖さまの霊が迷わず家まで帰ってこられるようにと目印の火を焚く、お盆に関連する風習です。

古くから日本人にはお盆の習慣があり、お盆に入る際に芋殻(おがら)と呼ばれる麻の茎に火をつけ、先祖や亡くなった近しい人をあの世から導く「迎え火」を、そしてお盆が終わる日には同じように芋殻を焚き、その方々を元の世界へお戻しする「送り火」をしていました。

あの世の人々は暗い世界にいて、ほとんど目が見えません。しかし、芋殻やロウソクを燃やした炎だとこちらの世界が見えるとされ、その炎の明かりで迷わないようにと導き、そして送るのです。

ちなみに苧殻は燃え尽きるまでの時間が長いほか、急に燃え上がることもなく比較的安全な特徴から使われるようになりました。

全国の有名な迎え火・送り火

お盆の時期の有名な地域行事として、京都で毎年8月16日に行われる「五山の送り火」があります。これはまさしく「送り火」を大々的にやる催しとして発展したもの。京都ではこの送り火が終わると秋がやってくるとされています。

「大文字」「左大文字」「妙法」「船形」「鳥居形」の5つの火(それぞれの山に書かれた文字)から成っている五山の送り火。この時期は疫病や水の害で亡くなる人も多かったため、大きな火の力で清め、ご先祖さまをあの世へ送り出すとともに、よくないこと全てをあの世へ持っていってもらうという信仰があり、こういった行事が行われるようになりました。

また青森の「ねぶた祭」、秋田の「竿燈まつり」など、迎え火・送り火の信仰と習合し、形を変えていったお祭りも全国に多くみられます。


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由来と宗派による違い

迎え火、送り火は今ではお盆の始めと終わりの儀式として定着していますが、その由来は日本古来の習俗として行われていた、祖先の霊を鎮(しず)める供養の形であったと考えられます。

迎え火や送り火のほか、精霊流し、精霊祭りといった行事は今も各地で行われますが、これらは亡くなった方々の鎮魂と同時に、厄災をあの世へ持ち帰ってもらうようにと行っていたもの。火で燃やす、水に流すなど、いずれもこの世から厄災を払拭するための方法として、取り入れられました。

なお、迎え火や送り火は仏教の宗派による方法の違いはなく、地域により方法が少々異なります。

いつ行うの?

迎え火はお盆の初日である旧暦7月13日(新暦8月13日頃)の夕方に、基本的に行います。

ご先祖さまをあの世から自宅に迎え、ご先祖さまの恩に心から感謝して丁重にもてなした後、お盆の終わりである旧暦7月16日(新暦8月16日頃)の夜に送り火をして、またあの世へ送ります。

旧盆?新盆?地域による日程の違い

旧暦から新暦へと改暦のあった明治以降、地域によってお盆行事の時期は旧盆と新盆の2つに分かれました。

本来の月の暦(旧暦と同じ時期)に従って行うお盆は「月遅れのお盆」として、お盆の行事そのものを8月13~16日に定めて催し、迎え火と送り火もその始めの日と終わりの日に行います(旧盆)。一方、旧暦のお盆の月(7月)をそのまま新暦でも採用し、7月中旬にお盆行事を行う地域もあります(新盆)。

特に関東では新盆の期間にお盆行事を行うことが多く、新暦7月13日にお盆を迎え、16日に終わる(亡くなった方を送る)地域が多くなっています。


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旧盆・新盆と地域によって時期が異なるのは、明治の改暦の際に新暦に基づいてお盆の日程を変えた地域(新盆)と、旧暦と時期が近い形で残そうとした地域(旧盆)があるから。2つに分かれたのは、地域ごとの産業の特徴が背景となっているといわれます。

農耕が始まって以降、進化を遂げた太陽暦は今の暦に近く、太陽の公転に基づいて、種まきから収穫までほぼ一定のリズムで行います。これは麦も米も、時期は違っても農耕に関してはみな同じ暦スケジュールでの考え方を使用するのです。

そのため農業中心に産業が栄えていた地域では、旧暦のお盆と時期が多少ずれてもリズムさえ狂わなければ問題ないため、新盆が採用されたといわれる説があります。

一方、漁業や養蚕など生き物を扱うものは、季節の移ろいや暦に大きく影響されます。そのため、こういった産業をメインにしていた地域では、旧暦と同じ時期の頃にお盆を開催した方が都合がよく、旧盆を採用していると考えられています。

時間にきまりはある?

迎え火も送り火も、夕方から夜にかけて行いますが、きっちりと時間はきまっていません。日本は緯度が違うことで、その時間帯の景色や明るさもずいぶん違いますよね。そのため時間はきめず、日没から準備し、暗くなってきたら火を焚くとされているのです。

迎え火・送り火を行う場所は?

迎え火と送り火は亡くなった方の目印になるよう、家の前で行います。まわりに燃えやすいものなどがないか十分注意してくださいね。

もし家の立地上、家の前で火が焚けない場合は、盆提灯を吊るして代用しましょう。本来は火を焚いた方がいいとされているので、周囲のおうちに迷惑のかからないよう十分注意したうえで、できる場合はほんの少しでも火を焚いたり、またお線香を燃やして迎えられるといいでしょう。

迎え火・送り火はどこで購入できる?

迎え火、送り火はセットになったものを購入すると、おうちで手軽に行えます。お盆の時期になると、スーパーや生花店、仏壇仏具店などで販売しているので探してみましょう。なお燃やした後に残った燃え殻は清めたりお経をあげたりするなど、感謝をしてから捨てるのがいいでしょう。

迎え火・送り火とともに行うお盆の風習

迎え火、送り火を焚く時には、一般的にきゅうりやなすに芋殻や割り箸で足をつけ、きゅうりは馬に、なすは牛に見立てて飾ります。

きゅうりは早馬のように早く、亡くなった方へこちらの世界へ来てもらうように、といった意味が混められます。またなすは、ゆっくりと牛歩であの世へ帰ってもらうようにと祀るのです。


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その他、お盆には素麺や瓜、西瓜(すいか)、梨、ぶどう、鬼灯(ほおづき)などもお供えします。鬼灯はまさにその名の通り、鬼火(おにび:空中をただよう怪しい火のこと)のようで、この時期の風物ともなっています。

迎え火・送り火は亡くなった方を迎え、送るお盆の伝統的な風習。ご先祖さまや、亡くなった近しい方へしっかり感謝をするために、これからも行っていきたいですね。

監修: 井戸理恵子


今回お話を聞いた先生


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井戸理恵子(いどりえこ)

ゆきすきのくに代表、民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大學卒業後、株式会社リクルートフロムエーを経て現職。現在、多摩美術大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、日本全国をまわって、先人の受け継いできた各地に残る伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、地域特有の祭り、習慣、伝統技術などについて民俗学的な視点から、その意味と本質を読み解き、現代に活かすことを目的とする活動を精力的に続けている。「OrganicCafeゆきすきのくに」も運営。坐禅や行事の歴史を知る会など、日本の文化にまつわるイベントも不定期開催。


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