病気やケガで入院したら、医療費がどれくらいかかるのか心配ですよね。しかし日本には患者の負担を軽減する「高額療養費制度」があります。この制度を活用すれば、人によっては医療保険はいらないという説も。制度の詳細や利用方法をファイナンシャルプランナーが解説します。
高額療養費制度とは
「高額療養費制度」とは、ひと月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額が支給される制度です。
原則として、1人ごと、1カ月ごと、1医療機関ごと(入院と外来は別)に適用されますが、同一世帯で2万1,000円以上の自己負担額が複数ある場合は、それらを合算することができます(※70歳未満の場合。70歳以上の人は支払った医療費全額を合算できます)。
なお、自己負担限度額は、健康保険や厚生年金保険の保険料の算定の基準となる「標準報酬月額」によって5つの区分に分けられています。標準報酬月額は、毎年4月~6月の3カ月間の給与の平均額に基づいて決められます。
例えば標準報酬月額が28万~50万円の人であれば、医療費がどんなにかかっても、自己負担額は8万円ちょっとで済むというわけです。さらに、過去1年間に、高額療養費の支給を3回以上受けると、4回目以降は限度額が4万4,400円になります。なお、保険適用外の治療や入院中の食事代、差額ベッド代などは対象とはなりません。
「限度額適用認定証」も知っておこう
「高額療養費制度」はあとから請求をすることで払い戻される仕組みのため、一旦は自己負担額の全額を窓口で払う必要があり、それが難しい人も。そのようなケースでは、次に紹介する「限度額適用認定証」があれば、最初から医療機関の窓口での支払いが自己負担額限度額までになり、あとから払い戻しを申請する手間もいりません。
限度額適用認定証は、加入している健康保険組合の窓口で申請をすることで発行されます。医療費が高額になる月が続きそうなら申請することをおすすめします。
医療機関の窓口で、被保険者証と限度額適用認定証を提示することで支払いが自己負担限度額までとなります。
高額療養費制度を利用する際の注意点
高額療養費制度を利用するにあたって、いくつか注意点があります。
月をまたいだ場合には適用されないケースも
例えば、年収500万円の世帯で、20日間の入院費が14万円かかった場合、同じ月に20日間入院していれば、限度額を超えた分は高額療養費として払い戻しされます。しかし月をまたいで入院し、前月10日間で7万円、今月10日間で7万円の医療費がかかった場合は、どちらの月も限度額を超えていないので、高額療養費制度は適用になりません。
自己負担額が2万1,000円以上でないと合算できない
高額療養費は同一世帯(健康保険の被保険者と被扶養者)の医療費を合算して自己負担額限度額を超えていれば支給されますが、合算対象の自己負担額は1人あたり2万1,000円以上である必要があります。つまり、年収500万円世帯の場合、同じ月に夫(被保険者)が8万円、妻(被扶養者)が2万円の医療費の自己負担額があっても合算はされず、また限度額を超えないため、高額医療費制度の適用はありません。
保険適用外の治療や食事代、差額ベッド代は対象外
前述しましたが、高額療養費制度の対象となる医療費は、保険が適用される治療や、医師による処方箋のある薬代です。先進医療にかかる費用などは対象外となります。また入院中の食事代、差額ベッド代なども適用されません。そのため、これらの出費が心配な人は、医療保険に加入し、先進医療の特約を付けるなどでカバーするのがおすすめです。
高額療養費制度は、医療費の負担を軽減してくれますが、保険適用の治療や薬代以外には適用されないなど、万能ではありません。そのため、もしものときにはある程度の貯蓄は必要です。貯蓄額に不安がある人は医療保険でカバーするとよいでしょう。一方で、高額療養費制度のことを知らずに、医療保険の保障を手厚くし過ぎて保険料が高額になっている場合は、この機会に見直しをしてみましょう。