食材を保存する際に使用するラップ。購入する時、物によって価格がずいぶん違ってどれを買おうか悩んだことはありませんか。そこで、今回は「NEWクレラップ」でおなじみの株式会社クレハ樹脂加工事業所技術部・大森麻希子さんにラップに関する疑問をお答えいただきました!
ラップの素材の違いを知ろう
ひとくくりで「ラップ」と言っても、実は素材が異なっています。ここでは主要な「ポリ塩化ビニリデン」「ポリエチレン」「ポリ塩化ビニル」の3種類を比べてみます。
ポリ塩化ビニリデン
3種類の中で最も酸素バリア性が高く、酸素を通しにくい素材。「NEWクレラップ」もこの素材が使われています。食材を酸化から守り、おいしく保存することができます。ただ、価格が高いのが難点。
保存に向いている食材: ごはん・肉・魚などの冷蔵、冷凍保存
ポリエチレン
見た目の透明度が低く、酸素バリア性が低い素材です。安価なのが特徴で、激安店等で販売されているラップの多くはこのタイプ。
保存に向いている食材: 収穫後も呼吸量の多い果物や葉物野菜など(ただし、水で濡らしたペーパータオルを根に巻くなど乾燥予防が必要)
ポリ塩化ビニル
主にスーパーの精肉、鮮魚などのプラスチックトレイにかぶせてあるものです。酸素バリア性や水蒸気を通しにくくする水蒸気バリア性も低い素材です。酸化、におい移り、乾燥などの原因となるため、購入してきた精肉、鮮魚などはその日に使わない場合、酸素バリア性の高いポリ塩化ビニリデンのラップに包んでから冷蔵または冷凍保存するのがおすすめ。
一般的に価格が高めのポリ塩化ビニリデン製のラップは、においや酸素を通しにくいので、素材をおいしく保存するのに一番適していると言えます。ポリエチレン製は酸素を通す性質があるため、収穫後も呼吸をしている葉物野菜や果物を包むと新鮮で長持ちしやすいのだそう。
ラップの疑問を解決!
ここからは、ラップに関する疑問やおいしく食材を保存するテクニックなどを大森さんに伺ってみました。
ラップで包んでそのまま冷蔵庫でOK?
ラップで包んだ肉や魚を、そのまま冷蔵庫で保存していいのか悩んだ経験はないでしょうか。さらにジッパー付きの保存袋に入れて保存しているという人もいらっしゃるかもしれません。実はジッパー付き保存袋の多くは、酸素のバリア性の低いポリエチレン製。
ただし、保存袋は厚みがあり、ジッパー部で密封ができるので、作り置きの食材や汁気の多い食材などを冷凍保存するのに適しています。また、小分けした食材をラップに包んで保存袋に入れることで、冷蔵庫、冷凍庫の中が散乱することなく整頓できます。保存した日付や食材名を記載しておくと、使い損ねなどの無駄を減らすこともできます。冷凍した食材は2〜3週間を目安に使い切るようにしましょう。
そのまま電子レンジで解凍してもいいの?
ラップの素材によって耐熱温度は異なるので、パッケージに書いてある耐熱温度を確認してからレンジ加熱を行ってください。
耐熱温度は100℃以上になっているものがほとんどですが、油脂の多いカレールーなどをラップに包んで冷凍し、電子レンジで温める場合などは注意が必要です。加熱するとカレーとラップの接触面が耐熱温度を超えてしまい、溶ける場合があります。油脂の多いものは耐熱容器に移して食材に触れないようふんわりラップをかぶせて電子レンジにかけましょう。
また、ポリ塩化ビニリデンのラップは密着性が高いため、加熱しすぎると温まった食材から出る蒸気の圧力がかかりパンパンになってラップが裂ける場合があります。様子を見ながら加熱し、加熱のしすぎには注意しましょう。
食材のおいしさキープできるラップ保存のコツは?
せっかく酸素バリア性の高いポリ塩化ビニリデンラップを選んでも、包み方を間違えたら元も子もありません。食材をラップで包む際には、食材とラップの間になるべく空気を入れないようにピチッと密着させて包みましょう。
また、冷凍する際はなるべく薄く平らに包むことで、食材の温度が早く下がって冷凍されるため、解凍時にドリップと呼ばれる食材の水分が流れ出るのを防ぐことができます。解凍後もおいしさが損なわれにくくなる上、衛生面でも安心です。
ラップの専門家直伝! 便利なラップ活用術
冷凍ごはんは「端折り包み」で加熱後が楽々
ラップに包んだごはんをレンジ加熱した際、開き口が見つからず、熱いごはんを茶碗に移すのに苦戦した経験はありませんか。そんなお悩みを解決する便利なごはんの包み方を教えてもらいました。
包み方
1. ごはんをラップの中央に置く。
2. 手前側のラップを中央に向かって折りたたむ。その際にラップの端を1〜2cm程度外側に折り返す。
3. 奥側のラップも同様に折りたたみ、端の1〜2cmを外側に折り返す。この時、2で折り返したラップと重ね合わせ、ごはんがきちんと包まれているように注意する。
4. 左右のラップも同様に中央に向かって折りたたみ、端を外側に折り返す。この状態で冷凍庫へ。
食べる際に、下の写真のように電子レンジで温めると、折り返した部分が持ち上がってくるような感じに。
茶碗に移す際には左右のラップを持って、折りたたんだ方を下に向ければ、この通りごはんが上手に茶碗に入りました。
ラップの包み口が見つからなくて、熱々のごはんを持ったまま大慌てしたことがある人は、ぜひ試してみてくださいね。
ラップ1枚でお弁当の片寄りを防止
ラップはお弁当でも活躍します。せっかくのお弁当が、かばんに入れて持ち歩くうちに片寄ってしまったことはりませんか。そんなお弁当の片寄りも、お弁当箱の蓋を閉める前にラップを1枚かぶせるだけで防止することができるのだそう。
できあがったお弁当の上にお弁当箱より大きめに切ったラップをかぶせ、ラップの上から手でお弁当の中身に密着させるように軽くおさえます。そしてその上から蓋をかぶせます。ただそれだけ。テクニックも必要ありません。なお、この方法は蓋にパッキンのついたタイプのお弁当箱に限ります。
下の写真は、ラップをかぶせたお弁当箱とラップをしていないお弁当箱をそれぞれ袋に入れて50回上下に振り、蓋を開けた様子。ラップなしのお弁当はおかずが散らかっているのに対して、ラップありのお弁当はほぼ片寄りや散らばりがありません。
この方法なら、洗いにくい蓋のパッキン部分も汚れないため、お弁当箱を衛生に保つ効果もあります。
私たちの身近なラップ。使い方次第で料理がもっと手軽においしくなりそうですね。ぜひラップを上手に活用してみてくださいね。
取材協力
株式会社クレハ 樹脂加工事業所 / 技術部 大森麻希子(おおもり あきこ)
家庭用品関連商品の「NEWクレラップ」や「キチントさん」を担当しています。新製品開発や実用評価の他、実食品の色の違いや形の変化で製品の特徴や有効性をわかりやすく示す「視認化の取り組み」や時短や家事を快適にする「使い方の提案」なども行っています。