ウイスキー愛好家の中でも、好んで飲む人が多い「アイラウイスキー」。スコッチウイスキーの1種ではありますが、「ピート香」と呼ばれる独特の香りと味わいがあり、ウイスキー好きの心をつかんで離しません。
今回は、初心者から上級者まで幅広く楽しめるおすすめのアイラウイスキーを専門家が10本紹介。アイラウイスキーの味の特徴や、歴史に関しても詳しく説明していきます。
アイラウイスキーとは?
アイラウイスキーとは、「スコッチウイスキー」の1種。イギリス・スコットランドの西側にある「アイラ島」で造られるウイスキーのことを指します。アイラウイスキーは、他のスコッチとは一線を画した独特な味わいがあるのが特徴。
以下では、アイラウイスキーを楽しむ際に知っておきたい基礎的な知識をまとめてご紹介します。
アイラウイスキーの歴史
スコットランドよりもウイスキーの歴史が長いアイルランド。「アイリッシュウイスキー」は、スコッチウイスキーと並び「5大ウイスキー」に数えられる、伝統的なウイスキーです。
そのアイルランドにほど近い場所に位置するアイラ島は、スコットランドの中でも比較的早い時期からウイスキーの製造が行われていた歴史ある地域。本当に比べると、人口も少ない島ですが紀元前のころから人が住んでいたといわれており、島としての歴史も非常に長いとされています。
周辺エリアにしては珍しく、四季がしっかりと感じられる低温多湿の環境はウイスキー造りにも最適な環境だっため、スコッチの中でも1つのジャンル「アイラ」が生まれるほどまでにウイスキーが盛んになったのでしょう。
蒸留所の設立当時は、陸運のインフラがしっかり整っていなかったため、ほぼ全ての蒸留所が海沿いに建っているのも大きな特徴の1つ。この地理的要因も、アイラウイスキー独特の味わいに影響を与えているのです。
アイラウイスキーの味の特徴!スモーキーなピート香
アイラウイスキー最大の特徴は、なんといってもその独特な香り。人によっては、「薬品臭い」「正露丸みたい」という方もいますが、この香りこそが、多くのウイスキーファンの心を掴む要因なのです。
この独特なスモーキーな香りを「ピート香」と言います。
先述したように、アイラ島の蒸留所はそのほとんどが海沿いに建てられています。それらの土地は、ピートという泥炭が豊富に含まれており、ウイスキーを造る際には、このピートを使用して麦芽を乾燥させるのです。
ピートは、植物が堆積して生まれた泥炭で乾かすと燃えやすく、その香りが麦芽にうつることから独特の香りが生まれます。ピートには海藻なども含まれていることから、スモーキーさに加え独特の海の香りや塩気がすることも。
こういった、ピートの“煙臭さ”がアイラウイスキーの特徴となっており、愛好家達は「癖が強い」物を好んで飲む傾向があるため「臭い」「癖が強い」という言葉は、アイラウイスキーにとっての褒め言葉とも言えるのです。
アイラウイスキーを選ぶ際に知っておきたい「ボトラーズ」「オフィシャル」の違い
アイラウイスキーのみならず、ウイスキーを選ぶ際に出てくる専門用語として「ボトラーズ」「オフィシャル」という言葉があります。この違いを知っておくと、ウイスキーがさらに楽しくなるのです!
まず、「オフィシャル(ボトル)」というのは、1つの蒸留所がウイスキーの生産・熟成・ボトリング(瓶詰め)までを一貫して行い出荷されたウイスキーのこと。いわゆる、通常のオリジナル商品としての認識ですね。
一方、「ボトラーズ」「ボトラーズブランド」と呼ばれているのは、ウイスキーを造った蒸留所以外の業者・企業が関わり販売しているウイスキーのこと。業者が、樽ごと蒸留所からウイスキーを購入して、独自の熟成やボトリングをおこなうことで、オリジナルとはまた異なった個性的な味わいのウイスキーに仕上がるのです。
独自の熟成・味わいに加えその希少さも、ボトラーズの魅力。樽ごとの購入、さらには熟成の工程もそれぞれ異なるため世に出回る本数が非常に限られているため、とっても貴重なんです。
ウイスキーの魅力にハマってきたら、オリジナルと比較してボトラーズにも手を出してみると、より一層世界観が広がると思いますよ!
専門家が本気で厳選!おすすめのアイラウイスキー10選
ボウモア 18年(bowmore18yo)
ボウモアは、日本のサントリーが所有する蒸留所であり、バーなどでも定番の銘柄です。今では珍しい自社畑の大麦を使用し、フロアモルティングを行い丁寧に作られています。
エリザベス女王2世が視察に訪れた事もあり、英国海軍最大の空母「クイーン・エリザベス」の命名式では女王自らが祈りを捧げて投げ割ったことでも知られている1本。
18年ものは、非常にバランスの取れた15年物から更に時が経ち、若干の深みを増します。穏やかなピートの香りは、シガーを想起させるかのよう。後味に残るそのほろ苦さが、紫煙を燻らせ深く吐き出した時の思考がクリアになって行く様なそんな感覚に似ていると言えるでしょう。
派手過ぎないボウモアらしいその控えめなスタイルは「女王」と言う落ち着いたイメージに繋がるのも頷けます。
「岩礁」と言う意味を持つボウモアは、海抜0mの海の真横に貯蔵庫があり、海が荒れれば波にさらされる事もあるのだそう。それらが与える塩味も柔らかく、優しく甘さを引き立ててくれます。
目まぐるしく過ぎて行く日々の中で、ふと一息ついて思考を整理したい。そんな夜に、ゆっくりと飲んでみてほしい1本です。
ラガヴーリン 16年(Lagavulin 16yo)
「アイラモルトとは何か?」それを語る上で、代表格として挙げなくてはならない銘柄がこのラガヴーリンです。
ユナイテッドディスティラーズが作ったスコッチの、それぞれの土地を表す代表銘柄を集めた「クラシックモルト」にアイラ島の代表として選ばれた事も、このラガヴーリンがアイラを代表する銘柄であることを証明しているといえるでしょう。
オダギリジョー氏が起用され「ハイボール、スコッチで」のキャッチコピーと共に爆発的にヒットしたCMが記憶に新しい「ホワイトホース」のキーモルトとしても有名です。
創業当時は、建物の屋根に白馬の絵が大きく描かれており、ラガヴーリンという名前は表に出ずホワイトホースに用いるブレンデッド用ウィスキーの蒸留所としての立ち位置が強かったのだそう。ホワイトホースの成功と共に歩んできたとも言える蒸留所ではありますが、次第にその「モルト」が注目されてきました。
「ラガヴーリンはラガヴーリンの味がする」そうとしか言いようのない、圧倒的個性と説得力を持っていながらもピーティーでナッティーなラガヴーリンは、アイラモルトを知るための入門的な1本としてもおすすめです。
ラフロイグ 15年 ビッグ・フィッシュ(Big Fish Laphloaig 15yo)
チャールズ皇太子が愛飲することで知られる、“ロイヤルワラント”を授かった唯一のシングルモルトです。
アイラモルトの中で、最も海のニュアンスを感じるこのウイスキー。薬っぽいピート香のスモーキーさや、海藻的な塩見と旨味を伴いますが、これは、他の蒸留所よりも長い時間蒸留液を採る事によって、海を感じさせる特徴的なオイリーでスモーキーなラフロイグの味わいを作っているのです。さらに、バーボンバレルでの熟成によりバニラなどのまろやかな甘味が加わっていきます。
また、ラフロイグは自社の製品の品質の維持向上を目的とし、周辺の土地を買取り、ウィスキー 造りの根幹とも言える水質と環境の保持に注力している。ピートを採取する場所も独自に所有しており、これらの要素がラフロイグの特別さを際立たせています。
非常に人気の高いラフロイグのシングルカスクは、ボトラーズの商品でも物が少なくカスクストレングスであるこのビッグフィッシュは樽で寝かせられたウィスキー 本来のメッセージに触れる事ができます。
高めのアルコール度数と、オークに由来する甘みが通常のラフロイグよりも強く感じられるでしょう。21世紀初の蒸留となる、記念すべき1本は一飲の価値ありです!
ブルイックラディ アイラ・バーレイ(Islay Barley 2011 / Bruichladdich)
“示唆に富むウィスキー造り”を信念とした蒸留所ブルイックラディ 。その信念の通り、アイラ島の麦・アイラ島の水・アイラ島での熟成。そして、アイラ島でのボトリングされたこちらの1本は、ウィスキーを通じ「アイラ島とは何か?」を語りかけてくれます。
ワインにおける考え方の重要な要素の一つにテロワール(自然的要因)と言う物がありますが、蒸留酒においてはその特性上なかなか確かな事に言及される事はありませんでした。しかし、スコッチがスコッチたるのは何故か?更に言えば、アイラとは何か?何故こうまで人を魅了するのか?
その答えに迫らんとするのが、この「アイラバーレイ」というシリーズなのです。
アイラ島のウィスキーの代名詞とも言える「ピート香」。ブルイックラディ蒸留所はブルイックラディ、ポートシャーロット、オクトモアと3種の製品を作り分ける事でその方向性を示しています。
中でも、ブルイックラディはノンピートの麦芽を用いる為、正露丸の様な独特なピート香はしません。その為、原料である大麦の個性や樽のニュアンスがよく反映されています。
使用される大麦は特定の契約農場の物であり、リリース年毎に変わるのも特徴的。また、エチケット(ラベル)にはどこの農場の物を使用したかが明記されるため、年ごとの違いを楽しむ事もできます。この工夫によって、ワインの様に「何処で作られたのか?」「その年はどんな年だったのか?」といった事象が読み取れる様にデザインされているのです。
グラスに注げば、ブルイックラディらしい青リンゴや洋梨の様な爽やかな酸と瑞々しさを感じ、口に含めば完熟した桃やアプリコットと言った遊郭果実系のニュアンスがあり、ドライフルーツの様な洗練された甘味を感じることができます。
また、花束を抱えた様な芳醇なフローラルのニュアンスや柑橘の皮の爽快さ、バニラやココナッツと言った甘やかな香りが添えられ、非常に高いバランスでまとまっています。
少々の塩気も混ざり、浜辺で楽しむフロートドリンクやパフェの様なそんな愛らしさを感じる事ができるでしょう。
キルホーマン マキヤーベイ(Machir Bay)
グラスに鼻を近づければ、夏休みに海の近くで嗅いだ磯焼きが連想される「キルホーマン マキヤーベイ」。
何故か香りを嗅いだだけで、旨味を伴った塩味を感じられます。不思議な事に、それらの香りは調理された"料理"のように完成されたイメージを与えてくれます。
ヘビリーピーテッドの麦芽を用いたスモーキーさの目立つウィスキーではありますが、正露丸の様な薬品的な尖った香りではなく、海の近くで炭焼きにした帆立やイカのよう。旨味の凝縮したそれらの食材に、粗い塩と少しのレモンを振り貝殻や皮が少し焦げ付いて行くような、そんな風景が目に浮かぶでしょう。
「マキヤーベイ」という名前は、アイラ島近くの人気のビーチリゾートから名付けられており、ネーミング通りとても楽しい印象を与えてくれます。
鼻から息を通さず口の中に含んでいくと、コンデンスミルクの様な優しい甘味と香りを感じる事もできる、まさに童心を思い返す様な純粋なウィスキー。
立ち昇る香りに含まれる「旨味」をぜひ堪能してみてください。
ブナハーブン 26年 1989 ホグスヘッド オーシャンズ (Oceans 1989 Bunnahabhain 26yo Hog's Head)
「ちょっと良いウィスキーを飲んでみたい」「アイラ島で造られるウイスキーが気になる」そんな方に強くおすすめしたい1本が、こちらの「ブナハーブン 」。
アイラ島のウイスキーの特徴として、南側は非常にピーティーでスモーキーな癖の強い物が多く、北側はその反対となっていることが挙げられます。この「ブナハーブン」は、基本的にノンピート麦芽を用いたフルーティーでフレッシュ感漂うウィスキー。
オールドのウィスキー人気が高まる中、80年代のブナハーブンの評価は非常に高いことで知られています。
カリラ 11年(Caol Ila 11y)
ジョニーウォーカーの原酒としても知名度の高い、アイラ最大の生産量を誇るカリラ。アイラ島のウィスキーのラベルに書いてある蒸留所の名前は、ゲール語が元になっているからか、日本人としてはあまり見慣れないアルファベット順で表記されており非常に読みづらいかもしれません。
このカリラも「Caol Ila」書くきます。これが読めるようになれば、“ウィスキー通”の第一歩!このラベルを見た時に「あの会社の物だ」とすぐわかる様になっていたとしたら、かなりウィスキーにハマっていると言えるでしょう。
作品ごとに、特徴的な風刺の効いたイラストが施されている事でも人気のブティックウィスキー社。このウイスキーでは、古き良きアメコミヒーローで80年代に映画化された「フラッシュゴードン」のバルタン王子が、大量のシカを引き連れて攻めて来ている場面が描かれています。
ここに描かれているのは、目の色を変えて迫ってくる軍団たちの姿を見た生産者が「また来やがった」「あいつらいつもピーテッドモルトのストックを狙ってきやがる。猟犬を放って追っ払え!」と言っているのだそう。これは、昨今のアイラブームを痛烈に風刺していているようで、実に趣があります。
そして、その味わいはオリーブとオリーブオイル、藁で燻ったスモーキーなベーコン、白身魚といった食事を思い出させてくれます。まるで、アクアパッツァのようなウイスキーと言えるかもしれませんね。
ラガヴーリン 9年 ラニスター家(Lagavulin 9yo Game of Thrones House Lannister)
大ヒットドラマ「GAME OF THRONES(ゲーム・オブ・スローンズ)」のHBO社と、ディアジオ社とのコラボ商品。発売されている8種のコレクションの中でも、クライヌリッシュと並び特別な一本となっているのがこの「ラガヴーリン 9年 ラニスター家」。
中身のラガヴーリンがどう言った物かは、前述のラガヴーリン16年の記事を参考にしていただくとして、こちらは「9年熟成」と通常のラインナップの中にはない熟成年数のものという点に注目。
通常、熟成年数が16年であることを考えると少々荒々しく、ラベルに描かれたラニスター家の象徴である黄金の獅子王の風格を感じさせてくれます。
バナナ様の甘みに香ばしいカラメルと、ラガヴーリンらしいスモーキーさが加えられたこの1本。チョコレートやキャラメルポップコーンなどをつまみに、ドラマを見ながら過ごすおうち時間のいい相棒になりそうです!
コレクションアイテムとしても、非常に興味深い価値のあるウイスキーだと言えるでしょう。
エレメンツ オブ アイラ Pl6(Elements of Islay Pl6)
ロンドンの有名リカーショップ「ウィスキーエクスチェンジ」のオーナーであるスキンダー・シン氏が、厳選した樽から作った大人気シリーズ「エレメンツオブアイラ」。その人気っぷりは、2008年の発売開始から即完売が続くほど!
蒸留所の名前からとった、アルファベットと熟成年数が描かれ、薬品瓶をイメージして作られた見た目の特徴もユニークな1本。
このPL6では、ブルイックラディ蒸留所で作られるポートシャーロットが瓶詰めされています。オフィシャルボトルもお洒落なデザインが人気なので、バーなどで見かけた事があるのではないでしょうか?
ヘビリーピーテッドなモルトを使用したスモーキーなウィスキーですが、使用されているピートがアイラ島のものではないので、絶妙な違いがあり、どことなく灰っぽく乾いた印象のある苦味と旨味を伴っているように感じられます。
オフィシャルボトルと共に購入して、飲み比べて並べたり、ボトルデザインの違いを眺めて楽しんでみてください。
アイラ ジャーニー ブレンデッドモルト(Islay Journey)
アイラ島の各蒸留所を、見事にブレンドしたお手頃なブレンデッドといえば「アイラ ジャーニー ブレンデッドモルト」。
これまでアイラ島の描く蒸留所の特徴や、ボトラーズブランドのそれぞれの特色を紹介してきましたが、最後に紹介したいのはそれら全てをひっくるめた様な1本。
アードベッグ・ラフロイグ・ラガヴーリン・カリラ・ブナハーブンと、アイラ島の魅力を余すことなく伝える原酒たちと、それを上手くブレンドして世に送り出すのは、ボトラーズの雄ハンターレイン社。
ウイスキー好きなら、この組み合わせが物凄いことだということがわかるかもしれない。コストパフォーマンスは圧倒的で、まさにデイリーユースの家飲み用に常にストックしておきたい1本。
ブレンデッドの魅力は、なんといってもそのお手頃さ。
良い物を飲むには、それなりの気構えが必要である為、向き合うのに気力が必要とされる面もあります。しかし、ブレンデッドにはいつでも気兼ねなくさっと楽しめる安心感があるのです。
「何が食べたい?」の質問に「なんでも良い」と答えるように、「なんとなくアイラが飲みたいな」と言う気分の時にはぜひチョイスしてほしい1本。
ストレートでも、ロックでも、ハイボールでも、その時の気分で自由に楽しんでみてください。
まとめ
その独特な味わいと香りが癖になる「アイラウイスキー」。
最初は、その強すぎる個性に抵抗感を覚えるかもしれませんが、ハマってしまうと「これ以外愛せない!」というほど熱狂的なファンになってしまう人も多いのが特徴。
今回ご紹介した10本は、初心者〜上級者まで幅広く楽しめるセレクト。ぜひこの記事を参考に、奥深きアイラウイスキーの世界に足を踏み入れてみてください。
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