年末の買い出しと言えば、ニュースでも毎年とりあげられる上野・御徒町のアメ横商店街が有名です。
一年中多くの人でにぎわうアメ横ですが、師走になるとマグロをはじめカニや数の子、イクラなどの海産物を扱う露店数が跳ね上がります。閉店店舗前に仮設売り場を設けたりする光景は年の瀬ならでは。
目の前でどんどん値引きされ、大きな塊の冷凍マグロが売れていく姿は、ついつい手が伸びそうになりますが、実際に買っても大丈夫なモノなんでしょうか?
とある露店で試しに購入してみたところ……なかなか厄介な商品でしたよ。
【購入編】立ってるだけでどんどん値段が下がる冷凍マグロ!
パンダフィーバーに沸く上野御徒町に降り立つと、すでに年末感満載の買い出し客がたくさん。海鮮たたき売りの名物露店もたくさん立ち並んで大きな声で客引きしていました。
そこに並んでいるのが、この太平洋産天然まぐろ。表示価格は中トロが1サク3,000円、大トロが1サク5,000円と、どの露店も同じ値付け。包装も同じですね。
ただ、この価格はあってないようなもの。一瞬でも立ち止まって客引きの声に耳を傾けると、「安くするよー!」の一声で、中トロ1,500円、大トロ2,500円とこちらから何も言ってないうちに半額に!
このままでは捕まる!と、別の露店へと足を向けると、そちらでも中トロ1,500円、大トロ2,500円の半額コール。値段もどこも同じなのかなと思っていると、買いそうな客に思われたのかさらなる割引が。
「セットで4,000円を3,000円でいいよ!」さすがに心がぐらっと動いたところを、「この中トロと大トロのセットなら2,500円でいいや!」とさらなる追い打ち。どうやらそれが底値らしく、他のお客さんに話しかけ始めました。
もう一つの露店でもほぼ同じトークを経て、中トロ大トロセットが2,500円に。中トロでぱっと見180g、大トロは250gはありそうなサクなので、これが普通に食べられればとんでもないお買い得商品なのですが……。
ちなみに「このマグロの種類は何?」という問いには当初「いいマグロ!」と大声で返答されたり、「刺身もいいけどステーキがうまいよ!」と不穏な発言が気にはなったものの、検証目的で購入してみることに。ちなみに保冷材などはつきませんでした。
買ってみたら……マグロが宙に浮いてる!?
こちらが1セット2,500円で購入したマグロです。左の、横に広いサクが中トロで、3,000円の表記がありますが実質1,000円。右のブロックが大トロで、店頭で5,000円程度の表記で実質1,500円になります。
冷凍された状態で見ると、正直そんなにトロというほど脂ののった部位には見えませんが、ほぼ赤身だとしてもそれなりに美味しければお得と言っていいかもしれない価格。いざ実際に試食してみようとパックを開けると……。
マグロが浮いている……! 発泡スチロールのトレイの上にラップをピンピンに張り、その上に薄いマグロを乗せ、そして上からさらにラップをすることで、厚みがありように見せる高等テクニック……!
店頭でぱっと見たときの期待値からすると、半分程度の厚みのマグロがトレイの上で宙づりになっていました。
もちろん大トロも同じ方法で宙に浮いています。
中トロは、サク取りの余り切れ端を不適切な処理で冷凍したもの……?
宙づりラップ効果で厚い身に見えていた中トロをまずは試食してみることにします。かなりの薄さで、刺身に切る方法をかなり工夫してなんとかそれっぽく切り分けました。この薄さは、商品のサク取りを行なった後の残りだと思われます。
気になる味は、メジマグロのかなり小さい個体か、メバチマグロのあまり質の良くないもの……? という印象。かなり水っぽく、マグロの味! という感じがあまりしません。激安居酒屋のコースに出て来る、味の薄いマグロの刺身がわりと近い感じ。
と思ったら、強烈に生臭い香りがあとから襲ってきて頭を抱えることに……。超ハズレの回転寿司の回ったまま放置されたマグロをうっかり食べたくらいのイメージでしょうか。
先ほどまで、理不尽に薄いマグロの切り身に怒っていたはずが、薄くてよかったかもしれないなと思えます。この生臭さは、適切に冷凍処理されたものではなく、一度解凍されて切り分けられた端っこを適当に再冷凍したものと考えたほうがよさそうです。
大トロはさらにヤバかった!
解凍すると、一応脂ののりはありそうなルックスになった大トロ。綺麗な脂の筋というよりは全体的にピンクな感じです。激安回転寿司のサービストロといった風情。そして裏返してみると……、
内臓の処理が不完全なまま冷凍されている……! そして、ドリップが固まったと思われる氷がびっしり!
さらに、腹骨もついたままで、魚を三枚おろしにしたときにすき落とす部分なことが丸わかりです。
ダメ押しに、この大トロはあばら骨の曲がり方に合わせて丸めて冷凍されており、ぱっと見のボリュームとは裏腹に、中はドリップ氷がびっちりの空洞になっていました。宙づりラッピングと空洞冷凍が合わさってかなりの嵩増しとなっています。
普通の魚なら三枚おろしの後にすき取って捨てる腹骨周辺の身ですが、一応これも腹身ではありトロと言い張るのは間違いとは言えないでしょう。一般的にイメージされる大トロの部分は綺麗に除去はされていますが。こちらも、一度生に解凍されて捌かれた後の余りを再冷凍したものでしょう。
内臓が付着し、ドリップが氷になっている時点であまり食べる気持ちになれなかったのですが、頑張って刺身にしてみました。
一応トロの端っこと言っても通じるくらいの脂肪の網目や筋は確認できます。が、腹骨の除去に内臓部分の掃除、ドリップの処理などかなり大変でした。
それでも、このような身の部分の中まで血で固まったところは除去すると食べるところがなくなりそうでそのままです。
左が大トロ、右が中トロです。食べてみた結果、まだ中トロのほうが食べられました。
中トロのほうはスーパーの閉店間際に半額に買ったまま冷蔵庫に入れ、次の日の夜に食べてガッカリしたマグロとでもいうような、まだ身に覚えのある美味しくなさ・生臭さでした。値段も1,000円ですし、あんまりよくない買い物だったなぁで済ませられそうな生臭さだという感想です。もちろんスーパーで普通にメバチマグロのサクを買ったほうがコスパは良いと断言できますが、諦めのつくマズさでもあります。
対して大トロのほうは、身に覚えのないマズさ。内臓が付着したままドリップとともに冷凍された身は中トロがかわいく思える生臭さで、肉質は鮭のハラスなどと近い部位だけあってゴリゴリしつつも水っぽいのに脂くさい感じです。
【結論】刺身で食えるマグロではない! 投げ売りマグロを買ってはダメ!
アメ横のさまざまな露店で投げ売りされている冷凍マグロ、実際に試してみた結果はいかがだったでしょうか?
結論としてはどれだけ値引きされても買うべきマグロではない、ということになりました。うっかり購入してしまった場合は、刺身にも、ねぎま鍋にも使えないレベルのマグロの身なので、生姜をたくさん入れての大和しぐれ煮や佃煮などがギリギリではないでしょうか。もちろん店員さんおすすめの調理法であるステーキでもおいしいとは思えません。
くれぐれも年末のアメ横のマグロ投げ売りにはご注意を。マグロの目利きに自信がなければ、ご近所のスーパーで買うほうが無難でしょう。年の瀬のゆるい空気で気が大きくなって買ってしまうと、年末年始に家族からの白い目に耐える必要が出てしまうかもしれませんよ……。