コラーゲンを食べるとお肌がプルプルになる。そんなイメージを持っている人は少なくないでしょう。
しかし残念ながら、経口摂取したコラーゲンがそのままお肌を構成する成分となることは、医学的にありえません。その仕組みについて、東京目黒区にある五本木クリニック/五本木クリニック 美容皮膚科の院長・桑満おさむ先生に解説していただきました!
アドバイザー|桑満おさむ
横浜市立大学医学部、1986年卒。横浜市立大学医学部病院 泌尿器科に勤務後、1997年に五本木クリニックを東京都目黒区に開院(泌尿器科・皮膚科・内科・形成外科、美容皮膚科・美容外科)。医療に従事する傍ら、ブログを通じて医療にまつわる疑問やウワサを検証した情報も精力的に発信している。
コラーゲンを食べても、お肌のコラーゲンになるとは限らない
サプリメントなどでコラーゲンを経口摂取、つまり食べることで肌がプルプルになると思っているとしたら、それは間違いです。
コラーゲンが人間にとって大変重要な成分であることは間違いありません。コラーゲンはタンパク質の1つであり、動物の細胞を構成する要素である「細胞外基質」の主成分となっています。ただし、これらのコラーゲンは、体内で合成されたもの。口から摂取したコラーゲンがそのままのかたちで利用されているわけではありません。
コラーゲンが食べ物として(サプリメントも食品に分類されています)体の中に入ると、まずは胃において胃酸で粉々にされます。バラバラになったコラーゲンの成れの果ては、小腸から吸収され、門脈を通って肝臓でさらに代謝されます。そこから肝静脈・下大静脈の中を通る血液中の成分となり、心臓に到達。さらに心臓から送り出され、動脈中を通って体中を駆け巡り、必要とされている臓器の栄養となるのです。この時点で、コラーゲンは影も形もなくなっており、別の物質になってしまっています。
「低分子コラーゲン」も同様です
さすがに「吸収されたコラーゲンがそのままの形で肌を構成する成分になってお肌をプルプルにします」という理論に限界を感じたのか、最近のサプリ業界では「低分子コラーゲン」が主流になっています。曰く、「低分子コラーゲンは吸収性がよく、効果的にグリシン・プロリン・ヒドロキシプロリン・ヒドロキシジリン・アラニンなどのアミノ酸になってそれらを必要とする臓器を構成する原料になります」というもの。つまり「コラーゲンが原料となって、お肌をプルプルにしてしまうのです」という理論です。
が、残念ながら、そううまくはいきません。具体的に説明すると、以下の通り。
- コラーゲン由来のアミノ酸であるヒドロキシジリンやヒドロキシプロリンは、ほとんどがおしっこになって体外に排出される。その他のアミノ酸も肝臓で代謝されて、コラーゲンとは似ても似つかない物質に変化している。
- コラーゲン由来のアミノ酸の一部は、体内でタンパク質を作り上げるための原料になる。が、血管や骨を構成する材料としても使われるので、肌を構成するコラーゲンの合成に利用されるとは限らない。
コラーゲンでお肌プルプル……ではなく、ただのむくみかも?
また、「コラーゲンを摂取した翌日にお肌がプルプル」みたいなイメージを持っている方もおられるでしょうが、人間の体のメカニズムから考えて、これはありえません! 古くなった肌が新しいものに入れ替わることを「ターンオーバー」と呼びますが、この入れ替わりに必要な時間は約4週間とされているからです。
そういえば「フカヒレ」もコラーゲンたっぷりの食材ですね。「フカヒレを食べた翌日はお肌がプルプルになった!」と感じたことがある人もいるかも? でも、フカヒレを使った料理って大量の塩が使用されていたりしますので、それは単に「顔がむくんでいる」と考えたほうがいいですよ……というのは、ちょっと意地悪ですかね。
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もちろん、最初に述べたとおり、コラーゲンが人体にとって重要な成分であることは確かです。人体を構成するタンパク質の3分の1がコラーゲンなんですから。でも、どうせ体内でいったん分解されるものなので、その摂取方法が「コラーゲンサプリ」である必要はありません。コラーゲンを含むタンパク質はお肉やお魚にたっぷり含まれていますので、それらから補給した方が「美味しい」もプラスされて、オトクですよ。
そして、最も意識するべきなのが「栄養のバランス」です。国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報に書かれているように、
- 必須アミノ酸がきちんととれているか (摂取しているアミノ酸のバランス)
- タンパク質を食べ過ぎていないか (タンパク質は、過剰に食べると代謝バランスが崩れる)
に十分注意を払いましょう。言うまでもないことですが、タンパク質以外の栄養もきちんと摂ってくださいね!
〈参考リンク〉
国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「コラーゲンって本当に効果があるの?」
※本コラムは「五本木クリニック院長ブログ」より一部を転載し、加筆したものです。