日本酒の魅力は冷酒だけじゃない! 温度帯を変化させることで、異なる味わいが楽しめるのが日本酒ならではの特徴。秋の夜長は燗あがりする日本酒を揃えて、常温~熱燗をしっぽりやりたい。キャンプにおすすめの銘柄と、おいしい燗のつけ方をガイド!
解説|日本酒大好きライター・馬渕信彦さん
酒蔵巡りと地方のおいしいもの探しをライフワークにするライター。和酒総合研究室「富士虎」の一人として、様々な日本酒イベントを企画。
「日本酒は苦手!」と言う人の多くが、まずい日本酒の記憶を引きずっている。
大丈夫! 最近はおいしい日本酒のほうが圧倒的に多い。
ここ数年で日本酒業界は急激な進化を遂げた。事実、まずい日本酒が少なくなった。しっかりした酒屋さんで買えば、必ずおいしい酒と出会える。
ポイントはその選び方。
冷たいお酒がいいのか、熱燗にして飲みたいのか。また、どんなシチュエーションで飲みたいのか。
ここでは「秋キャンプで熱燗」をテーマに選酒。低温管理が必要な生酒は避け、常温管理できる火入れの酒をチョイスした。キャンプでのBBQにもぴったり寄り添う、究極の食中酒である日本酒。秋の夜長に、しっぽりと!
秋のBBQで飲みたい “燗あがり”する日本酒はコレ!!
“燗あがり”とは、燗にしておいしくなること。数ある日本酒の中から、間違いなく”燗あがり”する極上酒を6本厳選した。 (解説は写真内右から)
奥鹿|山廃・山田錦60・2011・火入れ
3年以上の熟成期間を経てリリースされる、大阪は秋鹿酒造の『奥鹿』ラベル。カラメルのような香ばしさとコクのある旨味。おすすめの温度帯は、常温からぬる燗。45℃くらいまで上げて、キレのある味わいを楽しむのもあり。濃い味の料理にもやさしく寄り添う。
七本鎗|純米・14号
銘酒が揃う滋賀の蔵を代表する七本鎗。このラベルの文字は、かつて北大路魯山人が彫ったもの。美食家にも愛されるお酒だ。「純米14号」は銘酒居酒屋御用達で、バランスに優れた食中酒。柔らかい口当たりながら、しっかりとした旨味も感じる。45℃から少し高めの温度帯でぜひ。
旭菊 大地
無農薬栽培の山田錦(酒米の王様)を使用し、福岡の旭菊酒造が醸す純米酒。冷酒から熱燗まで対応するが、おすすめは46℃~47℃。穏やかな旨味とコクが楽しめ、後味はすっきりキレがいい。気がつけば一升瓶を空けてしまうほど杯が進む、飽きない酒だ。
磐城壽 アカガネ|熟成純米・山廃仕込み
東日本大震災の津波で蔵が全壊。現在は福島県狼江から山形県に蔵を移して酒造りに励む、鈴木酒造店が醸す山廃仕込みの熟成純米酒。穏やかな熟成感と芳醇旨口の味わいは、温度を上げていくと面白く変化していく。温度帯による味わいの変化を楽しみたい一本だ。
長珍|特別純米
愛知県の長珍酒造が醸す特別純米酒。まろやかで落ち着いた味わいは、多くの日本酒好きを魅了。燗にしても41~55℃という幅広い温度帯で抜群のパフォーマンスを発揮し、飲食店から重宝がられる優等生だ。肉にも魚にも寄せられる酒なのでキャンプにも最適。
花巴|山廃純米
進化を遂げる日本酒業界の中でも、非常にユニークな提案をしている奈良の美吉野醸造が醸す酒。米の旨味、独特の酸、熟成による丸みを帯びた酒質は、常温~45℃くらいの燗で楽しんでほしい。花巴の燗を飲んで日本酒のイメージが変わったと言う人も多数。ぜひ!
熱燗の作り方
夜になって気温が下がると、ビールより燗酒で落ち着きたいものだ。いつものキャンプ道具があれば、どんな場所でも極上の燗がつけられる。最低限の道具と手順をマスターして、とっておきのアウトドア燗を振る舞おう。
△① 熱源と鍋、徳利(アルミ水筒でもOK)、温度計を用意すれば準備万端。鍋の水が沸騰したら火を止め、酒を入れた徳利を入れる。
△② 環境によって異なるが、3~5分くらい経つと40~50℃近くまで温度が上がる。温度計があると狙った温度でつけられるので、用意しておきたい。
△③ 好みの温度になったら、猪口に注いでクイッと。間違っても紙コップに……なんて野暮なことはしないで。陶器で飲むアウトドア燗が別格なのだ。
瓶ごと燗もおすすめ!
瓶ごと湯につける瓶燗(4合瓶)は弱火で約20分。4人以上で酒を囲むときは重宝する。覚めた燗も “燗冷ましの酒” として、また一興。
※本記事はグッズ&ライフスタイル誌『fam(ファム) Autumn Issue 2016』から転載、一部修正したものです。