急成長するメタバース領域で新たな挑戦を
――本日はよろしくお願いします。
――今年になりx-climb様はフォートナイト上でのメタバース事業に力を入れられている印象があります。メタバースに注目された経緯についてお伺いしたいです。
飯降様(以下、飯降と表記)「一番大きなきっかけはUEFNのリリースです。このツールにより、3Dの仮想空間がハイクオリティで手軽に作れるようになりました。」
飯降「そのため、今後細分化された多様なメタバースが増加していくと予想しています。これからメタバースが新しいフェーズに入るのであれば、早い段階でしっかりとメタバース事業に取り組んだ方がよい。
飯降「これが、メタバース事業に力を入れはじめた理由です。現在は、主に企業に向けたメタバース開発に取り組んでいます。」
【参考】UEFN (Unreal Editor For Fortnite) とは?
プレスリリースより引用
Epic Gamesが提供する、オンラインゲーム『フォートナイト』上で動作するゲームの製作ツール。
Unreal Engineを基礎とし、UEFNを通してオリジナルの3Dモデルやゲームルールを追加したフォートナイト上のステージを作成することができる。
フォートナイト本来のルールであるTPSとは異なる新たなルールでのゲームプレイも可能であり、作成したステージは公開することで他のプレイヤーも楽しむことが可能となる。
UEFNはメタバース製作のハードルを下げる
――メタバース開発に必要な工数が減ったことは、UEFNの大きな意義ですね。
――そういった技術革新を踏まえて、今後事業として急成長を迎えると予測されたために、現段階から取り組んでいるとのことですね。
飯降「はい。実際、メタバースを使用したプロモーションに挑戦する企業は徐々に増えており、それに追従する企業も増えている段階です。一年後には更に増えていると思います。」
――メタバース制作と聞くと非常に専門性の高い領域であり企業の挑戦は難しい分野だと感じますが、UEFNでは具体的にどのような部分でそうした敷居の高さを解消しているのでしょうか?
飯降「UEFNでは、いわゆる開発の難所が、既にシステムの中に組み込まれています。」
飯降「一般にメタバースを独自に開発しようとした場合、リアルタイムで大量のユーザーが動き回り、ボイスやテキストでコミュニケーションをとり続けます。」
飯降「リアルタイム性を担保するためのシステムは基本的に工数がかかりますし、アクセス数が多ければ遅延やダウンが発生しないようにスケーラブルなサーバー構成を組む必要があります。」
飯降「それに加えてボイスチャット機能を実装するであれば、プラグインを活用しつつも別途開発が必要になります。」
飯降「そうなると土台を作るだけでも数か月かかってしまう。」
――お話を聞いているだけでも、途方もない工数と技術がかかることが想像できます。
飯降「ですが、UEFNではフォートナイト上にある機能であれば全てデフォルトで実装されており、サーバー構築も必要ありません。必要な作業は3Dでどのような世界を表現するか、という点だけです。」
――まさにメタバース時代の新インフラですね。企業・個人を問わず、フォートナイトから派生した独自の世界観を作ることが容易になっているということだと理解しました。
企業が独自にメタバースを所持する未来
――そうしたメタバース事業の拡大の中で、x-climb様が企業向けメタバースに力を入れようと思った理由についてもお伺いしたいです。
飯降「我々は今後それぞれの企業が独自のメタバースを当たり前に持つ時代が来ると予測しています。」
飯降「メタバースを作る手段が手軽になっていくことで、現在のウェブサイトと同じ位置づけにメタバースが置かれる可能性があると考えているんです。」
飯降「例えば採用場面で、メタバースを活用したオフィス見学やAIやアバターを活用して現場を体験できる仕組みを作ることができれば、求職者と企業双方に利益がもたらされます。」
飯降「今までWebサイトではフォローしきれなかった部分を、メタバースを使うことで解決できる部分は非常に多いと思います。」
※x-climb様のメタバース相談窓口
info@x-climb.com / 03-5931-7989
多様な領域での挑戦をメタバースに活かす
VR Nara Parkの画面① ※3DCGです。
――x-climb様は、今回UEFNを用いたメタバース事業への参入を発表しています。
――こちらの発表以前にも、メタバースに関する取り組みは行われていたのでしょうか?
飯降「はい。Oculus Quest(現Meta Quest)がリリースされた直後から取り組んでいるので、約3年ほど取り組んでいます。VR系メタバースの文脈では、主に海外に向けたVRタイトルをリリースしてきました。」
飯降「例えば奈良公園をVR化し、季節や時間帯ごとの情景を楽しめる『VR Nara Park』や、深海や溶岩地帯を舞台に巨大生物との戦闘を楽しめる『VR Guardians』などジャンルを問わずVRゲームをリリースしています。」
――VRゲームのタイトルもリリースしているのですね。
飯降「そうですね。弊社は元々『DearGamers』というゲーム特化系の縦型ショート動画SNSを開発していたので、ゲーム領域に関しては以前より注目していました。」
VR Nara Parkの画面② ※3DCGです。
――x-climb様はVR・メタバース領域以外にも開発のご経験があるのですね。
――3DCGも、現実世界とほぼ差が無く、クオリティの高さを感じます。
飯降「はい。ちなみに、『DearGamers』は主にインドネシアで流行しているプロダクトです。東南アジアは若い世代多く、ゲーム熱が非常に高いゲーム大国です。」
飯降「ただ物価水準の違いなどもあり日本や中国に比べてスマートフォンのスペックが低かったりして世界的に流行しているゲームが遊べない場合が多々あるんです。」
飯降「そのためインドネシアではコンセプトが類似して必要スペックの低下した独自のゲームが流行しており、そうした若者たちのコミュニティ形成の場として弊社のアプリが使われている形です。」
――海外に向けたコンテンツ展開が多いのは意外でした。今回のメタバースはPC向けメタバースですし、挑戦の幅が非常に広いことも印象的です。
メタバース事業支援|企画立案から開発まで一気通貫でサポート
――x-climb様は企業向けメタバース構築のご相談も行っていると伺っております。こうしたメタバース事業におけるx-climb様の強みについてお伺いしたいと思います。
飯降「上流工程からご一緒に進めていけることが強みだと思います。」
飯降「一般的なベンダーやシステム屋では依頼内容に応じてプロダクトを作ることが多いと思いますが、我々は企画段階から戦略立案や具体的なプロダクトの内容に至るまで支援しています。」
飯降「メタバース事業に関しても、目的に応じた最適なメタバースを考えつつ、そのメタバースが持つ費用対効果に至るまでディスカッションした上で企画を作成しています。」
――メタバースに関する知識のない顧客でも、しっかりと戦略を持ってメタバース事業に挑戦できるよう支援されているということですね。
――メタバース事業の相談をされている中で、メタバース領域で挑戦するために重要なことは何だと考えておりますか?
飯降「目的意識を明確化して、そこに特化したサービスを作ることが重要です。」
飯降「販促や企業ブランディング、採用などメタバースには様々な用途が想定できますが、目的に応じて必要な機能などは大きく異なります。複数の目的を設定する、あるいは副次的な効果を狙って要素を追加してしまうと、まとまりの無く使いづらいサービスになってしまうことが多々あります。」
飯降「自社の技術を活かしたい気持ちや新しい挑戦をしたいという気持ちで新機能のご提案をいただくこともあり、非常に難しい問題だと思います。」
――なんとなく覚えがあります。特にメタバースは取り組んでいて非常に楽しい領域なので新しい要素はどんどん追加したいと考えてしまいそうです。
――相談の中でもそのようなポイントを意識してディスカッションをされているのでしょうか。
飯降「そうですね。また相談する中で、現状ではメタバースに挑戦するべきではないと判断するケースもありますし、場合によってはメタバースを勧めないケースもあります。」
――案件を取得することではなく、クライアントにとっての最適解を一緒に探していく形での相談をしている印象です。
飯降「しっかりとこちらの考えを伝えることが信頼関係に繋がると考えているので、より簡単な方法、良い方法があれば積極的に伝えることは心がけています。」
飯降「企業様にとって利益となることを伝え続けることで今後また別の形でご相談していただいたり、継続的な関係性の構築に繋がるので、結果的に利益になると考えています。」
――新規事業であり、企業間で知識量に大きく差があるからこそ、持っている情報を最大限生かすことが信頼関係に繋がり、今後思わぬ利益に繋がる、ということですね。非常に重要な考え方だと思います。
飯降「弊社ではメタバースに限定されず、AIに関する相談にも対応させていただいています。メタバースやAIが気になっている企業様は、ぜひ相談していただきたいです。」
※x-climb様のメタバース相談窓口
info@x-climb.com / 03-5931-7989
最先端技術はどのようにエンタメの現場を変えるか
――メタバースに限らず、最近では生成AIなどが台頭しており、今後エンタメの形が大きく変わる可能性があると考えています。
――x-climb様はこうした最新技術がゲームやメタバース領域にどのような影響を与えると考えていますか?
飯降「最先端技術の流行により、マイクロスタジオのような、小規模なゲーム会社・個人規模のチームが今後急成長していくと考えています。」
飯降「2Dデザインに限らず、3Dデザインに関しても生成AIは一定の成果を生み出しています。BGMやボイスの領域でも一定以上の品質のものを生み出せるようになっているので、ゲーム開発に必要なコストはかなり減少しています。」
飯降「現にインディーズゲームの領域では既にスモールチームやマイクロスタジオが増加し、良質なゲームが次々にリリースされています。アイデアや企画を具現化するためのコストは大幅に下がっているといえるでしょう。」
――x-climb様が先日発表されたホラーゲーム『Shark Dread』でも生成AIが用いられていると伺っております。こちらではどのような形でAIを用いられたのでしょうか。
飯降「『Shark Dread』ではアイデアを出すために生成AIを活用しました。」
飯降「具体的にはゲーム内に登場するサメのデザインパターンを生成AIで出力し、恐怖心を煽りつつかっこいいサメのデザインを分析しました。自分たちでは想像していなかったパターンが生成されるので、参考資料として最適だと思います。」
――作り手の価値観に囚われないクリエイティブが可能となる、ということですね。
飯降「そうですね。怖さが増す眼球の色合いや歯並びだったり、現実離れしたデザインも難なくこなしてくれるので助かります。そうしたパターンを参考資料とすることで我々のオリジナリティを発揮しつつ、同時にプレイヤーにインパクトを与えやすいデザインに繋がっています。」
――AIに完全に任せるのではなく、そこを起点にクリエイティビティを発揮することで、より良いデザインを生むことが出来るということですね。
飯降「そうですね。アイデアや着想面で生成AIが果たす役割は非常に大きいと思います。将来的にAIが生み出したアイデアや着想を人間が手作業で落とし込んでいくようなクリエイティブの形が生まれるかもしれないですね。」
飯降「ただ、生成AIは進化している一方で、どうしてもまだ物足りない部分があります。特に3Dアニメーションの領域ではまだ力不足な面が目立ちますし、進化が想像より遅い印象があります。その領域の作品を小規模なチームで開発するにはまだハードルがあると思います。とは言え、最近のPCGの進化のように、レベルデザインやアニメーション生成も今後1〜2年で急激に変わると予測しています。今後もこうした変化に対応しつつ、最先端技術を活用したコンテンツ開発や企業支援に取り組んでいきたいです。」
――本日はありがとうございました。
※x-climb様のメタバース相談窓口
info@x-climb.com / 03-5931-7989
x-climb様
「デジタル技術で幸せの総量を増やす」ことを事業内容とする企業。
世界に誇れる黒子として、人々に感動を与えるためにデジタル領域での事業を展開している。
ゲーム特化動画サービス『DearGamers』や企業向け縦型動画サービス『Raylee』をはじめとしたアプリケーション開発の他、VRタイトルのリリースやメタバース事業に挑戦している。
2023年には「フォートナイト×企業向けメタバース」として、人気オンラインゲーム『フォートナイト』のメタバースプラットフォーム上のコンテンツ制作にも挑戦している。
飯降 敦史 様
海運業界にてプロジェクトマネジメントを学び、2013年にx-climb社を創業。
システム開発、ITコンサルで事業を伸ばす傍ら、2017年から国産チャットボットchamoの代表取締役を兼任。
翌2018年、独自のマーケティング戦略で4500社導入の国内No.1チャットボットに育て上げ、SoftBankグループに株式譲渡。
2021年には、広済堂HD(7868)と事業譲渡のM&Aを実施。
現在は世界に誇れる黒子企業を創るべく、x-climb社で日々邁進している。経営者ときどきゲーマー。