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【レビュー】夜のトランスジェンダーと孤独な少女、2つの魂が求め合う時―『ミッドナイトスワン』


ため息が出るほど切なく美しい映画の仲間に、また新しい1本が加わった。


かねてより憑依型俳優としての評価も高い草彅剛


本作では草彅剛という存在自体を悠々と超えて、トランスジェンダーの主人公・凪沙の悲しみや葛藤、その存在感・生命の全てを全身から放出する。




凪沙は、母親の育児放棄で孤独を味わう親戚の少女・一果との同居を余儀なくされる。


トランスジェンダーであることを活かして夜の仕事で生活する凪沙と、凪沙の家に転居してすがるようにバレエ教室に通い始める一果。


同居生活の中で衝突とすれ違いを繰り返していた2人の孤独な魂、それらが次第に寄り添い重なる時、その関係性に大きな変化が訪れる。



そこには、チャップリン監督作『ライムライト』テータム・オニール助演の『ペーパームーン』リュック・ベッソン監督作『レオン』といった名作をも彷彿させ、大人と少女の不器用で純粋な真の心の邂逅が描かれる。


凪沙が自身に芽生えた信念に従って命を燃やし始める様も、一果が光輝く未来に向けてのびのびと踊る姿も、見た目こそ違えど、どちらも心が張り裂けそうなほどに美しい。


そんな2人がバレエを通して繋がる短いひとときのシーンと、ほとんど笑わない凪沙が一果の関係で思わず吹き出してしまうシーンは中でも特に印象深い。



それは稀に見る映画の宝物のようなシーンで、いつまでも余韻が消えなかった。


悲しいことは全て美しいこととは限らない。


だけど、もしかしたら美しいことは全て悲しいことなのかもしれない。


そう思えてしまうほど、映画に心が圧倒された。


 


『ミッドナイトスワン』 あらすじ


故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。


■出演:草彅剛 服部樹咲 田中俊介 吉村界人 他

■監督/脚本:内田英治

■配給:キノフィルムズ


©2020 Midnight Swan Film Partners

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