
イオンネクストは10月22日、東京都八王子市でネットスーパー「グリーンビーンズ」の新たな物流拠点「八王子CFC」の稼働と、マルチモーダルAIを活用した次世代の買い物サービスに関する発表会を開催した。冷蔵庫にある食材を撮影するだけでAIが献立を提案し、必要な商品の注文から配送予約までサポートする新機能の開発を進めており、2027年初めのサービス開始を目指している。
「グリーンビーンズ」は、2023年7月にサービスを開始したイオンのネットスーパー。開始から約3年で累計利用者数は約120万人に達し、現在は東京都内の23区22市をはじめ、千葉、神奈川、埼玉、茨城の計95市町村にサービスエリアを拡大している。

発表会に登壇したイオンネクストの野沢智博社長は、毎日の食事の準備や買い物に伴う負担を指摘。紹介された調査では、献立を考えることにストレスを感じている人が約半数に上り、生活者が1年間に買い物に費やす時間は約158時間、運ぶ荷物の総重量は約780kgに及ぶという。

こうした課題に対して同社が開発を進めているのが、Google Cloudの技術を活用した「AIコンシェルジュ」である。従来のネットスーパーが主に買った商品を自宅まで運ぶ負担を軽減してきたのに対し、新機能では「何を作るか考える」「必要な商品を探す」といった買い物前の手間も減らすことを目指している。

発表会では、4人家族の夕食を想定したデモンストレーション映像を公開。利用者が豚こま切れ肉とジャガイモの写真を撮影してAIに相談すると、画像から食材を認識し、家族の好みや旬の食材、特売情報などをもとにカレーや肉じゃがなどの献立を提案した。
利用者がカレーを選ぶと、自宅にある食材を除いた不足分を買い物カートに追加。さらに福神漬けなどの関連商品を提案するほか、過去の購入履歴から牛乳や卵といった買い忘れやすい日用品もおすすめする仕組みである。

配送日時の選択や最終的な注文確認まで音声でやり取りできる点も特徴だ。野沢社長は、買い物の際に商品を一つずつ検索してカートに入れる手間の大きさに触れ、AIによって買い物全体をより簡単にする考えを示した。ただし、新機能は現在も開発・検証段階にあり、詳細は今後変更される可能性がある。

一方、こうした新たな買い物体験を物流面から支えるのが、今回稼働する「八王子CFC」だ。千葉県の誉田CFCに続く2拠点目で、敷地面積約5万4,000平方メートル、延べ床面積約4万平方メートルを有する。中央自動車道の八王子インターチェンジから約1.5kmに位置し、東京西部の多摩地域や神奈川県方面への配送効率を高める役割を担う。

施設内にはAIとロボティクスを活用した自動化設備を導入。特に注目されるのが、冷凍食品の保管から取り出しまでを自動化する「オートフリーザー」である。従来の誉田CFCと比較して、冷凍商品の入荷処理スピードは2.7倍に向上。保管面積を約50%削減しながら、在庫量を1.5倍に増やすことが可能になったという。
さらに、商品を取り出して買い物袋に入れるアーム型ロボットも導入し、袋詰め作業の自動化を推進。従業員の身体的な負担を減らすとともに、生産性の向上を目指す。新拠点では、誉田CFCと比べて約15%少ない人員で運営できる体制を整えているという。

利用者にとってのメリットも大きい。八王子CFCの稼働によって東京西部や神奈川県方面への配送距離が短縮され、吉祥寺周辺など一部のエリアでは、注文した商品をその日のうちに受け取れる当日配送への対応が見込まれている。

商品面でも、独自の温度管理を生かした鮮度保証付きの生鮮食品や、冷蔵で届ける精米したての米、ラベルをはがす手間のない飲料、大容量商品など、ネットスーパーならではのラインアップを強化していく方針だ。
発表会後には、報道関係者を対象に八王子CFCの施設見学も実施された。実際に施設内を見学し、冷凍食品の保管から取り出しまでを自動化する「オートフリーザー」や、商品のピッキング・袋詰め作業を担うロボットなど、最新の物流設備について説明を受けた。

普段、利用者が目にすることのないネットスーパーの物流現場。今回の見学では、食品の温度管理から商品の仕分け、出荷準備までを支える自動化技術が、作業効率の向上や従業員の負担軽減にどのようにつながるのかを知る機会となった。
