藤ヶ谷太輔演じる主人公の人生を賭けた逃避劇に共感と反感が渦まく“現実逃避型”エンタテインメント『そして僕は途方に暮れる』が大ヒット公開中だ。平凡なフリーター・菅原裕一(藤ヶ谷)が、些細なことからありとあらゆる関係性を断ち切っていく様を描く。裕一と5年間同棲、彼の逃避行のきっかけを作る恋人・里美役の前田敦子にインタビューを行なった。
―絶賛を浴びたオリジナルの舞台が、脚本・監督・三浦大輔&主演・藤ヶ谷太輔の再タッグで映画化されましたが、映画になると聞いた時はいかがでしたか?
舞台からの映画化はなかなかないなと思いました。元々の舞台は挑戦的な内容で、三浦さんは当時「映画と舞台の狭間のものを作りたい」と言われていました。映像で撮るとどうなるか、いろいろ意識されていた気がするので、そういう部分では自然な流れはある気がしました。忘れていた頃にお話がきたので、映画になるんだってうれしかったですね。
―舞台版は、通常の舞台とは異なる表現方法をされていたのですよね。
声を張らない舞台だったんです。マイクを付けて、日常的な世界でお話をしている感覚で、吐息すら響き渡る作品にしたいと言われていました。だから舞台を観ている方たちも、グッと力が入る内容だったかなと思うんです。そのせいか舞台のほうがシリアスだったなと思って、今回影像になった時、テイストが少しポップになっていて観ていて楽しかったです。
―逃避行に目が離せない、エンターテイメント感が増しましたよね。
そうですね。どんどんスターが出てくると思って(笑)。お父さんやお母さんが出てくるあたりになってくると、すごすぎて面白かったですね。次はどんな人が出てくるんだろうって、わたし自身も楽しめました!
―前田さんは主人公が逃げていく最初のきっかけを作る恋人の役柄でしたが、どう演じましたか?
監督が望んでいたことは、「すごく優しい人であってほしい」ということでした。それでいて逃げていくきっかけを作らなければならなかたので、すごく難しいなと思ったのですが、お互いに優しいからあまり話さない感じなのかなとは思いました。たぶんふたりとも根は優しい、いい人じゃないですか。だから言いたいことも言えないまま、気づいたら5年も経っていた感じかなと。そういうカップルも世の中にたくさんいるかなと想像しました。腐れ縁みたいな、向き合わないで長く続けている人たちです。
―優しい人を演じるために、どういう演出がありましたか?
しゃべり方を柔らかくしてほしいと言われました。普段のわたしはちょっと言葉を捨て勝ちなので、いい放つタイプなのかなと自分でも思っているのですが、特に慣れ親しんだ人の前だと、そうなりがちだなと思う(笑)。なので監督には、舞台の時からもう少し優しくと指摘されました。そうすることで、普段言わない人の怖さは出てくると思います。
―ちなみに藤ヶ谷さん演じる主人公・裕一は、スマホの電源を切って逃避しますが、そう思うことは?
スマホから遠退きたいことは、要所要所でありますかね。仕事の連絡ばかりしていると、子育てしていることもあり、友達との連絡がおざなりになってしまうんです。スマホを子どもに渡す瞬間もたくさんあるので、そうするとわたしの時間が限られてくるんです。友達が順番的に遅くなり、返すのが重いなと思うこともありますね。
―また、裕一の逃げるポイントについて「共感する」か「反感を抱く」かについてはいかがですか?
逃げてほしくないですよね(笑)。裕一のように言葉にしてくれない人はちょっと難しいかも…。黙ってしまう人は苦手です。今何を思っているのかだけでも教えてほしいですね。些細なことすら言葉に出来ない相手は、どうしていいのかわからないですよね。
―最後に映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いいたします。
基本的には人生の試練みたいなことの連続を描いているのですが、裕一を盾にして観てみると、面白く観えてくると思います。世の中の人間関係という困難に立ち向かう、主人公のアドベンチャー感はあると思います。人間冒険映画として楽しんで観てください(笑)。
大ヒット公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C) 2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会