日常にモヤモヤしたものを抱えていたり、どこか居心地の悪さを感じているそこのあなた、すぐにこの映画を観に行こう!
この映画は女性のタブーに誠意あるリアルさで、そして時にコミカルに切り込みながら、共感に溢れたパーソナルな物語を提供してくれる。
観終わった時にはきっと登場人物たちが愛しくてたまらなくなるはずだ。
主人公は34歳の独身女性ブリジット。
大学を中退し、レストランのウェイトレスをしながら夏の短期間の子守りの仕事を探している。
彼女は結婚や仕事のことで親や周囲からの同情的な視線を感じていて、自分の日常になんだかしっくりきていない。
よくわからない関係の男性との恋愛もままならず、望まない妊娠までしてしまう。
そんなブリジットが出会うのが、子守りを任された6歳の少女フランシスとその両親のレズビアンカップルの2人だ。
大人と呼ぶには欠陥が多すぎるけどどこか憎めないブリジットが、6歳にしてはませたフランシスに振り回されながら、その両親が抱える悩みを垣間見たりもしていく。
一言で言えば子供との出会いを通した大人の成長譚なのだが、この映画の最大の魅力はブリジットの等身大のダメっぷりとそのリアルでさりげないストーリーかもしれない。
大げさに何かを印象付けるシーンもなければ、押し付けがましい価値観とも無縁だ。
まるで生意気な天使のようなフランシスと交流してるうちに、次第にブリジットの中で何かがほぐれていく。
その描き方が何とも愛くるしい。
避妊、生理、中絶。女性のタブーとされていた事柄を当然にそこにある日常のように淡々としかし直接的に描く。
それは、まるで自分とすごく打ち解けている長年の女友達と何気なく会話したり、何かを共有して笑ったりする経験にも似ていて、実際「こんな映画ありそうでなかなかないぞ?」と途中で思ったりした。
グレタ・ガーヴィグ監督作『レディ・バード』での女性の描き方に触発された主演のケリー・オサリヴァンが脚本を書き上げ、私生活のパートナーでもあるアレックス・トンプソンが監督を務めた。
彼女は20代の頃に子守りの仕事をしていたことがあり、また30代で中絶を経験している。
彼女は中絶がタブーであることにうんざりしていて、絶妙なニュアンスで時には面白くさえ描けると考えたらしい。
映画を観れば分かるが、いくつかのタブーへの距離の取り方(詰め方?)がむしろとても誠実に感じるのは、ケリーの脚本が当事者である女性の立場や視点にとても正直だったからかもしれない。
フランシス役の少女を見ているだけでも面白いのに、滑稽な「少女のような大人」の迷走と成長の物語からはもっと目が離せなくなる。
自分の経験や思いに正直であることや、ささやかな人との出会いが自分を変え得ること。
パッとしない日常だとしても生きてること自体はなかなか捨てたもんじゃない。
映画が終わる頃にはブリジットやフランシスだけじゃなく、なんだか明日からの自分のことも少し好きになれるような気がした。
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