建物の老朽化や衛生意識の高まりなどを背景に、一定の需要が続くビルメンテナンス業界。一方、現場では人手不足や従事者の高齢化が長年の課題となっている。
こうしたなか、清掃を専門サービスとして捉え直し、フランチャイズ(FC)方式を取り入れながら事業を展開しているのが株式会社アクアだ。
清掃業界が抱える人材不足に、FCという仕組みはどこまで対応できるのか。ビルクリーニング事業「Builds」を展開する同社代表取締役の金子正裕氏に、現場の課題や今後のビルメンテナンス事業について聞いた。
9割近い企業が悩む「人が集まらない」という現実

社会インフラを支えるビルメンテナンスや清掃業だが、人材確保は大きな課題となっている。
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の調査では、業務上の悩みとして「現場従業員が集まりにくい」と回答する企業が9割近くに上る。「現場従業員の若返りが図りにくい」という回答も多く、現場の高齢化と世代交代への不安が続いている。
また、国勢調査でもビルクリーニングに従事する人の高齢化が確認されている。
清掃は建物を利用するうえで欠かせない仕事である一方、「重労働」「賃金が低い」といったイメージを持たれやすく、若い人材の確保が難しいという課題もある。
仕事そのものがなくなるわけではないにもかかわらず、それを担う人が不足する。
人材の確保だけでなく、現場を担う人が長く働ける環境をどう整えるかが、業界全体の課題になっている。
単なる作業ではない――「品質」をどうそろえるか

こうした課題に対し、アクアではビルクリーニング事業「Builds」をFC方式で展開している。
自社だけで全国各地に人材を配置するのではなく、各地域のFCオーナーと連携しながら現場を広げていく考え方だ。
同社によれば、加盟時には研修を行い、その後も定期的な品質確認を実施しているという。清掃技術だけではなく、顧客との対話なども含めた「清掃員品質」を重視していると金子氏は話す。
また、本部による営業代行や、一定の条件に基づく売上保証などの仕組みも設けているという。現場を担うオーナーが営業活動に多くの時間を割くのではなく、清掃業務や顧客対応に集中できる環境をつくる狙いがある。
一方、FCで拠点を増やすほど難しくなるのが品質管理だ。オフィス、商業施設、マンションなど、建物によって設備や汚れ方は異なる。築年数や利用状況によっても、必要な清掃方法は変わる。
一律のマニュアルだけですべての現場に対応できるわけではない。
加盟店が増えたとしても、どの地域でも一定の品質を維持できるのか。継続的な研修や本部との情報共有が重要になる。
FCは人手不足の解決策になるのか
FCという仕組みには、本部がすべての従業員を直接雇用することなく、サービス提供地域を広げられるという特徴がある。
一方、清掃業界全体の人手不足そのものが解消されるわけではない。
加盟オーナーが現場スタッフを確保できなければ、人材不足という問題は各地域で残る。
そのため、単にFC店舗を増やすだけではなく、「清掃の仕事を選びたい」と思う人をどう増やすのかという課題にも向き合う必要がある。
金子氏は、清掃を単なる作業としてではなく、建物の環境を維持する専門サービスとして位置づけることが重要だと話す。建物の美観を維持するだけではなく、利用者が安全に過ごせる環境を支える仕事として、現場の価値そのものを見直していくという考え方だ。
ただし、仕事の価値を打ち出すだけで待遇や働き方の問題が解決するわけではない。賃金や労働時間、キャリア形成なども含め、実際に働く人にとって魅力のある仕事にできるかが問われる。
ロボットと人が一緒に清掃する時代へ
同社では、特殊技術を使った清掃や、清掃ロボットと人による作業を組み合わせる取り組みも進めているという。
人手不足が続く清掃業界では、テクノロジーによる省人化は避けて通れないテーマになっている。広い床面など、一定の作業を繰り返す場所では、ロボットを活用できる場面もある。
一方で、細かな汚れへの対応や、建物の状況に応じた判断、利用者への配慮など、人でなければ対応しにくい仕事も残る。すべてを機械へ置き換えるのではなく、人と機械がそれぞれ得意な業務を分担する形が現実的だろう。
その結果、清掃スタッフに求められる役割も、単純な作業だけではなく、機器の管理や現場判断などへ広がっていく可能性がある。
清掃業の「人が集まらない」をどう変えるか
金子氏は「できるかどうかではなく、やると決めるかどうかが未来を変える」と話す。同社がFC展開や新しい清掃技術の導入を進める背景には、人材不足が続くなかでも清掃サービスを維持していく必要があるという問題意識がある。もっとも、FC化やロボット導入だけで業界全体の課題が解決するわけではない。加盟店が増えれば品質管理の仕組みが必要となり、ロボットの導入には設備投資も伴う。
何より、現場で働く人が適切な評価を受け、長く働ける環境を整えなければ、人材不足は繰り返される。
清掃を「誰でもできる仕事」と捉えるのか、それとも建物の衛生や安全を支える専門サービスとして位置づけるのか。人材育成、FCによる事業展開、テクノロジーの活用をどう組み合わせるかが、今後のビルメンテナンス業界にとって一つの論点となりそうだ。

【取材協力】
株式会社アクア
代表取締役 金子正裕
https://builds-aqx.com/
