地域のお祭りや縁日は、子どもから高齢者まで世代を超えて人が集まる機会の一つだ。
一方、地域の担い手不足や高齢化などを背景に、従来と同じ形で祭りを維持することが難しくなっている地域もある。企画や準備、運営には多くの人手が必要で、自治会や町内会だけでは負担を抱えきれないケースもある。
そうしたなか、祭りや縁日の運営そのものを民間事業として請け負う取り組みも出てきた。
株式会社駄菓子屋ROCKは、デコトラを使った移動型の駄菓子屋を起点に、縁日や盆踊りなどの企画・運営を行っている。同社代表の谷口齋隆氏に、地域イベントを事業として継続するうえでの課題について聞いた。
「出店する側」から「祭りをつくる側」へ
駄菓子屋ROCKでは、デコトラ車両を使い、駄菓子販売のほか、ポン菓子や綿菓子、射的など、昔ながらの縁日を思わせるコンテンツを提供している。
谷口氏によれば、当初は駄菓子屋としての活動が中心だったが、依頼内容が広がるなかで、獅子舞や神輿、盆踊り、和太鼓、音楽ライブなどを組み合わせたイベントにも対応するようになったという。
一般的なイベント出店では、店舗側が主催者に出店料を支払い、商品販売によって収益を得る形も多い。
これに対し同社では、企業や自治体などから企画・運営の依頼を受け、その対価として出張料や運営費を得る形を軸にしているという。
つまり、「商品を売る露店」というより、祭りの一部または全体を請け負うイベント事業者としての側面を強めている。地域側にとって、祭りを実施したくても人手やノウハウが足りない場合、外部事業者を活用することは一つの選択肢になる。
一方で、地域行事をどこまで外部へ委託するのかという問題もある。
祭りは単なるイベントではなく、地域住民が準備や運営に参加すること自体がコミュニティ形成につながってきた側面もある。効率化を進めることで、地域住民が関わる機会そのものが減ってしまえば、本来の役割が薄れる可能性もある。
「人が集まる場」をビジネスとして維持できるか

地域のお祭りには、収益性だけでは評価しにくい役割がある。
子ども同士が遊んだり、普段接点のない住民同士が顔を合わせたりする場になることも、その一つだ。
駄菓子屋もかつては、子どもが家や学校以外で大人や地域の人と接する場所の一つだった。
谷口氏は、こうした場を現在の社会に合わせた形で残したいと話す。
ただし、継続には費用がかかる。車両や設備の維持、スタッフの確保、資材の運搬、安全管理など、イベントを開催するたびに一定のコストが発生する。社会的な意義があるからといって、赤字のまま続けることはできない。
そこで重要になるのが、自治体や地域団体だけでなく、企業イベントや商業施設なども含め、複数の収益源を持つことだ。
「祭りを残す」という文化的な目的と、事業として採算を取ることをどう両立するか。地域イベントに関わる民間事業者にとって大きなテーマとなる。
代表者の「熱量」をどう組織へ引き継ぐか
同社は2024年に法人化した。谷口氏によれば、活動そのものはそれ以前から続けており、2026年で11年目になるという。活動を始めた背景には、谷口氏自身が以前から抱いていた「駄菓子屋を開きたい」という思いがあった。
こうした創業者個人の経験やキャラクターは、小規模な事業を立ち上げるうえでは大きな推進力になる。
一方、事業が拡大すると、代表者本人だけですべての現場に立つことは難しくなる。
同社ではフランチャイズによる展開も進めているというが、拠点が増えるほど、イベントの運営方法や安全管理、接客などを一定水準に保つ仕組みが必要になる。特に祭りや縁日のようなサービスでは、マニュアルだけでは再現しにくい部分もある。参加者への声掛けや場の盛り上げ方など、人によって印象が大きく変わるためだ。
個人の熱量を残しながら、それを組織として再現できる形にする。これは同社に限らず、創業者の個性を強みにする小規模企業が成長するときに直面しやすい問題でもある。
日本の「縁日」は海外でも通用するのか
駄菓子屋ROCKは国内だけでなく、海外で日本の祭り文化を紹介する活動にも取り組んでいる。
同社によれば、2026年4月には米国・ボストンで開催された「Japan Festival Boston」に参加したという。
縁日や和太鼓、盆踊りなど、日本ではなじみのある文化でも、海外では「日本文化を体験するイベント」として異なる受け止められ方をする可能性がある。
その一方、国内で使っている祭りの仕組みをそのまま海外へ持ち込めるわけではない。
資材の輸送や現地調達、スタッフの確保、会場規則への対応など、海外ならではのコストも生じる。
また、日本の地域社会に根ざしてきた祭りが持つ意味と、海外で開催される日本文化イベントとしての意味は必ずしも同じではない。国内の伝統文化を海外へ紹介することと、それを継続的な事業として成立させることは分けて考える必要がある。
祭りを「地域インフラ」にできるのか
人口構造や地域コミュニティのあり方が変化するなか、かつて地域住民だけで担っていた行事を、同じ方法で維持し続けることは難しくなっている。
そのため、企画会社や民間事業者など外部の力を借りながら祭りを残す方法は、今後さらに増える可能性がある。
ただし、外部事業者がすべてを担えばいいわけでもない。祭りを開催すること自体が目的なのか、それとも住民同士の関係をつくることが目的なのかによって、適切な運営方法も変わる。
駄菓子屋ROCKの取り組みは、従来は地域住民が手弁当で担ってきた祭りや縁日を、民間の事業として提供する一つのケースといえる。
地域文化を守ることと、採算の取れるビジネスにすること。その二つをどこまで両立できるかが、こうした「祭りの外部化」が定着するかを左右することになりそうだ。

【取材協力】
株式会社駄菓子屋ROCK
代表取締役 谷口齋隆
https://dagashiyarock.com
