脱腸は、専門的には鼠径(そけい)ヘルニアと呼ぶ。
小さい子どもだけではなく、大人も発症する。
よくある病気のひとつだが、治す方法は手術しかない。
しかし、放置している方が多いのも事実だ。
今回は大人の脱腸は手術すべきなのか、それとも放置しておいても良いのか、などについて解説する。
鼠径ヘルニアとは?
そもそも鼠径ヘルニアとは、腸がお腹の中から外に出てくる疾患だ。
両足の付け根が、少し膨らんだり、また元通りになると、鼠径ヘルニアが疑われる。
また、男性に圧倒的に多いのも特徴のひとつだ。
日本人の男性の3人に1人は、発症すると言われている。
鼠径ヘルニアが発症する原因としては、加齢や体質によって筋肉が衰えることが考えられている。
また、太りすぎによりお腹の圧が高いのも原因のひとつだ。
そして、便秘などでいきみすぎて、腹圧がかかるのも誘因とされる。
治療は手術のみ
大人の鼠径ヘルニアを治すには、手術以外の方法では一般的に不可能だ。
ヘルニアを治す体操なども紹介されていたりするが、基本的に効果がない。
また、ヘルニアバンドといって、ヘルニアで膨らんでいる部位を押さえつけるベルトもあるが、これも治療にはならない。
単に腸が出てこないように、外から押さえつけるだけだからだ。
また、無理に押さえつけると、ヘルニアの中身は腸であることが多いため、腸がはさまれてしまう場合があり注意が必要だ。
放置すると命に関わることも
鼠径ヘルニアの代表的な症状は、鼠蹊部のふくらみ、違和感、痛みなどだ。
これらの症状だけだと、日常生活がやや送りにくくなるだけで命に関わる状態ではない。
つまり、腸が出てきてまた引っ込むだけでは、大きな問題とはならない。
しかし、数%の確率で、腸が外に出たままお腹の中に戻らなくなる場合がある。
専門用語では、嵌頓(かんとん)状態と呼ぶ。
この場合、腸が周りの組織から締めつけられることで、少しずつ腸が腐っていく可能性が高い。
症状は、強い痛み、赤く腫れる、などが特徴的だ。
そして基本的には、緊急手術をして嵌頓を解除しなければならない。
すでに腸が腐っているケースでは、腸を切らなくてはならない。
鼠径ヘルニアを疑ったら病院へ
鼠径ヘルニアを発症した場合、速やかに医療機関を受診して欲しい。
基本的には鼠蹊ヘルニアは手術をして治すべき疾患であるが、あまりにも体が弱く手術が耐えられない場合もある。
最終的には、医師に今後どのように対応していくかを相談して欲しい。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。