医師になる理由は、人それぞれだ。
また、どのような思いで医師になるかもその人の自由だ。
今回は、時代と共に変化する医師の志望理由について解説する。
昔は純粋に人を助けるために…
医師を国として養成するために日本に医学部ができたのは、江戸時代とも言われる。
それから第二次世界大戦が終わるまで、少なくとも医師になる人は、人助けをしたい、人の命を守りたい、救いたいという思いが強かったと思う。
大学病院などでは、昔の医学生が書いた日記などが保管されている。
これを読む限りでは、過去の医学生は、お互い切磋琢磨し合いながら必死に勉強していたように読み取れる。
戦後は社会的ステータスに
戦後は高度経済成長期に伴い、受験戦争も加速していった。
時代が流れるにつれて、偏差値が一番高い学部が医学部となった。
そして医学部に入ることが、ひとつの社会的ステータスとなっていった。
受験勉強ができる成績優秀者はこぞって医学部を受験したため、より一層医学部の偏差値が上がっていった。
バブル崩壊後は安定を求めて
バブルが崩壊した後は、景気自体が低迷した。
そして、サラリーマン達はリストラや給与面での低迷化などにより、困難な時代を迎えることになった。
その影響もあり、資格があれば安定した生活を送れるとの認識が広まってきたのだ。
中でも、医師は社会的にも給与面でも満足できるとして、医学部人気に拍車がかかっていった。
より自由な選択へ
その一方で、医師の生活は多忙であり、命を絶つ人も出てきた。
そんな中、時代の流れとともに、仕事中心の社会からプライベートも充実させる社会へと変化していった。
医学生は医学部を出た後、基本的には自分が進みたい科を自分の意思で選べる。
特に最近では、忙しい科よりも、ある程度のんびりと時間に余裕がある科を選ぶ医師が急増してきている。
一昔前ならば、忙しい科でもやりがいを求めて人気があったが、今はまったくそんな風潮はない。
また、高額な給与を狙いつつプライベートも充実させられる美容医療など、自由診療の分野も発展してきている。
最近では医学部を卒業して、研修期間2年間を終えた後すぐに、この世界に飛び込む医師も少なくないのだ。
価値観の多様化
時代の流れとともに、価値観は変わる。
今回は、医学部に入る理由や医師の働き方の選択に注目して解説した。
今後、どのように時代と医学部の関係が変わっていくのか楽しみだ。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。