starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

【不朽の名作】三谷幸喜脚本の陪審員コメディー「12人の優しい日本人」


 1月から放送されているNHK大河ドラマ『真田丸』。この作品の脚本を担当しているのは脚本家の三谷幸喜氏だ。脚本だけに留まらず、映画監督や時々俳優としても登場する同氏だが、その原点は舞台にある。今回はその舞台脚本により近い、三谷氏脚本の映画『12人の優しい日本人』(1991年公開)を紹介する。

 同作は1954年にアメリカの舞台劇として制作され、後に映画化やドラマ化もした『十二人の怒れる男』のオマージュ作品となっている。オマージュ元の作品は陪審員にスポットを当てた会話劇で、陪審員制度の長所と短所について踏み込んだ作品だ。

 日本では、当時はもちろん、現在も裁判員裁判制度という似た物はあるが、一般人だけが参加して全会一致で被告の罪状を決める制度はないことから、オマージュ作品である同作は、もし日本に陪審員制度があったらという仮定のもとに制作されたコメディー作品となっている。元々は三谷氏を中心に旗上げした劇団「東京サンシャインボーイズ」のために書き起こした舞台用の脚本で、同作はそれを原作として映画化したものだ。

 ストーリーは至って単純。裁判で、走るトラックに夫を突き飛ばし、死に至らしめたとされる妻が、有罪か無罪かを話し合うという内容になっている。オマージュ元でもそうだが、この作品もほぼ場面転換もなく、会議室という密室で全ての話が展開する。

 元ネタは、脚本が面白ければ、場が動かなくても物語になるという作品の最たるもので、同作は、この部分に習いつつ、三谷氏がよく法廷モノの作品で登場させるような、アクの強いキャラ同士の会話で、場面転換のない部分を補おうとしている。説明セリフが多めの形で進むので、画面を全く見なくても話の流れがわかるほどだ。

 タイトルに「優しい」とある通り、この作品では、基本的にひどい夫に悩まされた被告に同情的な形で話ができている。終始被告の有罪を主張している相島一之演じる陪審員2号が理論立てて犯罪であることを説明する部分で、主婦の陪審員8号を演じる山下容莉枝が、こんなことを考えられる人は酷い人だと、陪審員2号への個人攻撃に走るのも印象的だ。もっとも、陪審員2号も実は感情論で有罪にしようとしていたことが後にわかるのだが。他にも言い争いが苦手で口調がきつくなると突然帰ろうとしてしまう、上田耕一演じる陪審員3号や、あんな美人の人妻が罪を犯すはずがないと、えらく個人的な理由で無罪を主張する陪審員7号(梶原善)など、各キャラの生活環境に根ざした非常に感情的な意見が多く、無罪か有罪かを決める判決の場なのに、各キャラが自分の人生語りをしてしまうあたりが非常にコミカルだ。

 優柔不断さもかなり際立っており、事なかれ主義で主張しないでいた一部の陪審員たちが、論議が急に有罪に傾き出すと有罪の判断をしたり、無罪に傾き出すとそうだと手のひらを返して賛同してしまうなど、よく“日本人的”と言われる部分を強調している。「どうせ執行猶予がつくから無罪でいいじゃん」と無罪に傾く人はさすがに現実ではいないと信じたいが…。
 
 全体的な流れとしては元ネタが名作ということもあり、非常に良く出来ていて、密室での会話劇だけなのに、退屈感はあまり感じない。しかしこの作品で問題なのが、コメディーにしたおかげで各キャラを誇張しすぎている点だ。全員常軌を逸しているように見える。舞台ならば誇張しすぎなくらいがいいのだろうが、映像でそのままだと、さすがにくどい。その濃い性格の影響で、とにかく論点がずれまくりになることが多く、「またかよ!」とツッコミを入れたくなるだろう。その辺りをツッコミながら楽しめる人にはいいかもしれないが、事件に関する意見や論争を期待している人だと、所々で不快に感じること間違いなしだ。とにかく人の人生を左右する決断だという迫真性がイマイチない。

 後半には、弁護士を自称する豊川悦司演じる陪審員11号がリーダーシップをとって、ようやく法廷モノっぽく話を進めるものの、おふざけ要素からはイマイチ脱却できない。感情的になりがちな場なのだから、もっと感情にまかせて法律とかを皮肉る部分などあれば法廷モノとしてしっかりする気がするのだが。オチは確かに陪審員制度の問題に踏み込んで、最良の判断をしたことになっているのだが、そこだけで、それ以外は笑いがキャラの性格に集中しがちだ。まあ、そこは元ネタとの差別化を図ったのかもしれないが、基本的には陪審員たちの口ゲンカを楽しむ作品としてみることをオススメする。

 そもそも、大人の「話し合い」なのに、ただの口ゲンカっぽくなってしまうのはどうなのだろうか。ほぼ初対面でそこまで白熱するものなのか? 日本人ならば、中盤に、突き飛ばしたのが事実なのだから、有罪ではあるが、「殺人」ではなく「傷害致死」でという妥協案が出た時点で、全会一致で賛成してしまうような気もする。まあ、コメディーだからそこで終わらないのだろうが。
 
 オチもいかにもコメディーらしいといった感じだ。「あの飲み物の名が伏線だったのかよ!」とあまりの力技に色々な意味でびっくりするだろう。会話のノリが嫌いでなければ、かなり引き込まれる作品であることは間違いない。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

【記事提供:リアルライブ】
    Loading...
    アクセスランキング
    1. AI動画生成 DomoAI ドモエイアイ Google最新AI Nano Banana Pro Gemini 3 Pro Image に対応し無制限生成が可能に 圧倒的な制作精度向上と効率化でワンストップAI生成

    2. 「箱だけ出品」もNGに?メルカリが取引ルールを改定、悪質転売への対応強化へ

    3. 猫と犬のかわいさに癒やされる6日間!横浜高島屋で 「ねこ休み展」&「鼻ぺちゃ展」10/29(木)~11/3(火・祝)開催  特別POP UP EVENTや会場限定グッズが登場

    4. 世界初 日本発 AI動画生成プラットフォーム Animon.ai 日本国内サービス開始 3分で高品質のプロ級の動くアニメが完成 気になる料金体系をチェック

    5. 原宿の伝説的ハロウィンが11年ぶりに復活!「KAWAII MONSTER HALLOWEEN 2026」10月1日(木)より開催

    6. 全国34店舗のコーヒーショップ・ロースターが横浜に集結 「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL 2026」事前チケット販売開始

    7. 全国34店舗のコーヒーショップ・ロースターが横浜に集結  「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL 2026」事前チケット販売開始

    8. メルカリが「匿名返品サービス」を提供開始 住所や氏名のやり取りがいらず無料で返品可能に

    9. 加工NG、ワンタップで即送信! Instagramが放つ新機能『Instants』。スクショ禁止&閲覧後消滅で、令和のSNSは「映え」から「ありのまま」へ完全シフト

    10. 公式Instaのリール動画が52万回再生を突破!富士河口湖町が届ける旬な暮らしとイベントの情報

    1. 「箱だけ出品」もNGに?メルカリが取引ルールを改定、悪質転売への対応強化へ

    2. 猫と犬のかわいさに癒やされる6日間!横浜高島屋で 「ねこ休み展」&「鼻ぺちゃ展」10/29(木)~11/3(火・祝)開催  特別POP UP EVENTや会場限定グッズが登場

    3. AI動画生成 DomoAI ドモエイアイ Google最新AI Nano Banana Pro Gemini 3 Pro Image に対応し無制限生成が可能に 圧倒的な制作精度向上と効率化でワンストップAI生成

    4. 全国34店舗のコーヒーショップ・ロースターが横浜に集結 「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL 2026」事前チケット販売開始

    5. メルカリが「匿名返品サービス」を提供開始 住所や氏名のやり取りがいらず無料で返品可能に

    6. 世界初 日本発 AI動画生成プラットフォーム Animon.ai 日本国内サービス開始 3分で高品質のプロ級の動くアニメが完成 気になる料金体系をチェック

    7. 原宿の伝説的ハロウィンが11年ぶりに復活!「KAWAII MONSTER HALLOWEEN 2026」10月1日(木)より開催

    8. 全国34店舗のコーヒーショップ・ロースターが横浜に集結  「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL 2026」事前チケット販売開始

    9. 都内最大級のアウトドアイベント「TOKYO outside Festival 2026」が国営昭和記念公園で開催

    10. まだ9月なのにインフル流行入り!? ワクチンは“打って終わり”じゃない、研究で分かったワクチンの効果(抗体応答)を左右する生活習慣とは

    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2026
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.