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恐竜は今も生きている? アルゼンチンのプレシオサウルス捕獲大作戦!



 1922年、アルゼンチンのブエノスアイレス動物園の園長クレメンス・オネッリ氏からもたらされた衝撃的なニュースがタイム誌をはじめとする様々な新聞の紙面を飾った。

 アルゼンチンはパタゴニア地方の町エスケル近郊の湖で巨大生物が目撃され、捕獲を検討中であるというのだ。

 目撃したのは猟師で探検家でもあるマーチン・シェフィールド氏。はじめに彼が発見したのは、湖の周辺に残る、巨大な動物が移動して出来たものらしい、植物などがなぎ倒された跡だった。相当な重量がある事を感じさせる足跡も残っており、これらはエスケル近くにある湖の中へと続いていた。そして湖の周囲で観察していた彼の前に、白鳥のような長い首を持つ巨大生物が姿を現したのである。生物の体長は約4メートルほど、水の中を泳ぐ動作はワニのようだったという。

 これは正しく先史時代のプレシオサウルスではないか? と考えたオネッリ氏らも調査隊を派遣したが、小さなボートしか持っていなかったのでしっかりした調査が出来ず、生物の痕跡を発見することが出来なかったという。

 この巨大生物の話題は当時、地元のみならずアルゼンチン国内外でも注目された。 ルーズベルト大統領の狩猟仲間だったアルゼンチン保守党のエドマンド・ヘラー氏はプレシオサウルスの絵を選挙に使用し、怪獣を捕まえられたら皮膚の一部をニューヨーク自然史博物館に寄贈すると宣言した。一般市民の注目も高く、ブエノスアイレスの町には店名を「エル・プレシオサウリオ」と怪物の名前に変えるカフェが現れたりもした。

 このアルゼンチンの巨大生物は、日本ではエル・プレシオサウリオとして紹介されることもあるが、これはスペイン語でプレシオサウルスを指すものである。つまり当時の人々はこの怪物を恐竜の生き残りが見つかったと認識していた事が伺える。

 ちなみに有名なイギリス・ネス湖のネッシーが世界的に有名になるのは1930年代まで待たなくてはならない。それより先に注目を集めたこの怪物の正体は何だったのだろうか。

 歴史を調べてみると1922年はエスケルの町に新たな鉄道が敷かれた年であったことが分かる。現代でも新たなインフラや公共事業が完成するとそれに付随した観光資源が求められる事がある。また、1912年には世界的ベストセラーとなったコナン・ドイルの小説「失われた世界」が発表されている。この小説は南米のギアナ高地に絶滅してしまったはずの恐竜が生息していた、というものであった。

 つまり、この怪物騒動は地域活性のための創作であった可能性も捨てきれないということだ。日本で言う広島のヒバゴン騒動が近いかもしれない。謎の獣人らしき生物が目撃されたという証言から一大ブームが巻き起こり、目撃されなくなった今でも地元の名物として認知されている。

 彼らが本当に恐竜を目撃したのか、残念ながら1922年以外に目撃証言が出ていないため詳しいことは分からない。

 しかし、地元の人々にとっては大事件であり、人々に迎え入れられていたことは、当時の写真に残る張りぼての巨大な恐竜を囲んでいる笑顔の住民たちの姿からもよく分かるものとなっている。

文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所

【記事提供:リアルライブ】
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