
石橋静河(32)が主人公を演じるNHK連続テレビ小説「ブラッサム」(月~土曜午前8時)の第1週が終わりました。序盤の話題をさらったのは、渡部篤郎演じる主人公・葉野珠の父、清治です。雨の中、カナリアの餌を買いに行く珠に「足はぬれても腐らん。はだしで行け」と命じる場面には、SNSで「理不尽の塊」との声が上がりました。「#篤郎祭り」のハッシュタグも生まれ、強烈な存在感に注目が集まりました。ただ、その言葉や表情の端々には、不器用な愛情や、家長として生きる苦しさもにじみます。
石橋は清治について「珠の人生においてずっと影響し続ける。特に作家として影響し続ける人物」と語っています。清治との関係は、単なるトラウマとして描かれるわけではありません。父の苦しみや葛藤、珠への愛情まで描き込むことが、珠が故郷を飛び出し、作家として羽ばたく物語の「しっかりした土台」になるといいます。
第1週で渡部が見せたのは、単純な暴君の姿ではありませんでした。石橋によると、清治は「鬼のように怖い瞬間」「心が凍りつくような怖い瞬間」がある一方、繊細さも備えた難しい役。脚本を読んだ段階から、渡部がどう演じるのかを楽しみにしていたといいます。その芝居には、怖さと繊細さが絶妙なバランスで共存していました。だからこそ清治は、視聴者が簡単には割り切れない、生身の父親として立ち上がったのでしょう。
「父から受ける影響」は、石橋自身にとっても無縁のテーマではありません。父は俳優でミュージシャンの石橋凌、母は俳優の原田美枝子です。幼い頃から「好きなことを一生懸命やりなさい」と言われて育ち、コンテンポラリーダンサーを経て俳優の道へ進みました。デビュー当時は両親の存在にも注目が集まりましたが、いまは「肉体的にもDNAをもらっている。思考も価値観も性格も、体の癖も似てくる」と自然体で受け止めています。
石橋が両親と同じ表現の世界に身を置きながら自分の道を選んだように、珠もまた、父の価値観に従い続けるのではありません。父から受け取ったものと、そこから逃れたい思い。その両方を抱えながら、自分の人生を選び取っていきます。
「ブラッサム」のタイトルには、宇野千代が愛した桜と「咲き誇れ私」という思いが込められています。花が咲くには、目に見えない根と、それを支える土が必要です。珠にとって、清治との複雑な親子関係は、痛みを伴いながらも、その後の人生と創作を支える根になるのかもしれません。
「#篤郎祭り」に沸いた第1週。清治が珠の中に残したものは、やがて作家として紡ぐ言葉にどう表れるのでしょうか。父から何を受け継ぎ、何を乗り越えていくのか。第2週以降は、その歩みに注目です。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)
