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黒沢清監督、笠智衆さんは「どこもかしこも普通じゃないのにフリをする、あまりにも特殊な俳優」


【写真】ドキュメンタリー映画「The Ozu Diaries/小津ダイアリー」トークイベントに登壇した黒沢清監督(撮影・村上幸将)

1953年(昭28)の映画「東京物語」などで世界的巨匠として知られる、小津安二郎監督をテーマにした新作ドキュメンタリー映画「The Ozu Diaries/小津ダイアリー」(10月9日公開)トークイベントが28日、東京・Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で行われた。米アカデミー賞ノミネート歴を持つダニエル・レイム監督(52)と、劇中でインタビューを受けた黒沢清監督(71)が対談し、同監督は「小津の映画であるんですが、別の見方をすると、笠智衆の映画でもあるんじゃないかな、と。ごく初期から最後の作品まで、いろいろな形で出てくる」と、小津監督作品の出演が多かった、笠智衆さんの映画とも言えると評した。

その上で、笠さんを「日本だと、いろいろな見方があるんですけど、相当、変わった俳優で、普通のフリをして全く普通ではない。どこもかしこも、普通ではないのに、普通のフリをする。例えようもない、あまりにも特別な特殊な俳優」と評した。さらに「日本人でも、全く笠智衆さんを知らず、初めて小津の映画で見るとギョッとする。それまで俳優って、こういう演技をするんだな、という何かが壊されるインパクトがある」とまで言い、観客を笑わせた。

黒沢監督から、笠智衆さんの米国での受け止め、評価をを聞かれたレイム監督は「私個人は、すごい好きですし、米国では、すばらしい俳優と見ている方が多いような気がします」と答えた。その上で「『秋刀魚の味』(62年)で酔っぱらうシーンがありますが、笠さんはお酒を飲まれないので、小津監督が飲んで、酔っている様子を見て演じたとような話を聞いた。演技も上手だと思う」と絶賛した。

「The Ozu Diaries/小津ダイアリー」は、レイム監督が映画史上、唯一無二のスタイルを持ち、今なお愛され続ける小津監督の素顔に迫った作品。日記やノート、書簡、写真、インタビュー、これまで広く世に出ることのなかったホームムービーなどの貴重なアーカイブを紹介。さらに、黒沢監督をはじめ、ヴィム・ヴェンダース、リュック・ダルデンヌ、ツァイ・ミンリャンら世界の各監督の考察や、俳優の香川京子(94)やプロデューサーの山内静夫さんら、小津監督と時代をともにした映画人にも話を聞き、知られざる素顔と名作の原点に迫る。

黒沢監督は「ヴェンダースにしろ、ツァイ・ミンリャンにしろ、ダルデンヌにしろ、あれだけ好きだと言いながら、自分が撮る映画は小津と作風、違うじゃないですか? 精神的に似たものを追求したにしても、笠智衆みたいに演技させようとは1つも思わない」とも語った。その上で「それが、小津のすごさであり、小津の映画を前にした、作る側のすごさであり、慎みであり、ある種の近づいてはいけないんだ…それでも何か、知りたくなる危険な感じは致しますね」と評した。

小津映画を楽しむポイントについて聞かれると、黒沢監督はお勧め映画を挙げた。「初めて見てみようかな、という日本の方には、笠智衆ものはハードルが高いので、後回し。僕のお勧めは、佐分利信もの」と、笠さんとともに小津監督作品への出演が多い、佐分利信さん主演の作品を勧めた。「佐分利信は、笠智衆と違い、かなりズバッと、ハッキリものを言い、核心を突く分かりやすいキャラ。実に小気味よく映る」として「彼岸花」(58年)「お茶漬の味」(52年)戸田家の兄妹」(41年)の順で見ることを勧めた。その上で「それを経てから、笠智衆に行くと、こんな世界もあるのかと再び驚く。そういう見方をされるのが良いかと思います」と語った。映画通が集まった客席からは、笑いが起きた。【村上幸将】

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