
世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭の授賞式が12日(日本時間13日)イタリアで行われた。日本からは最高賞・金獅子賞を争うコンペティション部門には、塚本晋也監督(66)の3年ぶりの新作「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」と、是枝裕和監督(64)の新作「ルックバック」が出品されたが、受賞を逃した。97年の北野武監督(79)の「HANA-BI」以来の金獅子賞受賞はならなかった。
金獅子賞は、デンマーク・スウェーデン・ラトビア合作映画「ウーマン・アンノウン」(英題、メイ・エルトーキー監督)が受賞し、同作に主演したデンマークのマティルデ・アーセル(30)の女優賞と併せ、2冠を獲得した。審査員大賞は、10月23日からNetflixで配信される、韓国のイ・チャンドン監督(72)の新作「もしもの愛」が受賞した。
「ルックバック」は、ベネチア映画祭の開催に合わせて各団体が表彰する、独立賞を受賞した。演劇・映画監督のアレッシオ・ナルディン氏の発案により創設されたシネマ&アーツ賞、世界カトリックコミュニケーション協会「SIGNIS」主催のシグニス賞、ミラノを拠点とする映画文化財団「Cineteca Milano」が主催のチネマサラ賞、UNIMED(地中海大学連合)主催のユニメッド賞、イタリアの文化団体「Fanheart3」主催のファンハート3賞と、受賞は5賞に上った。
是枝監督は「とてもいい滞在でした。本賞に入ることはできませんでしたが、公式上映後は本当に熱いリアクションをいただきましたし、特にメディアも含めてイタリアの方の熱が、翌日以降の取材でも非常に伝わってきてとてもうれしく思います」と、映画祭に参加した感想を口にした。「独立賞を5ついただくという、これまでに経験のない事態で、しかも10代の方々に選んでもらった賞がその中に2つあって、若い人たちが支持をしてくれた、ということが純粋にうれしいです」と、若い世代から作品が評価されたことを喜んだ。
そして「また、取材にいらっしゃる方たちが、ジャーナリストであれ、批評家であれ、『シンプルに、個人的に好きだ』と声をかけてくれたのがまた良かったですね」と続けた。是枝監督にとって、ベネチア映画祭は95年の監督デビュー作「幻の光」がコンペ部門に出品され、金のオゼッラ賞を受賞した縁の深い映画祭だ。17年「三度目の殺人」、19年「真実」に続き、今回が4回目のコンペ部門への出品となった。「ベネチア映画祭というデビュー作の地で、もう1度、出発点に立ち返った気持ちです。作品を挟んでの、観客の皆さんとの出会いを大切にしながら、また次へ向かいたいと思います」と気持ちを新たにしていた。
「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は、イタリア全土から選ばれた18歳の高校生20名が審査員を務め、コンペ部門の作品から受賞作を選出する独立賞の1つ、金の小獅子賞を受賞した。日本映画では初の受賞で、塚本監督は「特に若い人に見て欲しいという気持ちが強くあります。若い審査員のみなさんに選んでいただいた、というのは、何よりもうれしいこと」と喜んだ。そして、「この映画を見て、戦争というのは、とにかく実際に行くとこういうものなんだということをまず分かった上で、議論していただけたら」と呼びかけた上で「この少し雲行きの怪しい世界で、光がパァーッと差してきたような気がしました。本当に、グラッチェ!」と感謝した。
授賞式後には「内側から身震いするような震えが来ました。学生たちに囲まれた時、アレンさん(映画の原作を書いた主人公のアレン・ネルソンさん)と(自分が)被って、涙が出てきそうでした。未来を担っていく人たちが、この映画を選んでくれたというのは、大きな希望を感じました」と、感慨を口にした。
