
5月12日にフランスで開幕する、世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭ラインアップ発表会見が9日、フランスで開かれた。
最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に、濱口竜介監督(47)が初の海外での撮影となるパリで撮影した新作映画「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)の出品が決まった。
濱口監督にとって、23年9月に世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭(イタリア)で審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞し、24年4月に公開した映画「悪は存在しない」以来の新作で、フランス、日本、ドイツ、ベルギーの国際共同製作の作品。カンヌ映画祭コンペ部門への出品は18年「寝ても覚めても」、脚本賞を受賞した21年「ドライブ・マイ・カー」に続く3作目で、同映画祭での上映がワールド・プレミアとなる。
「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをベルギーの俳優ビルジニー・エフィラ(48)、真理を女優・モデル・映画監督のTAOこと岡本多緒(40)が演じる。長塚京三(80)が真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗、黒崎煌代(23)は吾朗の孫の窪寺智樹を演じる。マリー=ルーと真理、2人の主人公を引き合わせる重要な役どころだ。黒崎は25年の前回に、フランス監督協会が主催し、カンヌ映画祭に併設して開催される独立部門・監督週間に初主演映画「見はらし世代」(団塚唯我監督)が出品されたのに続き、2年連続で作品が出品された。
濱口監督と岡本、長塚、黒崎がコメントを発表した。
濱口竜介監督 映画『急に具合が悪くなる』の完成と、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でのワールド・プレミア決定をご報告したく思います。原作者のおふたりにもこの場を借りて、心より感謝致します。ありがとうございました。撮影現場ではヴィルジニー・エフィラさんと岡本多緒さんをはじめとした俳優さんたちの演技に日々、感動していました。キャスト・スタッフの精魂込めた仕事の成果をここから、多くの観客へと届けたいと思います。とても、楽しみです。
岡本多緒 かねてより俳優として憧れを抱いていたカンヌ国際映画祭は、自分にはどこか遠い存在のように感じていましたが、このようなかたちで濱口監督とともにその舞台に立てることを、いまだに不思議な思いで受け止めております。私にとってもかけがえのない特別な作品となった本作を、約四か月間滞在していたフランスの地で初お披露目できる喜びをかみしるとともに、日本での公開も心から楽しみにしております。
長塚京三 どうにもならない人生を受け止めて、なお強く生き抜こうとする真理。彼女に寄り添い、彼女を守るもうひとりのマリー=ルー。彼女たちを通して見えるのは、生きることの素晴らしさ、美しさ。この歳になって、このような作品に参加できた幸せを、かみしめています。カンヌでの上映が楽しみです。
黒崎煌代 カンヌ国際映画祭コンペティション部門への選出の知らせを伺い、出演者の一人として大きな喜びを感じています。
フランスで撮影されたこの作品を、まずフランスの皆さまにご覧いただけることを、今からとてもワクワクしております。本作品がカンヌ国際映画祭を皮切りに、世界中の多くの方々へ届いていくことを心より願っております。
◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。
